ポラスグループ・中央住宅 快眠特化の分譲住宅を提案
バス、ベッド、照明で快適な睡眠環境を創出
ポラスグループの中央住宅は、快適な睡眠に特化した分譲住宅の提案を始めた。キーワードは「くつろぎ」と「覚醒を抑える」。住宅販売の新たな付加価値に「快眠」を位置付ける。
同社は埼玉県草加市に、「睡眠」に特化した分譲住宅1棟を初めて投入。価格は4980万円で同じ分譲地に投入した2棟の一般分譲より約2割高いが「販売を始めて1週間以内の即売となり、想像を上回る関心の高さ」(中央住宅マインドスクェア事業部取締役事業部長の金児正治氏)と驚く。
今や睡眠は世界的関心事項の1つ。米国のあるシンクタンクの調査によると、日々の睡眠不足が借金のように積み重なっていく、いわゆる“睡眠負債”によるGDPの損失は米国だけで全体の2.3%に相当する約45兆円に。日本ではGDP比率では米国を上回る2.9%、金額換算で約15兆円が失われているという。この睡眠負債の影響が仕事や私生活上のトラブルを引き起こすなど、放っておける問題ではない。今回、同社が分譲した住宅は、この問題に正面から取組んだと言ってよい。
仕事や学校から帰宅し、その日の汗を流す。同社の提案する「快眠住宅」では入浴を、“睡眠へ誘うアイテム”と位置付ける。設置するのはTOTOの「シンラ」。大きな特長は、肩と腰部分に噴射で形成される水流による、リラックス効果だ。肩と腰を合わせた水流は毎分約135リットル。「冷えやすい肩回りに幅広で大量のお湯が流れ心地よさを実感でき、腰からは、円を描くように噴出された水流が腰を中心に心地よい刺激を与える」とTOTO北関東支社住宅営業課営業主査の有本久美子氏。浴槽の淵には頭が置けるよう枕があり、ゆったりくつろいだまま、体を温めることができる。
なぜ、快眠を導くために入浴を重視するのか。厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、入浴は精神的なリラックス効果と、湯に浸かり、体温上昇後の放熱も活発になるため、寝ついてから90分前後に深い睡眠を増加させることにつながるとしている。中央住宅は、この指針を住宅づくりに反映したわけだ。
入浴でリラックスしたまま、床に就く。次のポイントは、良質な眠りを導入するための主寝室に施した様々な仕様だ。快適な睡眠を得るために特に重要になるのがベッド。この住宅に用いるマットレスは、フランスベッドが作るハウスメーカー向けのオリジナル商品。夏冬の温度変化に対応し、夏は睡眠中の汗をすぐに乾かす速乾面を、冬は羊毛を使った温度の下がりにくい面を、それぞれ季節に応じて使い分けができる。また、快適な睡眠を得るためには、適度な寝返りも必要とされている。この適度な寝返りを助けるのが、マットレスに搭載された「高密度連続スプリング」。1本の鋼線を連続して編み上げ、通常の約2.5倍のスプリング数で形成。「一般的なマットレスに使われるポケットコイルだと、体がすっぽりはまってしまうため、適度な寝返りを妨げてしまう」(フランスベッド インテリア北関東営業所の沢田竜一氏)。優れた強度と耐久性で、しっかりと腰や背中を支え、正しい寝姿勢をサポートしている。主寝室では他にも、ガーゼパジャマや遮光カーテンなども用意。ベッドのヘッドボードには「ウッドパネル」を用いた。「森林浴など、木の臭いから気持ちを和らげるフィトンチッド効果や調湿も考慮しながら快適な空間をつくった」と快眠住宅をプロデュースした中央住宅マインドスクェア事業部設計部 実施設計課主任の宮内ひとみ氏は強調する。
睡眠の覚醒抑える配慮も
ぐっすり寝る環境を整えても、生理現象を食い止めることはできない。就寝中、トイレに行く際に、廊下の電気を付けたり、冬場の寒い中、廊下などで“ひやっと”することも少なくない。睡眠を覚醒させない──。この住宅のもう1つのキーワードで、ふんだんな配慮がされている。
真っ暗な主寝室の足元を照らす明かりが、ウッドパネルの下に設置されている。ホテルのような仕様で、睡眠の覚醒を抑えている。ベッドから降りても、足元は冷たくない。2階にある主寝室の足元方向の半分に床暖房が備え付けられており、そのまま廊下にも床暖房が。足元の冷えという不快感なく、2階にあるトイレに入ることができるのだ。トイレにも覚醒を抑える工夫がある。トイレの戸を開けると、TOTO製のトイレ便座に付いている人感センサーが反応し、必要最小限の明かりを照らす。便座も省エネモードが作動している時には、25℃の状態だが、着座して6秒ぐらいで32、33℃まで温度が上がり、「冬場に便座に座っても、冷たいということで覚醒することを抑えることができる」とTOTO北関東支社商品技術課技術担当課長の中村秀幸氏は話す。
朝の目覚めをよくするために、1階のリビングでは、一年を通じて朝の光が室内に差し込みやすいプランを計画。照明も工夫する。それぞれの時間帯に合わせて快適な色調に変えられるオーデリック製の照明を導入。朝は昼白色に、夕方は温かみのある色に、それぞれ変化。就寝時間に合わせて、徐々に暗くなり、眠気を誘う調光もできる。オーデリックのCONNECTEDマイスター 商空間開発リーダーの見城正也氏は「太陽の光に合わせた適切な明かりは、目覚めや快眠にとって大切」と話す。
より良い睡眠環境を整えるために、東北地方の断熱性能に対応する高気密・高断熱住宅の仕様も快眠住宅の特長だ。構法には2×6を採用。YKKAPの高性能樹脂サッシも採用した。「高機能性樹脂サッシにより、冬場のトイレも、足元以外も寒くなく」(YKKAP越谷支店主任の佐藤良次氏)、覚醒を抑えることができる。
欧米などでは良質な睡眠を確保するために、積極的に消費者はお金を使う。その意味では、日本は後進国と言える。今回は1棟だけだが、即売という状況から見ると、消費者の睡眠への関心は高まっている。睡眠をパッケージという新たな住宅提案が、今後注目されそうだ。
中央住宅マインドスクェア事業部
取締役事業部長の金児正治氏の話
睡眠負債などという言葉があるように、今や睡眠は国家的な問題だ。これまでベッドなどパーツで快眠を追求しているものはあったが、それぞれをパッケージした住宅は、中々なかった。今回は、同社でも初めて睡眠について、かなり深く掘り込んだ住宅だ。気持ちの良い寝入りと、目覚めを両方演出できる住宅として設計した。 住宅での睡眠分野は、手付かずのところで、潜在需要がかなり期待できる。戸建でも、マンションでも、国内だけでなく世界でも提案できる。今後、シリーズ化ができるよう検討。今回の快眠住宅に関わった方々と連携しながら、「睡眠はポラスだ」というブランドを構築していきたい。
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