2018.12.20

スノーピーク、アーバンアウトドア事業で「野遊びできる家」を提案

住環境の企業を特約店に 非キャンパー需要に対応

アウトドア用品などの分野で国内外で高い人気を誇るスノーピーク(新潟県三条市、山井太社長)は、現在、アーバンアウトドア事業を推進している。その一環として、工務店などの住関連企業を特約店として登録し、「野遊びできる家」の提案を推進している。

工務店がスノーピークの店舗を運営 
住宅提案から暮らし提案へ

スノーピークは、「人間性の回復」を社会使命として様々な事業を展開している。この社会使命を具体化するために、注力しているのがアーバンアウトドア事業だ。

「日本のキャンプ人口は840万人。全人口のわずか7%しかない。非キャンパーの方々の人間性の回復に貢献するためには、キャンプを行わない方々への提案が求められる」(営業本部東日本事業創造部シニアマネージャー・吉野真紀夫氏)として、アパレル、ビジネスソリューション、地方創生などの分野での事業をグループ全体で進めている。そして、アーバンアウトドア事業の大きな柱になっているのが住宅関連の事業だ。

アーバンアウトドア事業の一環として、「Shop in Shop」という取り組みを進めている。これは、工務店を中心とした住宅関連企業がスノーピークの特約店として同社の製品を販売するだけでなく、「野遊びできる家」というライフスタイルを提案していくというものだ。

例えば、工務店のモデルハウスの隣にスノーピークのショップを開設し、そこでアウトドア用品などを販売する。また、モデルハウスでは、スノーピークのアウトドア用のキッチンやテーブル、椅子などを庭などで使いながら、家にいながらアウトドアライフを実現できる暮らしを提案していく。

「野遊びできる家」は、住宅のハード部分の提案というよりは、アウトドア用品を活用しながら、自然を感じながら日々を過ごすための生活提案。住宅FCとは異なり、現時点ではスノーピークから特約店である工務店などに住宅の仕様などを指示することはないという。

特約店になるには、15坪以上の売り場面積を設け、スノーピークの商品を、各ジャンルを網羅する形で一通り定期的に仕入れることが条件となる。基本的には特約店が買い取ることになる。さらに、スノーピークが運営するキャンプ場で研修を受講しマイスターとなることも必要だ。現在、全国15カ所で「Shop in Shop」が運営されており、地域の重複を避けながら、今後も特約店数を増やしていきたい考えだ。

2018年4月に竣工した新潟県新潟市の戸建分譲住宅プロジェクト「つながる街『天野エルカール』」の共有地では、住民がたき火を囲みながら交流できるオープンスペースも設けている
「天野エルカール」の各住戸では、スノーピークのアイテムを活用しながら、アウトドアリビングを提案
「天野エルカール」の共有地に設置された「住箱―JYUBAKO―」。スノーピークと建築家の隈研吾氏が共同で開発し、トレーラーハウスなので建築許可を取得する必要がない
現在、同社では山形県山形市でも分譲地の監修を行っている

街づくりも監修
人気の分譲住宅を演出

アーバンアウトドア事業のもうひとつの柱が、マンションや戸建て分譲住宅プロジェクトの監修。例えば、三井不動産レジデンシャルの「パークタワー晴海」(2019年4月竣工予定)では、アウトドアリビングを監修し、共有部にキャンプサイトを設置するといった提案を行っている。

2018年4月に竣工した新潟県新潟市の戸建分譲住宅プロジェクト「つながる街『天野エルカール』」(全10戸)では、住宅棟と共有地の監修を担当している。このプロジェクトは、空き室が目立ち始めた4棟の5階建てのアパートからなる住宅団地を1棟だけ残し、取り壊された4棟の建物の空き地に戸建住宅を分譲しようというもの。

各住宅は地域の工務店を中心とした10社の会社が供給したが、基本的なコンセプトであるアウトドアリビングの部分については、スノーピークがアドバイスなどを行った。

一方、コミュニティづくりの仕掛けとして、住民がたき火を囲みながら交流できるオープンスペースも設けている。アウトドアを楽しむための椅子やテーブルなどのアイテムは住民の共有品として、それらを収納する「住箱―JYUBAKO―」という木製のトレーラーハウスも用意。この「住箱」は、スノーピークと建築家の隈研吾氏が共同で開発したもので、トレーラーハウスなので建築許可を取得する必要がない。

なお、「天野エルカール」では、18年4月14日~4月30日までの期間、住宅展を開催したが、当初目標の700組・1400名を超える1168組・2231名が来場したそうだ。また、プロジェクトに参加した工務店のなかには、街びらき後もモデルハウスとして自社で施工した住宅を活用するケースもあり、新規受注の獲得につながっているという。

現在、同社では山形県山形市でも分譲地の監修を行っており、2019年4月に街びらきが行われる予定だ。

若年層に中心に高いブランド力を誇るスノーピークだが、そのブランド力を活用したいという住宅関連企業は少なくない。同社では、「人間性の回復という当社の使命に賛同してもらい、しっかりと当社の世界観を理解してもらってからプロジェクトに参画するようにしている」(吉野氏)としており、今後も理念などを共有できる企業とのコラボレーションを推進していきたい考えだ。