(一財)日本建築センター、建築・住宅業界のSDGs導入にガイドライン
これからのビジネス展開に不可欠な取り組みを推進
(一財)日本建築センター(橋本公博理事長)が、「建築産業にとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」をまとめた。一般建築、住宅、不動産へのSDGs普及を目的に、企業がSDGsを経営計画等に盛り込む際の方法などについて解説している。
SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された2030年を目標年とした国際目標。
持続可能な世界を実現するため、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など17のゴールと、このゴールを目指すための行動指針として169のターゲット、その進捗を測るための232の指標から構成される。
建築・住宅産業においてSDGsに対する関心、注目が高まっているが、「どのように取り組めば良いのかわからない」という声もあるという。そこで同センターは、昨年2月に「建築関連産業とSDGs委員会」(全体委員会委員長:村上周三・東京大学名誉教授)を設置し検討を行ってきた。その一年の活動成果を取りまとめたものが「建築産業にとってのSDGs-導入のためのガイドライン-」である。
同ガイドラインは、一般建築産業、住宅産業、不動産業がSDGsの達成に向けた取組みを開始するためのガイドラインで、SDGsをそれぞれの企業の問題に落とし込んで考えるための方策を提示する。
「建築産業の企業の関係者全員でこの問題を考え、将来ビジョンや今後解決すべき課題を共有し、実行に移すこと、すなわち建築産業にとってのSDGsを経営計画に盛り込んで、ビジネス展開することの一助になれば」(小野宗良・業務企画部担当部長)という狙いだ。
同ガイドラインでは、建築・住宅産業がSDGsに取り組むために必要な段階を4つの章に整理して紹介する。
1章「SDGsとは」では、SDGsの概要や建築産業の取組みとSDGsの関係を解説、2章「建築産業におけるSDGs導入必要性とメリット」では、SDGsの導入が経済・社会・環境の諸問題の解決に貢献するとともに、新たなビジネスチャンスの創出やリスク削減につながることなどを解説する。
3章「SDGs導入に向けたビジョンと経営計画の策定」では、企業のビジョンや経営計画にSDGsを導入する際の基本的な考え方などを説明し、4章「目標設定と進捗管理」では目標設定や進捗管理の方法などについて説明している。
ガイドラインを出版
シンポジウムの開催も
一般建築産業、住宅産業、不動産業はGDPの約2割を占め、都市・地域経済を支える基幹産業であるが、その一方で、建築行為を通じて地域の自然環境を改変し、少なくない環境負荷を発生させている。わが国の経済、社会、環境に対する大きな影響を考えると、持続可能な社会の構築に向けて果たすべき責任は大きく、また、その貢献が期待されている。
一方、SDGsに取り組むメリットとして、同ガイドラインでは「新たなビジネスチャンスの創出やリスク削減など」をあげる。「持続可能な社会の構築に向けて、新たな社会課題の解決に資する事業領域に手つかずのビジネスチャンスが多く眠っている」(同)というわけだ。
一方、SDGsが登場したことにより違法や不当な条件によりダンピングを行う企業を世界のマーケットから排除する効果が期待されていることなどから、SDGsへの対応の遅れそのものがリスクにつながる。「SDGsに取り組む企業であることが政府などによる応募・入札条件となることなどが想定される。逆に取り組みが不十分である場合、経営姿勢に懸念を持たれる」(同)ということである。建築・住宅産業でいえば、長時間労働、建設技能者の低い処遇、建設廃棄物の不法投棄、違法伐採木材の使用などが企業の評価につながると考えればわかりやすい。
同センターでは、SDGsの取組みについて普及を図るため、2019年2月初旬に同ガイドラインを出版する予定。
さらに、同ガイドラインを紹介するシンポジウムを2月20日に開催する。SDGsの目標達成年である2030年に向け、建築産業がSDGsに取り組む意義、メリット、取り組む際のバリアーについて議論する予定だ。
同センターでは「ガイドライン策定で終わりではなく、今後も建築産業によるSDGsの取組みの推進に貢献する活動を継続していく」(同)考えだ。
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