大和ハウス工業 IoT、AI活用しながらまち全体で健康促進
認知機能の確認や運動を“気軽に”
IoTとAIを使い健康促進につなげるスマートウェルネスシティが動き出した。分譲地内の体力認知機能を測定する装置で健康状態を把握し、推奨トレーニングを提案する。
「スマートウェルネスシティ」は、現在同社が神奈川県藤沢市で進める、全114区画の戸建分譲住宅地「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」。ここでは自然のエネルギーを上手に利用するパッシブデザインを採用。高断熱住宅である全戸に太陽光発電システム、家庭用リチウムイオン蓄電池、エネファームを搭載するなど環境を配慮する。また、もともとこの場所にあった藤沢高校の屋外時計の文字盤を再利用するなど同高校の記憶を継承しながら、周辺住民とのコミュニケーションも意識したまちづくりが行われている。
こうした分譲地の価値をさらに高めるのが「スマートウェルネスシティ」で狙う住民の日常運動の促進だ。健康のためにジョギングやウォーキングを始めても、なかなか続かないという人は少なくない。そもそも、自分の行っているトレーニングが健康維持のために必要かどうかすら分からないのが実情だろう。これをIoTとAIを使って、しかもまち全体で気軽に行ってもらおうというのが、「スマートウェルネスシティ」の肝だ。
仕組みはこうだ。ソニーネットワークコミュニケーションズが提供するパーソナルヘルスプロモーションサービス「FAIT(ファイト)」を分譲地で導入。分譲地内に併設される、タブレットと専用のスポーツセンサーを活用した体力認知機能を測定する「FAITステーション」で、住民の好みのタイミングで使用しながら、いまの自分の機能状態が確認できるというわけだ。日常の活動は、玄関ドアの鍵などにもなるウェアラブルデバイス「FAITタグ」で管理。毎日の食事や睡眠、運動を記録する。
こうした体力測定や日常の記録をAIが学習し、約150パターンあるトレーニングメニューから、それぞれに合った運動を提案する。情報は居間のテレビから入手できる。ただ、ここまで用意されても、「どこでトレーニングすればいいの」など理由を付けて、一歩踏み出せない人もいるだろう。そこはIoTやAIでの替えがきかない、まさに人間がやるところだ。ここにも工夫が施されている。
トレーニングメニューの提案で、例えば「ぶら下がり運動」を推奨する際、分譲地内の公園にある雲梯に、人がぶら下がった状態の画像を同時に映し出す。アキレス腱を伸ばすには公園の階段にある手すりなどのように「どこでやれば…」という疑問を解消できるのだ。しかも、この公園には腹筋のできるベンチや歩き方のバランスを意識できる「8の字ウォーク」など、健康につながる仕組みも用意。トレーニングは、スポーツクラブNASの監修のため、自己流にならずにすむのだ。同社担当者は「普段の生活の中で運動を続け、健康維持につながるよう、多くの点に気を配った」と話す。
アラフィフ記者「FAITステーション」で挑戦
ゲーム感覚で気軽に健康状態が確認
本当にIoT やAI で、納得いく健康状態を確認できるのか──。こんな疑問に答えるため、アラフィフ記者が実際にFAITステーションのメニューにある8項目全てを体験してみた。
椅子に着席し、担当者から手渡された「スポーツセンサー」を右ももに装着。両手にはタブレットを持つ。まずは「発声継続時間」。「あー」と大声を出してくださいというお題。普段、水泳で肺活量は鍛えている。「こんなのちょろい」と思い、「あー」と声を出したら、かすれていき、ついには虫の音のような声。思ったよりきつい。その結果わずか10.4秒で撃沈。偏差値はたったの46.9。「これ意外にきついんですよ」と担当者がすかさずフォローを。「このままじゃいけない」。真剣モードにスイッチを入れ起死回生を狙う。
「足の反応速度」は偏差値61。その後もお嫁サンバのようなステップを繰り返す「足のリズム」(56)、「足踏み速度」(58)、「足上げ時間」(54)、「立ち座り速度」(77.7)、認知機能を調べる「絵で記憶力」(51.5)、「順押し注意力」(58.1)と、とりあえずそれぞれで偏差値50は超え、総合評価では「A」。そして、この結果、私に必要なトレーニングは「坂道トレーニング」と「グー・チョキ・パー」。「坂道ウォーキング」を選ぶと、分譲地の場所を示し、そこまでを「大きなストライドで元気に登り」とアドバイスをもらった(写真)。
所要時間は10分程度。ゲーム感覚でできるので苦にならない。健康維持に関心を持つきっかけにはなりそうだ。また、家の近くでのトレーニング場所の提案は、「気軽さ」の演出に一役買っている。そして、この「FAIT ステーション」は集会場にあることで、住民間のコミュニケーションづくりにもつながることが期待できる。
日常生活の中で自分の健康状態が確認でき、スポーツクラブなどに出向くよりも、はるかに運動への意識に対するハードルも低くなるため、一定の効果が期待できるだろう。
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