2019.7.9

東急コミュニティー、マンション・ビル管理の新研修施設

新人育成や実証を加速

東急コミュニティーはマンション・ビル管理の新研修施設を本格稼働した。新人を早期に育成できる工夫や新技術の実証実験を行い、深刻化する人材不足への布石を打つ。

将来の人材不足に布石
新人でも早期にレベルアップ

東急コミュニティーはマンション・ビル管理人材の研修施設「東急コミュニティー技術研修センターNOTIA」(東京都目黒区上目黒・地下1階地上5階)を新設、本格稼働した。

今回、新たな研修施設を開設した大きな理由は、今後深刻化する可能性が高いマンション・ビル管理の人材不足に対応するためだ。

今はまだ人材不足はそれほど深刻化していないが、少子化で今後大きく不足することが予想されている。このため、限られた人員でも一定のマンション・ビル管理の質を担保できる体制を作っていく必要がある。具体的には、管理人材一人ひとりの能力を上げていくとともに、新人を早期育成する仕組みづくりが必要になる。

「マンション管理の現場は、物件ごとに状況がそれぞれ異なるため、学んだことをそのまま現場で使えることは少ない。ベテランなら対応できるが、新人では対応が難しいこともある。新施設での研修を通じ、新人でもベテランのレベルまで早急に持っていけるようにする 」と、速川智行取締役常務執行役員は話す。

建物そのものが研修素材
マンション丸ごと再現

新施設のコンセプトは『建物そのものが研修素材』。これまでの研修施設では、必ずしも現場と同じ環境ではなかったが、新施設は本物の現場と同じ環境で、見て、触って、学べる施設としている。「あたかも研修施設の中に、マンション・ビルがもう一つ丸ごと入っているかのような構造」(同)。

地下1階は「多目的フロア」で、座学から実技研修、プレゼンテーションにも使える多目的に使える空間。階高を高くとったホールには、大型スクリーンや様々なICT機器を完備し、一方通行な座学ではなく、相互に学べる参加型の学習スタイルで人材育成を加速させる。

2階・3階は「設備実習のフロア」だ。実物で学び、設備の基礎・応用を身に付ける。2階では、防火・防災設備と給排水・衛生設備の「原理原則」を学ぶ。連動する各設備を使い、現場でしか経験できなかったことを研修として再現する。また、消火ホースを使った放水も体験できる。

3階では、電気設備と空調設備の「原理原則」を学ぶ。配管・配線・ダクトを露出させ、空気、電気の流れを「追える」ように工夫している。温熱制御実習スペースでは、実際に研修用設備を調整しながら、快適な温度と湿度を制御するスキルを学ぶ。

4階の「知的創造のフロア」は、開放感のある学び・交流の空間。無線投影システムや電子黒板を完備し、互いに教え合い知識を共有、グループで課題を解決するなど、協調学習の場として活用できる。

配管をむき出しにし、経路を確認できるようにしている
実際に火災警報器を鳴し、無線でアナウンスの確認を何度も練習する
4階の「知的創造のフロア」には、無線投影システムや電子黒板などの最新設備も導入、協調学習の場とする
ソフトバンクとエレベーターの移動もできるAI清掃ロ ボットの実証を行い実用化に結びつける

実証実験の場にも階層移動清掃ロボなど

新施設は業務を効率化する新技術の実証実験の場にもする。例えば、ソフトバンクと開発中のAI清掃ロボットの実証を行い実用化に結びつける。これまでにも自動清掃ロボットはあるが、階層を移動するものは実用化されていない。ロボットだけではエレベーターに乗ることができないからだ。しかし、開発中のロボットならそれが可能になるかもしれないという。実用化し現場に導入されれば、マンション・ビル管理の人材不足への対応に貢献しそうだ。

人材育成と業務を効率化する新技術の開発は一朝一夕には難しい。それだけに、人材不足への対応は深刻化してからでは遅いだろう。マンション管理に限らず他の分野も含め、住宅不動産事業者は東急コミュニティーのように先手必勝で人材不足の問題に取り組んでいく必要があると言えそうだ。