積水ハウス、住宅点検にスマートインスペクション導入
人手不足の緩和や顧客満足度向上に貢献
積水ハウスは、ドローンと床下点検ロボット、小屋裏点検ロボットカメラを使って住宅の点検をするスマートインスペクションを導入した。人手不足の解消と同時に、住宅オーナーへのサービスにもつながることが期待される。複数の先進機器を組み合わせて、遠隔で診断する点検サービスは住宅業界で初めてという。先進機器を使った点検とは、どんなものかを取材した。
同社は茨城県古河市にある「関東すまいの夢工場内」で報道関係者を対象に、導入したスマートインスペクションを公開した。
まずは屋根点検のためにドローンを取り入れた。従来の屋根点検は8.4mにも伸びる長い棒に点検カメラを装着。2人がかりで作業を行っていた。高さが限られているため、屋根全景を映し出すのは不可能。何度も場所を移動し、屋根を撮影する。「装置も重たく、夏場の炎天下での作業は一苦労」(同社)という。
こんな作業がドローンを取り入れるとどうなるのか。敷地内に設置したヘリポートにドローンを置き、作業員は周囲の安全を確認しながら、iPad上で操作する。高さ5mまで上がるのは一瞬、上空30mまでも数秒足らずだ。一定の高さまで上がると、ホバリングしながら、装着されたカメラが屋根の全景などを撮影。とった画像はクラウド経由でオフィスサポートデスクに送られる仕組みだ。このサポートデスクの専門スタッフが不具合を判定。後日結果が送られてくるが、画面上では点検をしたその日に住宅オーナーは確認できるという。
この日ドローンを運転した作業員は、研修を含めて飛行時間は20時間足らずだが、「思っていた以上に簡単に操作できる」と話す。ドローンで撮影された画像は4000×3000ピクセルの画質。実際に、この日上空で撮影した写真が左だが、屋根の形状が鮮明に映るなどの制度は高い。別の画像では雨樋に枯葉が落ちているのも確認できた。
次は床下点検だ。これまでの床下点検と言えば、作業着に着替えた作業員が床をはいつくばって行うのが一般的。「床下に潜り込み、作業着についた汚れなどが住宅を汚さないか、かなり神経を使って作業していた」。床下点検での苦労は尽きない。昨今の顧客満足向上もあり、床下点検は細心に気を配る作業の1つだ。
床下点検後の、こうした細かい気遣いを大幅に軽減するのが床下点検ロボット。見た目は大型のラジコンカー。キャタピラがついており、10㎝程度の段差ならば、難なく乗り越える。ここも操作はiPad。床下ロボットの装着したカメラで床下のリアルの映像を映し出す。その画面上の矢印をタッチしながら、床下の隅々までを走らせる。記者は実際に操作したが、思ったより簡単に操作ができ、慣れれば自由自在に誰でも動かせると感じた。そして作業が終われば、床下点検口から、犬を抱えるように取り出せばよい。もちろん、床下を走るため、機体は汚れているが、居室内ではその機器の持ち運びの時だけ、汚さないように気を付ければいいだけだ。
最後が小屋裏点検。これも今までの作業は重労働の一言。一人が脚立を支え、もう一人がわずか数十㎝四方の点検口を開け、そのまま上半身を入れ、手持ちの明かりを頼りに点検する。点検口から体を抜く際も、体格によってはそのまま抜けないような恐怖感さえある。「これから作業が少しは楽になる」。お世辞にも痩せているとは言えない作業員から口をついて出た言葉だ。
点検棒に、小屋裏点検ロボットカメラを装着。棒を上に引き出しながら、点検口まで一直線。棒の先端には明かりがついており、暗い屋根裏でもきれいな画像を収めることができる。操作は、腕につけたiPhoneを見ながら行う。「普段見ることができない屋根裏を興味深く見る住宅オーナーもいる」と話す。
この3点をセットに、同社は10年ごとの定期点検でスマートインスペクションを導入。「今年は全体の2割での取組みを計画する」。導入により、これまで2人で行ってきた点検作業が1人で可能になる。省略できる時間は、これまでの2時間から1時間45分になるが、「この15分の短縮が大きい」と同社は強調する。
作業員が長く点検する住宅に滞在することは、それだけ住宅のオーナーなどの時間を制約してしまうためだ。同社は「利用者の満足度を上げるために大きく貢献する」と話す。
スマートインスペクションは8月から全国29事務所のカスタマーセンターで順次開始する。
記者の目
人海戦術―。これまでの点検作業をこう感じた。機械でできることがあれば、どんどんシフトすればいい。そんな典型例だと作業風景を見て思った。
1点気になるとすればドローンだ。操縦者は免許を取得し、安全性への不安はあまりない。しかし、自分の家の上空にドローンがホバリングしていたらどう思うだろう。積水ハウスでは、点検作業でドローンを飛ばしているという立て看板を設置したり、飛行時間を数分に抑えたりするなどの工夫をする。
認知度は上がっても、日常とはまだまだ遠い距離にあるのがドローン。近隣の人が不安にならないためにも、“ご近所づきあい”のできるコミュニティーの醸成が必要ではないかと感じた。
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