ワールドハウジングクラブ 高性能住宅のサブスクサービス開始
企画化・部品化したキットハウスを工務店に提供
ワールドハウジングクラブが住宅供給サブスクリプションサービスのプラットフォーム「HOME i Land」の運用を開始した。企画化・部品化したキットハウスについて、関連図書や販売促進ツールを定額5万円/月で工務店・設計事務所に提供する。
ワールドハウジングクラブ(=WHC、東京都中央区、横田有平代表取締役)が住宅キット販売プラットフォーム「HOME ⅰ LAND」(HiL=ハイル)をスタートさせた。ビルダーや設計事務所などによる“売れる”住宅をコンペで募集し、プランや設計図書、また、販促ツールまで含めて地域の工務店に提供する。工務店は月5万円の定額制(入会金無料)で会員となることで、これらを利用することができる。
住宅そのものは工場生産でキット化し、耐震等級3、HEAT20のG2グレードが標準という高い性能を持つ。IoT機器などオリジナルの部材も開発、搭載するほか、関連図書や販売促進ツール、不足職種の人材紹介も含まれており、これらを差別化ポイントに工務店・設計事務所への普及を進める。
完全企画型住宅をキットで提供
G2グレードの高性能住宅
キットハウスは完全企画型の住宅で、全国の工務店や設計事務所からコンペなどを通じて募集し、現在、9商品をラインナップする。今後、商品は随時拡充していく予定で、来年までに30商品が揃う予定だ。
基本的に年収400万円程度のユーザーを想定。購入価格は30坪程度 で1600万円~1700万円であり、標準で耐震等級3、HEAT20のG2グレードの省エネ性能を持つ。
その大きな特徴の一つが構造部材の部品化。3年をかけて窓や断熱材を組み込んだ「未来パネル」を開発した。
工場生産した部材を使うことで現場では組立てのみ。窓はツーアクションのトリプルガラス樹脂窓、断熱材にはフェノールフォーム断熱材を採用することで高い断熱性を発揮する。また、基礎部材の部品化も図り、型枠レスの基礎工法を採用する。パネル化・部品化することで運搬、施工、性能の効率化を目指した。
また、商品としての差別化を図るため、次世代スマートキーや未来窓など「未来パーツ」も用意する。この「未来パネル」や「未来パーツ」は、仕様のレベルアップや新パーツの導入などバージョンを随時進めていく考え。例えば、「エアロゲル断熱材」を2021年に搭載する予定だ。
こうした企画化・部品化を可能にしたのが、WHC一社ではなくさまざまな応援企業により開発が行われていることだ。 公表されている応援企業は28社(表)だが、非公表の企業を含め現在36社が名を連ねる。これら各社と個別の商品開発などを行い、市販されていない部品を開発し、差別化を進める。
例えば、窓はYKK AP製のツーアクション窓だが、内付納まりにより外壁からセットバックして取り付けられる仕様で、同社のラインナップにはないものであり、窓には同社ではなくHiLのロゴが入る。
今後、商材ごとにかぶらないようにしながらも応援企業を増やしていく考えだ。
さらに、このキットハウスとは別に「未来パネル」の技術を活かし、木造コンテナ住宅の「HACOBASE(ハコベース)」と、「HiL+」の開発にも取り組んでいる。
ハコベースは据え付け型で、HiL+はタイヤがつくトレーラータイプ。使い道が自由であり、施工込みで医療関係や店舗などさまざまな業種を対象に販売を進める。また、HiL+はエンドユーザーへの販売を視野に入れている。
各種図書や販促ツールも込み
不足工種の人材紹介も
HiLは、キットハウスの販売だけでなく、各種図面や仕様書、パネル図などのほか、プラン集やカタログ、実例写真など販売ツールも会費のなかに含まれる(一部有料)。スキルアップセミナーの開催(有償)も予定している。
さらに職人を手配するサービスが月5万円の会費に含まれている。これは建設業界最大級のオンラインマッチングプラットフォーム「SUSTINA」と連携し、その会員を紹介するもの。キットハウス建築に際し、不足する工種を問い合わせると、候補企業リストを受け取ることができる。
簡単に言えば、パネル販売や職人手配など、建て方まではWHCが手掛け、会員の工務店は造作を含めた仕上げのみを行うといってもいい。
現在は「モノと人をセットに考えた。工務店が求める職種が何か、検証しながら試験的に進めている」(新沼教之常務)という段階にある。狙っているのは、職人の収入アップと安定化だ。「異なる工程を一人が行う多能工的な仕組みとしたい」(東克紀商品開発統括部部長)という、
企画型住宅、部品化、図書やツールの提供から人の手配までのシステムを構築することで、エンドユーザーには安く高品質な住宅を、工務店は安定した適正利益を得られるようにする。
同社では工務店の適正利益として一棟当たりの粗利400万円以上を目標とする。
2025年に2万棟
契約工場30社を目指す
WHCでは、全国の中小ビルダーや設計士などを対象に、事業者向けセミナーを開催していく。HiLの解説や活用方法、パネルなど部品の展示・説明を行い、会員を募る。
9月25日の東京での開催に続き、年末までに静岡、茨城、岐阜、香川、で開催する予定だ。
会員は、年間20~30棟程度の工務店を中心に、来年3月までに100社、2020年度に500社、2021年度までに1000社を計画している。
また、販売棟数は、今年度100棟、2020年度500棟、2021年度1000棟、2025年度が1万4000棟にハコベースを加え2万棟を計画している。
一方、未来パネルは、同社と契約した工場が生産する。現在、東北、関東、四国、中部の4カ所で、一社当たり月産30~50棟程度の能力を持っている。
契約工場は基本的に150㎞をカバーするエリアを想定しており、3年後をめどに全国(北海島、沖縄を除く)で30工場まで増やしていく考えだ。
企画化・システム化でコストを削減
適正利益を得ながら競争力を高める仕組み
HiLのシステムは、単純に販売価格を下げるのではなく、トータルの仕組みとして高性能な住宅をこれまでよりも低コストで供給するものをと考えた。そうでなければ、部資材のメーカーや工場の利益を圧縮することになってしまう。それぞれに正しい対価を払いながら、いかにして勝負できるかに重きを置いている。
住宅を企画化し、システマチックに提供することで手間暇をかけず、魅力のある家づくりをしようという考え方だ。
例えば、監督は複数のメーカーに連絡をして段取りをしなければならない。非常に手間がかかるものでヒューマンエラーを起こしやすい。それがコストに跳ね返る。
また、企画型住宅とすることでお客様との打ち合わせ回数を大きく減らすことができる。イメージは“営業が不要な売れる家”だ。
パネルのみを販売するビジネスモデルではなく、それも含めた商品である「キットハウス」を企画化し、必要な部材・資材を販売する、建設や販売に関する図書やツールを提供するというサブスクリプションサービスをベースに置いている。
工務店が困っている課題に、モノや人を提供しよう、それによって安定した利益が取れるようにしようというモデルだ。
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