2022.3.17

大阪・関西万博、飯田GHなどがパビリオン出展

「いのち輝く未来社会のデザイン」を具現化

「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)の民間パビリオン出展参加者が内定した。住宅分野からは、飯田GHなどが参加する。民間企業の自由な発想力、技術力を生かしたパビリオン展示を通じて、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の具現化が期待されている。


大阪・関西万博は、2025年4月13日から10月13日まで、大阪市内の臨海部に位置する人工島、夢洲(ゆめしま)で開催される。会場面積は155ha。会場中心部にパビリオンエリアを設け、南側には水面、西側には緑地を配置した会場となる。想定来場者数は約2820万人。万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現に向けて、People,s Living Lab(未来社会の実験場)というコンセプトのもと、「世界との共創」、「テーマ実践」、「未来社会ショーケース」の3つを実施する。

「世界との共創」では、「いのちを救う」、「いのちに力を与える」、「いのちをつなぐ」という万博のサブテーマのもと、世界各国の公式参加者(参加国や国際機関)が、それぞれの立場から世界共通の課題の解決を目指すSDGs達成に向けた優れた取組みを持ち寄り、会場全体でSDGsが達成された未来社会の姿を描く。

大阪市内の臨海部に位置する人工島、夢洲。大阪・関西万博の会場となる

「テーマ実践」では、主催者が中心となり、様々な参加者と共創し事業を企画し、企業やNGO/NPO等、行政と共に、テーマが実現された未来社会の姿を会場内に創り出す。

「未来社会ショーケース」では、万博会場を未来社会のショーケースに見立て、先端的な技術やシステムを取り入れることで、未来社会の一端を実現することを目指す。万博主催者である(公社)2025年日本国際博覧会協会は、「これらを通じて、来場者や参加企業・団体が、後の社会に根付く新たな技術、サービス及びシステムに触れること、また、SDGs達成やSDGs+beyondに向けて自らが取り組むことにより、それぞれの考え方に変化が起こり、会期後の行動変容に繋がっていく。大阪・関西万博がてことなり、その理念・成果をレガシーとして後世に継承していくことも万博の開催意義の一つ」としている。

大阪・関西万博の中でも、「テーマ実践」として民間企業が参加するパビリオンは、特に注目度が高い。

「1970年の大阪万博において、世界各国のパビリオンと並んで民間パビリオンが大きな存在感を示した。これまで日本で開催された万博において、日本経済をけん引してきた多くの企業・団体が民間特有の自由な発想や構想力で、時々のテーマを解釈し、時代性の反映と共に未来への期待を膨らませる魅力ある展示を行ってきた。民間パビリオンは、未来社会を感じさせてくれる『夢』であり、工夫を凝らした展示や演出によって感動を与えてくれる『華』となる」(同協会)。

同協会は、2021年9月16日から10月29日まで企業・団体等を対象に、パビリオン出展参加者を募集。「パビリオン出展審査委員会」を開催し審査を行い、日本国政府との協議の上、13企業・団体をパビリオン出展参加者に内定した。
13企業・団体は、以下の通り。飯田グループホールディングス(GH)、(一社)大阪外食産業協会、住友EXPO2025推進委員会、特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン、玉山デジタルテック、電気事業連合会、(一社)日本ガス協会、日本電信電話、バンダイナムコホールディングス、パソナグループ、パナソニック、三菱大阪・関西万博総合委員会、吉本興業ホールディングス。

飯田GH、大阪公立大学と共同出展
学生・大学・企業の視点から計画

飯田GH が研究・開発を進める人工光合成技術を搭載した「IG パーフェクトエコハウス」のイメージ

住宅分野からは飯田GHが民間パビリオン出展参加者に内定した。国内初の試みで、大阪公立大学(大阪市阿倍野区、2022年4月開学、現大阪市立大学)と産学連携し、共同出展館として出展する。

これまで、飯田GHと大阪市立大学は「人、社会、地球の健康」をテーマに、持続可能な住まい・暮らし・社会を創造する「未来型住宅」や「まちづくり」の実現に向けて、共同研究部門を設け、研究・開発を行ってきた。

