2018.8.7

「まもりすまい保険」販売開始から 10年 今後、既存住宅流通関連のサービスは必須 ストック時代でも安心を提供

住宅保証機構株式会社 代表取締役社長 能登義春

住宅保証機構の住宅瑕疵担保責任保険「まもりすまい保険」は今年6月に販売開始10年を迎えた。同機構は住宅瑕疵担保履行法が施行されてから、いち早く「住宅瑕疵担保責任保険法人」の指定を受けまもりすまい保険を提供、これまで住宅瑕疵担保責任保険業界をリードしてきた。10年前から市場環境が大きく変化するなか、次の10年に向けてどのように取り組んでいくのか──。能登義春 代表取締役社長に聞いた。

住宅保証機構株式会社 能登義春 代表取締役社長

──「まもりすまい保険」の販売を開始してから10年という節目を迎えました。

弊社の前身である「(財)住宅保証機構」は、1980年に創設された「住宅性能保証制度」を29年間にわたり運営してきました。任意制度でしたので住宅事業者が必要に応じて利用していました。

しかし、耐震偽装が発覚した「姉歯事件」を契機に2008年4月、住宅瑕疵担保履行法が施行、住宅事業者には「住宅瑕疵担保責任保険」への加入か「供託」が義務付けられたことから、2008年6月から新築住宅を対象に「まもりすまい保険」の販売を開始しました。

住宅瑕疵担保履行法に規定される住宅事業者の資力確保義務をカバーするため、義務化の対象となる全ての新築住宅を建設・販売する住宅事業者の瑕疵担保責任を保険で引き受けできるよう準備する必要がありました。再開発事業、投資用マンション、サービス付き高齢者住宅、伝統構法の住宅など、新築住宅の契約形態や建設技術は多岐にわたります。このため、当初は国土交通省の判断を仰ぎ、住宅事業者とも打ち合わせを重ねながら、まもりすまい保険の提供を行う日々でしたね。

2012年からは、公益法人改革の趣旨に沿うかたちで、新たに設立した株式会社が財団法人から「まもりすまい保険」の事業を承継しました。営業活動を全く行えなかった非営利団体が営利企業になることは簡単ではなく苦労もしましたが、事業承継後は、「安心を、ささえる。未来へ、つなぐ。」をスローガンに、お客様の満足度向上を最大の課題として取り組んできました。特に、まもりすまい保険は、一般的な損害保険と比較して、手続きに手間がかかります。このため、まずは保険加入手続きをオンラインでできるようにしました。現在も、少しでも簡単にお手続きできるように改善を続けています。

2018年3月末時点で、まもりすまい保険(新築保険)の届出事業者数は約6万3000社、保険契約数は累計約120万戸となりました(「住宅性能保証制度」を含む保証・保険の累計契約戸数は258万戸)。

──これからの「まもりすまい保険」の展望は?

長期にわたり住み続けられる良質な住宅の供給・流通が強く求められていますが、雨漏りや建物の傾きがない安心で安全な住宅を供給・流通できる市場環境づくりが重要です。

まもりすまい保険では、新築住宅の建設工事途中に、「第三者」である弊社の現場検査員が現場検査を実施します。この現場検査は、これまでに保険金を支払った事故事例を分析し、フィードバックした基準に基づいています。こうした取り組みの結果、まもりすまい保険での基礎の瑕疵が原因の保険金支払い件数は、任意制度と比較して減少してきています。

一方で、雨漏りに関する事故が依然として多いという課題もあります。まもりすまい保険の保険金支払い件数のうち、雨漏りに関するものが9割以上を占めます。当社では、雨漏り事故の減少に貢献していくことを大きな使命と考えており、雨漏りの原因を分析し住宅事業者に伝えることや、現場検査の内容や時期の見直しなどに取り組んでいきたいと思っています。

また、新築から10年経過後においても、長く安心して住み続けていただくため、2015年から延長保険の販売も開始しています。

まもりすまい保険の保険金支払い件数のうち、雨漏りに関 するものが9割以上を占める。このため、雨仕舞いのパンフ レットなどで雨漏り事故の防止を促す

──これからはストック市場への対応も必要になると思います。既存住宅向け商品については、どのように考えていますか。

新築住宅着工戸数の減少が見込まれる中、既存住宅の流通に関するサービスは必須と考えています。

今年4月に改正宅建業法が施行され、インスペクション市場とともに、既存住宅向けの瑕疵保険市場の拡大も期待されています。弊社は、改正宅建業法の施行に伴い、既存住宅に対するインスペクション業務を開始しましたが、併せて「まもりすまい既存住宅保険」の販売拡大も図っていきたいと考えています。ぜひ、既存住宅の販売・仲介・検査に携わる住宅事業者には、さらなる安心・安全を提供するために、インスペクションの説明と併せて、「まもりすまい既存住宅保険」のご案内もお願いしたいと思っています。

また、今年4月からは既存住宅の標章制度「安心R住宅」も始まりましたが、標章付与の要件のひとつに、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準への適合があります。このため、「安心R住宅」の登録団体とも連携しながら、良質な既存住宅の流通マーケット形成に向けた仕組みづくりに取り組みたいと考えています。例えば、(一社)優良ストック住宅推進協議会と連携し、同会が提供するブランド住宅「スムストック」に「まもりすまい既存住宅保険」を付保する取り組みを開始しています。今後は新築だけでなく既存住宅においても、まもりすまい保険の拡大を図っていきます。

弊社の強みは、全国631拠点の保険窓口、3788名の現場検査員による全国ネットワークです。その中には行政と連携しつつ良好な住宅・建築・まちづくりを推進する「すまいづくりまちづくりセンター」も含まれており、地域の実情に合わせた「まもりすまい保険」の普及を支えていただいています。また、保険窓口の大多数は確認検査機関であり、確認申請と同じ窓口で「まもりすまい保険」を申し込みいただけます。住宅事業者が普段からお付き合いのある窓口で住宅瑕疵担保責任保険の手続きも行える点を、身近に感じてもらえているのではないでしょうか。今後もビジネスパートナーと連携し、地域に密着したサービス展開を行っていきます。

ストック市場の環境整備が徐々に進んできているなか、「まもりすまい既存住宅保険」の販売拡大も図る
住宅保証機構株式会社
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