パナソニック、住宅部材の海外展開を本格化 “日式”を輸出、売上高20倍へ

工業化・高齢化・高機能化がキー

  


パナソニック エコソリューションズ社は、海外でのハウジングシステム事業(水まわり設備・内外装材の販売等)を本格化させる。「施工の工業化」「高齢化対応」「高機能化」といった日本の家づくりのノウハウを、台湾を皮切りに中国やASEAN、欧米などの国に輸出することで海外市場を切り開いていく。

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まずは台湾から
そして中国、インド、ASEANに拡大

パナソニック エコソリューションズ社(以下、パナソニック)は、海外でのハウジングシステム事業(キッチン・バスなどの水まわり設備・内外装材の販売等)に本格的に打って出る。まずは、他国に先駆けてハウジングシステム事業で進出している台湾での取り組みを強化する。これまで、コンセントやスイッチといった電材事業が売り上げのほとんどを占めていたが、今後はハウジングシステム事業の取り組みを強化し、事業全体のなかでの同事業の売り上げ比率を2018年度の12%から2030年度には21%に倍増、売上高を約30億円に引き上げる方針だ。 

さらに、台湾で蓄積したハウジングシステム事業のノウハウを他の国へも展開し、中国やインド、ASEAN、さらには欧米などでも事業の拡大を図る。その結果、ハウジングシステム事業の海外全体での売上高を現在の50億円から2030年には20倍の1000億円に、海外売上比率を約20%に拡大させ、海外市場を成長ドライバーにする。

「海外で本格的に事業を行える土壌がようやく整ってきた」と、パナソニック エコソリューションズ社 ハウジングシステム事業部の山田昌司 事業部長

各国の生活・商習慣への対応に苦戦
いま“日式”がクローズアップ

人口減少による住宅着工数の減少に伴い、今後、住宅事業者は日本国内で大きな成長を見込むことが難しい。このため、旺盛な住宅建築需要が見込まれる新興国を中心に既に海外市場の開拓へ本格的に乗り出している企業も多い。

一方で、パナソニックではハウジングシステム事業において、1960年代から海外に目を向け始め、1990年代に中国に工場、中国・台湾に販社を設立、流通網の構築を図りながら海外での住宅部材の販売や内装工事事業などを展開してきた。しかし、現在の売上高は50億円程度にとどまっている。

その大きな理由は、各国の特性に合わせて十分に提案を行えるリソースを割くことが難しかったことにある。住宅は国ごとに文化や生活、商習慣の違いが表れやすい。このため、商品の仕様や施工の仕方、流通網の構築などを、各国の特性に合わせて取り組む必要があるが、これには多大なコストとリソースが必要になり簡単なことではなかった。

だが、ここにきて、海外展開で追い風が吹いてきた。経済成長により社会と暮らしが変化し、日本と新興国などで住宅に関して共通のニーズが出てきたことで、日本で行っているハウジングシステム事業のノウハウを活かした事業展開が可能になってきた。「日式」(中国・韓国語で日本式という意味)の住宅づくりを海外へ輸出し、海外市場の本格的な開拓を狙うというビジネスモデルを展開できるようになってきたのだ。

湿式から乾式への転換で海外の家づくりを変える

パナソニックが輸出しようとしている日式の提案は、大きく「施工の工業化」「高齢化への対応」「高機能化」の3つだ。

「施工の工業化」については、主に台湾、中国、ASEAN、インドでの提案に力を入れる。これらの国では、急速な経済発展に伴う建築需要が旺盛であるが、一方で労働力不足や施工品質の確保が問題となっている。このため、施工の工業化を実現する部材を提案する。

その一つがユニットバスだ。アジアの新興国などでは、職人が現場でタイルを貼って仕上げる湿式の浴室が一般的だが、パナソニックでは工場であらかじめ作りあげた日本独自の乾式工法を採用したユニットバスを提案。キッチンやトイレ、洗面、外装材などについても、乾式工法の商品を提案することで、工期短縮と品質向上を訴求する。