その一つが人工光合成技術。植物が行う光合成のように、太陽光エネルギー、CO2から有用な物質を作る人工光合成技術の開発に着手する。具体的には、人工光合成により「ギ酸」を生成する装置(パネル)を屋根に搭載した実験棟「IGパーフェクトエコハウス」の実証を進めている。人工光合成で生成したギ酸を貯蔵し、水素などに変換し、発電、給湯、電気自動車など、家庭内で使用する消費電力の全ての電力を賄う。CO2の排出抑制、CO2を活用したエネルギー創出が可能になる。こうした研究・開発成果の一端を、パビリオン出展を通じて発信していく考えだ。

また、飯田GHは、大阪市立大学、大阪府立大学と共同で「スマートライフサイエンスラボ」を新設し、健康で豊かに暮らすことができる未来型住宅「ウエルネススマートハウス・」の研究開発を開始している。大阪・関西万博のパビリオン出展を目標に活動している大阪市立大学・大阪府立大学の学生らを中心に構成される学生団体「Honaikude」も参加し、学生・大学・企業の視点からパビリオンを計画する。

飯田GHの森和彦取締役名誉会長は、「大阪市立大学と飯田GHが従来より取り組んできた共同研究開発内容が、今回の大阪・関西万博のテーマである『いのち輝く未来社会のデザイン』と見事に一致することに大きな縁を感じている。私たちが近い将来実現させたい”安らぎと幸せの住環境”を、大阪から世界中の方々に発信したい」と話す。

パナソニックは顔認証技術など活用
新しい観光・回遊のあり方を提案

また、民間パビリオン出展企業に内定したパナソニックは、万博も見据え、顔認証による非接触・手ぶら決済など、安心・安全なICT活用サービスの開発を進める。大阪の道頓堀商店街において、2021年12月に20日間にわたり、新しい観光・回遊のあり方を検証する実証実験を実施した。また日本版IR(統合型リゾート)に対するソリューション事業の拡大、新たなビジネスモデルの創造にも取り組んでおり、関西エリアではDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現した『スマートツーリズム』に関するプロジェクトを進行している。

シグネチャーパビリオンのテーマ事業プロデューサー。左から、宮田氏、落合氏、中島氏、石黒氏、小山氏、河瀨氏、河森氏(福岡氏は欠席)、会場運営プロデューサーの石川勝氏、会場デザインプロデューサーの藤本壮介氏

「いのち」起点に8つのテーマ
シグネチャーパビリオンも

また、同協会は、主催者企画事業として、「いのち」を起点とした8つのテーマを事業構築(クリエイティブ・ドリブン)の手法で実現するテーマ事業を実施する。8人の専門家がパビリオンをつくり、テーマをそれぞれの哲学から語り深める「署名作品」でもあることから、「シグネチャーパビリオン」と名付けた。8人のテーマ事業プロデューサーが大阪・関西万博のテーマ「いのちの輝く未来社会のデザイン」を、それぞれ固有の観点から解釈、展開し、未来に生きる人々に繋ぎ渡すパビリオンを建設する。

テーマ事業名及びテーマ事業プロデューサーは、「いのちを知る」が福岡伸一氏(生物学者、青山学院大学教授)、「いのちを育む」が河森正治氏(アニメーション監督、メカニックデザイナー)、「いのちを守る」が河瀨直美氏(映画監督)、「いのちをつむぐ」が小山薫堂氏(放送作家、脚本家)、「いのちを拡げる」が石黒浩氏(大阪大学教授、ATR石黒浩特別研究所客員所長)、「いのちを高める」が中島さち子氏(音楽家、数学研究者、STEAM教育家)、「いのちを磨く」が落合陽一氏(メディアアーティスト)、「いのちを響き合わせる」が宮田裕章氏(慶應義塾大学教授)。

2021年8月からテーマ事業への企業協賛の募集を開始し、テーマ事業プロデューサーとの協議を経て、2022年2月時点で協賛企業15社が決定した。大和ハウス工業や長谷工コーポレーションなどが協賛する。今後、テーマ事業「シグネチャーパビリオン」の実現を共創により進めていく計画だ。

民間企業が参加する民間パビリオン、そして民間企業が協賛し、8人の専門家が「いのち」を起点とした8つのテーマをクリエイティブ・ドリブンの手法で実現するシグネチャーパビリオン。民間企業の自由な発想と、最先端の技術が融合することで、「いのち輝く未来社会のデザイン」は、どのように具現化されるのか。期待が高まる。