2018.8.1

大和ハウス工業 北海道で事業の多角化を推進 物流施設やホテルなど

非住宅分野をテコに市場を開拓

大和ハウス工業は北海道で事業の多角化を一層推進していく。戸建や賃貸、マンションなどの住宅分野だけでなく、物流施設や、ホテルなどの非住宅分野の事業に力を入れることで新たな領域を開拓し、売り上げ拡大を狙う。

大和ハウス工業では売り上げが200億円以上を維持できるようになると支社に昇格するが、昨年4月に札幌支店は「北海道支社」に昇格した。2017年度の売り上げは253億円と200億円を突破しており業績は好調だ。さらに、今年4月には、大和ハウス工業が北海道に進出してから60年という節目を迎えた。これを機に、今後北海道エリアでの事業展開を一層加速させていく。

「北海道進出60年目を迎えたことを機に、一層、事業展開を加速させたい」と話す三原康展支社長

北海道支社の業績が好調な大きな理由は、住宅分野に加えて、非住宅分野の事業を拡大させていることにある。「北海道支社では全体の売り上げのうち、戸建住宅と賃貸住宅がそれぞれ10%程度で、物流施設や病院、メガソーラーなどの非住宅の割合が住宅分野の売り上げよりも大きい。今後についても住宅の販売数は横ばいから微増で大きな増加を期待することは難しい。一方で、非住宅分野は受注単価が大きいため、売り上げの拡大が期待できる」と、三原康展支社長は話す。

非住宅分野のなかでも、特に力を入れている事業のひとつが、物流施設事業。建物を建設して、テナントに賃貸するというものだ。

北海道は全国の中でも物流事業の取り組みが特に遅れている。津軽海峡を越えることがハードルとなってきたことや、主な産業が一次産業であり製造業が育ちにくいことなどが要因だ。だが、最近はネット通販や外国人旅行者の増加に伴う物販需要の高まりで、物流ニーズが高まってきた。このため、大和ハウス工業は北海道の物流事業を新たな事業の柱に据え、取り組みを強化していく。

物流施設には、複数のテナントに貸し出す「マルチテナント型」と、一社を対象に建設からオーダーメイドで手掛ける「BTS型」がある。これまで北海道支社ではBTS型の物流施設を複数手掛けてきたが、より多くの事業者の物流施設の利用ニーズに応えるため、今年1月末に北海道で初のマルチテナント型の物流施設「DPL札幌東雁来」を建設した。2階建てで16区画を設けており、約1万8000坪の賃貸面積は北海道では最大級。今年10月以降の稼働を目指しているが、すでにネット通販と住設関連の企業のテナント利用が決まっており、他からも引き合いがあるという。

「DPL札幌東雁来」の大きな特徴のひとつはその立地。札幌市街へつながる札幌自動車道、新千歳空港、苫小牧、帯広、旭川へとつながる道央自動車道の結節地点の「札幌インターチェンジ」から10分圏内にある。「札幌インターチェンジ」はまさに北海道物流の要衝である。それだけに、「DPL札幌東雁来」を利用することで、事業者は北海道全域に効率よく荷物を輸送することができる。

また、「DPL札幌東雁来」では事業者の業務の効率化を図り、倉庫と直接つながる事務所を併設、車両用のエレベータを後付けできる設計などを行っている。さらに、北海道は特に雪の影響が大きいため、通常は建物外に設ける荷物の積み下ろし・積み込み場所を建物内に設ける工夫もしている。

一方で、札幌支社ではBTS型についても、引き続き供給に力を入れていく。札幌の南に位置する北広島輪厚工業団地内に、約6万7000坪の物流施設用の土地を取得。「Dプロジェクト札幌南」としてBTS型の新たな大規模物流拠点の開発を行う。大和ハウス工業が工業団地内にこれだけ広い土地を取得し、大規模な物流拠点の開発に取り組むことは、北海道では初めての試みだ。

約6万7000坪の物流施設用の土地は9区画に分かれているが、約4000坪から約1万5000坪まで、大小様々な面積の用地を設けており、事業者の様々なニーズに対応する。

北海道支社では札幌で初となるマルチテナント型の物流施設「DPL札幌東雁来」を建設。北海道は特に雪の影響が大きいため、通常は建物外に設ける荷物の積み下ろし・積み込み場所を建物内に設ける工夫もしている
北海道支社では札幌で初となるマルチテナント型の物流施設「DPL札幌東雁来」を建設。北海道は特に雪の影響が大きいため、通常は建物外に設ける荷物の積み下ろし・積み込み場所を建物内に設ける工夫もしている
サービスアパートメントを併設したホテルの開発も進める。北海道内で第一弾の「ラ・ジェント・ステイ札幌大通」につづき、函館にも第二弾の展開を予定

外国人旅行者増でホテル事業も強化
“新型”で差別化

このほか、大和ハウス工業は北海道で、ホテル事業による非住宅分野の拡大も強化していきたい考えだ。“新型ホテル”で市場の開拓を図る。北海道の中でもニセコ地区は外国人旅行者からスキーリゾート地として特に注目が高まっている。このため、ファーストキャビン(東京都千代田区・来海忠男社長)と、飛行機のファーストクラスをイメージしたキャビンスタイルホテル「ファーストキャビン ニセコ」を2018年11月に開業、単なるホテルでなく、特徴のあるホテルとすることで差別化を図る。

また、新たなホテルの形態として、サービスアパートメントを併設したホテルの開発を進めていこうとしている。サービスアパートメントとは、ホテルと一般賃貸との中間的なもので、長期滞在ゲスト向けの新たな宿泊形態。北海道支社では2016年に「ラ・ジェント・ステイ札幌大通」をオープンさせているが、600泊以上の長期滞在者もおり好評。このため、近々、函館にも北海道内で第二弾の展開を図る。

このほか、大和ハウス工業では北海道内でメガソーラーなどの創エネ事業も実施するなど、次々と新たなことに挑戦し続けている。着実に実績を上げているだけに、住宅市場が縮小傾向にある北海道のなかでも、非住宅をテコにさらに売り上げを伸ばしていきそうだ。