また、中国ではこれまで内装を施さずスケルトンで住宅を販売することが一般的だったが政府が内装の施工を義務化したことで、今後は“内装付き住宅”の需要が拡大する可能性がある。台湾でもこれまでは住宅販売時には水まわりのみを施工し、内装の施工は販売後に行う方式が一般的だったが、最近は内装も施して差別化を図る住宅会社も出てきている。このため、現地のデベロッパーや販売代理店などと協業しながら、パナソニックの乾式工法による設備・建材を採用した内装付き住宅の提案も行っていきたい考えだ。


 ハウジングシステム事業部の海外売上目論見

中国・台湾でも超高齢化
シニアマーケットが顕在化

「高齢化への対応」という観点からの日式提案は、日本と同様に高齢化が進行している台湾と中国で重点的に行う。台湾は2050年に高齢者人口が800万人、高齢化率は35.7%と日本を抜き世界一位になる予想。中国の高齢者人口は2030年に2.5億人、2050年には3.6億人になる見込みで、絶対数が桁違いに多い(日本は2050年で4000万人)。さらに、そのなかには富裕層も多いという。

このため、パナソニックでは日本で培った高齢者向けのバリアフリー部材の提案に力を入れていきたい考えだ。台湾では福祉事業者の福楽多との協業を軸にパナソニックの部材を採用した日式の高齢者配慮型住宅の住空間提案を行う。また、中国では出資している介護事業者の雅達集団を通じてオールパナソニックの部材で高齢者市場の攻略を加速させる方針だ。

「バリアフリーが、台湾と中国ではまだ浸透していない。ちょっとした提案でも大きな価値になる」(パナソニック エコソリューションズ社 ハウジングシステム事業部・山田昌司 事業部長)。

さらに、「高機能化」の日式提案については、アジアのみならず米国・欧州でも提案していく方針。VIG(真空断熱ガラス)やVIP(真空断熱パネル)、耐酸被覆鋼板、高機能収納デバイスなどの高機能住宅部材をパートナー企業の販路も利用しながら拡販していく。

「日本では当たり前の機能も他国では、そうではないものも多い」(山田ハウジングシステム事業部長)。

中国ビッグマーケット開拓の試金石は台湾

工業化、高齢化、高機能化による日式の提案で海外市場の開拓に本格的に乗り出したパナソニック―。2030年までに海外売上高20倍という大きな目標を掲げるが、そのキーを握るのは、人口14億というビッグマーケットを持つ中国の存在だ。同国の住宅建設投資額は2017年の時点でも108.9兆円(日本は17.4兆円)と大きいが、2025年には189.2兆円(日本は17.1兆円)に倍増するとも予想されている(日経センター中期予測・IHS調べ)。

中国は大規模なマンションが多いため、1つのマンション開発プロジェクトで部材が標準採用されるだけで、数十億円という大きな収益を見込める。

「中国では、相当な勢いで売上高を伸ばせると思っている。2030年の売上高1000億円という目標は“最低でも”ということ。これからどれだけ伸びるか、期待してほしい」と山田ハウジングシステム事業部長は自信を見せる。

一方で、パナソニックでは、まずは台湾市場への訴求に力を入れていく方針であり、中国市場でのハウジングシステム事業拡大の鍵を握るのは、台湾での成功だ。台湾は親日の国であり事業を行いやすく、分譲マンションの開発で進出しているパナソニック ホームズと協業することで、日式提案のトライアルを行いやすい。「まず、台湾をショーケースとし、日式を海外へ輸出するためのノウハウを溜め込む。そのうえで、今後、市場規模の大きい中国市場や他の国を攻めていきたい」(山田ハウジングシステム事業部長)としている。

台湾での事業展開が今後の同社の海外事業の行方を占ううえでの試金石になりそうだ。

パナソニックはショウルームでの空間提案などを通じて、海外で同社の住宅部材の訴求を図る。写真はリビングショウルーム台北

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