積水化学工業 住宅カンパニー 自然災害による停電でスマートハウス本領発揮
普段通りの家電使え、居住者の不安和らげる
太陽光パネルや蓄電池搭載の住宅で、停電時をしのげるのか──。積水化学工業住宅カンパニーが、2018年に発生した自然災害による停電での蓄電池システムの稼働状況を公表した。停電時でも普段通りに近い家電が使える一方で、システムを使いこなせていないという課題も浮き彫りとなった。
積水化学工業によると、2018年の停電は約855万戸。700万戸以上停電した2011年の東日本大震災から8年間の累計では2600万戸に上り、単純に2戸に1戸の割合で停電が発生したという。
また、停電解消までの時間は2018年の台風21号で約5日間だったのをはじめ、台風24号で約3日、北海道胆振東部地震でも約2日かかった。さらに北海道胆振東部地震では全道がブラックアウトに陥るなど電力供給システムの脆弱さも露呈した。台風の進路次第では広域にわたって停電が発生することも2018年に再認識させられた。
こうしたことを背景に注目されるのが、太陽光パネルで発電した電力を蓄電システムに充電し、住宅で使う家電の電力を供給するスマートハウスだ。ただ、実際に停電時に電気が供給されたかを面的に把握するのは難しく、今回同社が公表したデータは、現状把握とスマートハウスの課題を知る手掛かりとなる。
今回の調査は、太陽光発電システムと省エネにつなげるスマートハイム・ナビ「HEMS」、蓄電システムを搭載した住宅1万7835戸を対象に実施した。
停電時に蓄電池から電気が使用できる「スマートハイム」で、事前に計画したコンセント・スイッチで電気が使える(一部で使える)「スマートハイムPlus」と、家中で電気が使える「V to Heim」がある。
この1万8000戸弱を母数に、2つの台風と北海道胆振東部地震で実際に蓄電システムが稼働した住宅を割り出したところ、全体の8%に上る1391戸で蓄電システムの稼働が確認できた。残りについては、被害のあった対象地域も含まれていたものの、停電は免れていたという。
蓄電システムが実際に稼働した時間はどのぐらいであったのか。平均時間で最も長く稼働したのは北海道胆振東部地震で約30時間。裏を返すと、「スマートハイム」が稼働しなければ1、2日にわたり、自宅は停電に見舞われたことになるわけだ。
台風21号では平均16時間、台風24号では同15時間だが、それでもそれぞれ約2割で1日以上稼働するなど、長期停電への備えが必要なことが、このデータからも分かる。
災害が起きた地域で、停電の心配から解消されるだけでも居住者の不安は和らぐが、そんな中で、人はどんな家電を使うのか。同社は、停電時に稼働していた4つの「スマートハイム」に住む人への聞き取りなどをしながら、状況を明らかにした。
これらの事例では、普段通りに近い状態で家電を使えていても、食洗機の使用を控えるなど省エネに心掛けている世帯がある一方で、別の事例では、大量の電気を使い蓄電池の充電が不足したケースもあったという。
また、手動での切り替えが必要となる初期型を導入していた住宅では、利用者が設定を忘れて、蓄電池の充電が空になっていたケースもあるなど、利用者の使いこなしに課題があることが判明した。
こうしたことを踏まえて、同社は、台風24号の接近の際には、PV・蓄電池の使い方の説明メールを居住者に送信。メール送信した客の13%が蓄電池の備えを実施したという。同社は「導入したお客に再度説明するなどしながら、きちんと使いこなしてもらえるよう仕組みを作ることが必要」(住宅営業統括部住宅営業部長兼住宅商品企画部長・村上健氏)と強調する。
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