受け身型企業に徹し住宅産業の持続的成長を下支え

木造大型パネルの開発者であり、大型パネル事業を展開する新会社、ウッドステーションを立ち上げ、代表取締役社長に就任した塩地博文氏。どのような問題意識から大型パネルの開発に取り組んだのか。三菱商事建材から独立し新会社を設立した狙いは何か。新会社を通じて何を成し遂げようとしているのか。

塩地氏は「ウッドステーションは、住宅業界で希少価値であろう受け身型企業を目指し、業界最適を演出する。それが持続的成長のポイントだ」と話す。

ウッドステーション代表取締役社長 塩地博文氏

──大型パネル開発の経緯、背景について教えて下さい。どのような問題意識から開発に取り組まれたのでしょうか。

まずは大工を含めた熟練工の不足ということが社会問題化してきていることです。在来木造は、単純化して言えば、「大工がつくる」工法です。大工がいなくなれば、在来木造は成り立たないということに帰結していきます。在来木造は、新築住宅着工戸数の約7割のシェアを占めるほどの巨大産業でありながら、その根本が成り立たなくなってきている。そうした矛盾が大きくなってきていると感じたのです。

さらにここにきて様々な要請が彼らに集中してきています。高品質確保の要求、ZEH 対応、建材の重量化、木造の大規模化などの負担を一手に引き受けなければならない。そうした厳しい環境を強いられながら、一方でそれに見合うだけの待遇が用意されていないということが、大工が減少していく大きな理由ではないでしょうか。

いずれにしても、在来木造は、大工がつくる工法であり、大工が不足し、持続できないということは、在来木造が基本として成り立たないということに直結するわけです。循環型資源の活用という観点からウッドファーストなどが叫ばれる時代を迎えていながらも、最大の需要先である在来木造の根幹が危ぶまれている。一番の基本問題を放置しているという意識に立ち、「在来を工業化すべきだ」と考えました。

これは、大工の職域の全部を代替するということではなく、「在来を工業化して大工の負担を少しでも減らす」、「大工の一番負担になっている躯体施工の分野を工業化する」という考え方です。大工の高齢化も進んでいますが、たとえ高齢化しても、内装や、建具などのインテリアの部分に熟練した技を十分活かせます。建て方、上棟などは、非常に厳しい世界です。若い人が中心でやるような力仕事やチームでやるようなものについては、工業化がまず必要ではないか。そこの部分はせめて工業化して、高齢化した大工と共存していくようなインフラを産業界として提供していくべきではないか。こうした問題意識は、大型パネルを開発する過程で大きなモチベーションになりました。そうしたなかで、在来木造をアップグレードし、大工の建て方機能を工業化するということを思い付いたのです。具体的には、柱、梁、サッシ、断熱材、金物などを工場で組み立てて製造する大型パネルを開発しました。

過度に進んだ工業化と放置されている工業化

──大型パネルは、これまでの在来工法におけるプレカットなどの工業化と何が違うのでしょうか。

結論から言えば、建築する事業者側の視点から大型パネルがつくられているということです。これは小さな変化だとは思っていません。これまでのプレカットなどの在来の生産合理化を超えるレベルのものだと自負しています。

建築側の視点から大型パネルがつくられているということが具体的にどういうことなのか説明する前に、まず日本の住宅産業全体の工業化はどのような状態になっているのか整理しましょう。

電子機器や自動車などの分野と同様に、ものづくりの一つの分野である住宅産業においても、非常に高いレベルで工業化が進んでいます。ただ、これは大手ハウスメーカーをはじめとする特別認定を保有している方々に限っての話です。また、そうした大手ハウスメーカーは、生産方式だけではなくて生産現場にジャストインで建材などを持っていく物流、サプライチェーンについても非常に精度高く構築しています。この日本の大手ハウスメーカーの工業化技術やサプライチェーンは、世界最先端のものであると言えるでしょう。ただ、クローズド工法であるため、私企業の範囲内の最適化に留まっている。言い換えれば「オレの工業化」であり、「ワタシのサプライチェーン」であると言えるでしょう。

一方で、在来と呼ばれる一番巨大なオープン市場の工業化は、木材を刻むプレカットのレベルで止まっています。設計情報の連動も進んでいません。設計情報が連動しなければサプライチェーンも構築できません。在来市場はオープンであるけれども、情報連動ではスタンドアローンになってネットワークしていない。こういう矛盾があったわけです。

やや刺激的な言い方をすると、過度に進んだ工業化と、放置されている工業化と言えるほど、明らかな工業化レベルのギャップが生まれていると言えます。

では、なぜ一番巨大で、住宅産業の中心にあり、これからも中心になるべきはずのオープンな在来市場の工業化が遅れているのでしょうか。これをなぜ産業界、経済界は放置しているのでしょうか。

大手ハウスメーカーが展開するプレハブ住宅の方が巨大市場になったのならば話は別ですが、戦後一貫して新築着工戸数のトップを占め続けてきたのは在来です。すなわちシェアでいうと、私企業が持っているシェアは、トップ企業でさえも数パーセントにすぎない。本当のトップシェアは誰かというと、実は大工たちがつくる在来なのです。しかしそこには、様々な企業があり、多くの大工が携わっているので、個々の数字としては表れませんが、総体で見ると巨大な在来という名のトップシェアメーカーがいるわけです。

柱、梁、サッシ、断熱材、金物などを工場で組み立て大型パネルを製造する

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