建材 |  2019.12.13

パナソニック ライフソリューションズ社「くらし・空間コンセプト研究所」

生活者の変化の予兆を捉え、先を見据えた提案

時代とともに、家や暮らしのあり方は変化する。住宅事業者はその動きを敏感に捉え、時代のニーズに合った提案を行っていくことが重要だ。パナソニック ライフソリューションズ社の「くらし・空間コンセプト研究所」は、独自の生活者研究を行い、家や暮らしの未来を予測。先回りしてニーズを捉え、新商品開発に生かしている。


パナソニック ライフソリューションズ社(以下、LS社)の技術本部に、「くらし・空間コンセプト研究所」がある。

同研究所の起源は1988年、LS社の前身である松下電工の電器事業本部に設置された家電生活ソフト研究センターである。その後、2014年に「住宅研究所」に改称、さらに2018年に住宅だけでなく暮らし・空間へも研究対象を広げることを目的に、現在の「くらし・空間コンセプト研究所」になった。

同研究所の最大の特徴は家電生活ソフト研究センターの時代からノウハウを脈々と受け継いだ「生活者研究」を行っていることである。生活者研究とは、生活者を様々な視点から研究することで時代のニーズを探るものだ。その手法は、家庭訪問調査、行動観察、ワークショップ、外部のブレーン活用など多様である。また、日本の暮らしや住宅のニーズの変化は、海外のトレンドから影響を受けるケースも多いため、リサーチに海外へも頻繁に足を運ぶ。「ランドスケープデザインならアメリカ、インテリアなら北欧など、ベンチマークにするために海外視察を重視している」(本山仁所長)。

将来予測で消費者ニーズとのギャップ埋める

くらし・空間コンセプト研究所の本山仁所長は、世の中の“所有から利用へ”の価値観の転換に注目する

くらし・空間コンセプト研究所が生活者研究を重視する大きな理由は、提案する商品と時代のニーズのギャプを埋めるためである。

時代とともに、生活者の住宅や暮らしに対するニーズは変化するが、その変化に気づかない住宅事業者は多い。結果、提案する商品と生活者のニーズの間にギャップが生じ、生活者が望んでいない商品を提案してしまう。こうした事態に陥らないよう、生活者の変化の予兆を捉え将来予測を行い、商品開発にフィードバックすることで、このギャップを埋めようとしている。

生活者研究による将来予測が奏功した事例の一つが、2004年に発売を開始したシステムバスのオプション「酸素美泡湯」である。これは、浴槽内に酸素を含んだマイクロバブルを放出するもので、ぬるめのお湯の入浴でも温まるとともに、風呂から上がった後も高い保湿効果を得られるというメリットがある。

くらし・空間コンセプト研究所(正確には前身の研究所)では、生活者研究から健康・美容のニーズが高まっている予兆をつかみ、将来的にさらにニーズは拡大するだろうと予測し、浴槽のオプションとして酸素美泡湯の提案を行った。結果、同機能は38万円程度する高機能オプションだが、採用率は高機能オプションとしては高い18%程度を実現。さらに訴求を強化したところ25%にまで高まったという。酸素美泡湯は現在でもヒット商品となっている。

住宅も所有から利用へ
サービスポート付き住宅を提案

最新の生活者研究に基づき、現在、くらし・空間コンセプト研究所が注目している生活者の変化の予兆は、“所有から利用へ”の価値観の転換だ。

暮らしや住宅についても当てはまることだと考えている。最近、自宅で趣味の教室を開いたり小商いを行う人が増え、家族以外の人が住宅を利用するケースも出てきている。これまで所有の概念が強かった時代では、住宅は主に家族がくつろぎ、食事をし、寝起きする場であった。しかし、これからの時代は利用の価値観が強くなることで、住宅を家族以外も利用できるようにする「住み開き」のニーズが高まるのではないかと、くらし・空間コンセプト研究所は予測している。

その予測に基づいて行う新提案が「サービスポート付き住宅」である。これは住宅の一部を外部に開いて家族以外も出入りできるようにする「サービスポート」をあらかじめ間取りに組み入れた住宅。サービスポートの入り口は、住戸とは別にし、スマートロックで出入りを管理できるようにすることでプライバシーや安心を担保する。

サービスポートを通じ、例えば、趣味の教室やカフェ、食堂などの小商い、民泊などが可能になる。また、レンタルスペースとして貸すこともできる。サービスポートは家族と家族以外の利用者をつなぐポート(港)の役割を果たし、住宅は交流や経済活動の場になる。

本山所長はサービス付きポート住宅を「できるだけ早いうちに実用化したい」としている。LS社はハウスメーカーであるパナソニック ホームズも組織に抱えているだけに、サービスポート付き住宅のコンセプトを実現できる環境は整っている。

家電から住宅、さらには暮らし・空間へと生活者研究の範囲を拡げ、住宅事業者の中で生活者研究をリードしてきたパナソニック。さらに今、サービスポート付き住宅という住宅のあり方自体を変える可能性を秘めた新提案を行っているだけに、今後の取り組みから目が話せない。

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