エコハウスを作れるようになった理由

住宅においてエネルギー消費量のことを考えた結果、温熱性能に優れたエコハウスが生まれた。内部空間は快適になり、エネルギーの総消費量が減ったので、全館暖房が可能になった。さて、この変化は、大企業のハウスメーカーではなく、中小工務店から始まっている。中小工務店の機動力が奏功し、①健康志向アピールへのシフト、②要素技術の発展、③コンピューターシュミュレーションによる学習効果を推し進めたからだと考える。一つずつ見ていこう。

① 健康志向アピールへのシフト

ある時期まで、中小工務店はエコハウスをアピールする際の切り口に、冷暖房費用の削減メリットを掲げていた。局所暖房と全館暖房において、初期投資の差をランニングコストで割りながら計算し、費用を比較する。だが、問題なのは、実際にはそれほど大きな差が出ないということだ。考えてみれば当然である。局所暖房では、暖房する部屋が限られているので、その費用はそれなりに少ない。このため、全館暖房に掛かる費用と比べても、差が出にくい。

一方、これにエアコンなどの設備機器の更新費用が入ってくると俄然差が大きくなってくる。エコハウスではエアコンの台数自体が少ないので、2度目の投資も小さくて済む。

しかし、現在はこうした主張よりは、健康ブームに訴求することが多くなった。そして、それが受け入れられつつあると感じる。エコハウスになると、家の中で活発に動けるようになり、それが老化を防ぐとのこと。とにかく、エコハウスは健康に寄与するのだ。

②要素技術の発展

エコハウスには欠くべからざる要素技術がある。その先頭に立つのはサッシ。現在、日本でも、高性能な枠とトリプルガラスなどの高性能ガラスを使用できるようになってきており、これは大きい。このほかに、全熱交換型の換気扇などがある。一度、温めた空気を換気する際に捨ててしまっては勿体無い。そこで、汚なくて暖かい空気を冷やし、新鮮な冷たい空気を温めながら換気する装置が求められる。また、断熱材は様々な分野でそれぞれ高性能化が図られている。

③ コンピューターシミュレーションによる学習効果

近年、コンピューターの操作が簡単になっている。結果として、コンピューターのシミュレーションと実際の空気の温度との差がなくなりつつある。コンピューターのソフトを動かすエンジンは様々だが、日本のアメダスの情報に基づき、その場所固有のシミュレーションができるようになった。これによって、高付加価値型のエコハウスの提案が確実なものとなった。

コンピューターシミュレーションの計算がきちんとできるようになったこと自体、とても重要なことだ。だが、一方で、設計者がコンピューターシミュレーションの計算を試行錯誤しながら何度も行い、温熱に対する知識を自らのなかに蓄積させる、実はこのことこそが、意味があることのように思える。

説明の仕方を工夫することでクライアントの心を掴めるようになり、メーカーの努力で手軽に高性能な部材が手に入るようになり、設計者がコンピューターシミュレーション技術を学習した結果、ナレッジが蓄積された。

技術革新は大企業ではなく、機動力のある中小の工務店から始まったのである。

近年、コンピューターシミュレーションの発展により、高付加価値型のエコハウスの提案が確実なものとなった
画像:「建もの燃費ナビ」 株式会社シーピーユー

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