ダブルケアと住まい【前編】
(一社)ダブルケアサポート 代表理事 東恵子氏
子供の育児と親の介護が同時に求められる ダブルケア が社会問題として深刻化してきている。今後、晩産化・少子化・高齢化が進むことで、ダブルケアを行うダブルケア当事者は、さらに増えるとみられている。横浜でダブルケア当事者のサポート事業を展開する(一社)ダブルケアサポートの東恵子代表理事は「ダブルケアラーが孤立せずに、育児も介護も無理なく行える環境整備が求められている」と話す。
─(一社)ダブルケアサポートの立ち上げの経緯から教えてください。
きっかけは2012年に開始されたある調査までさかのぼります。2012年に、横浜国立大学大学院国際科学研究院の相馬直子准教授と、英国ブリストル大学の山下順子上級講師が共同で、育児と介護に関する調査研究を開始しました。
日本では、晩産化・少子化・高齢化が進んでいます。晩産の夫婦の場合、子育ての期間が後ろにずれるため、子育ての時期と親の介護の問題が生じる時期が重なりやすいと言われています。相馬先生たちは、このことに着目し、「ダブルケア」という言葉をつくり、子育て支援や介護に関わるNPOや市民団体などに協力を依頼してダブルケアの実態調査を始めたのです。
私は、横浜市西区で、子育て支援を展開するNPO法人シャーロックホームズの理事長を務めています。調査対象である子育て世代と研究者を結ぶ役割として、相馬先生たちのダブルケア調査に協力しました。調査への協力の依頼が来たときは、「ダブルケアの問題を抱えている人など、そんなに多くないだろう」という先入観を持っていましたが、実際に調査に協力するなかで、こうした先入観は間違いであることがわかりました。
ダブルケア調査では、末子が6歳以下の母親を中心に1894人から回答が得られました。そのうち約1割がダブルケアに直面している状況でした。過去に直面した人も約1割、数年先に直面すると考えている人も約2割いました。合計約4割の人たちが当事者であることがわかったのです。また、当事者たちからは、「精神的にしんどい・体力的にしんどい」、「親や子供の世話を十分にできない」「兄弟や親戚間で認識のずれがある」「経済的負担が重い」といった様々な声が聞かれました。
こうしたダブルケアに関する深刻な状況を知ったからには、私たちも何もしないでいるわけにはいきません。そこで支援者有志が集まり、一般社団法人の前身となるダブルケアサポート横浜を2015年5月に立ち上げました。全国への展開をしていくために2016年9月に(一般)ダブルケアサポートを設立しました。
─ダブルケアが強いられている世帯の実態について教えてください。
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