高血圧患者へ自宅で医療を受けられる環境を “ホームクリニック”の実現へ向けて
病院に定期的に通うことは簡単ではない。特に、コロナ禍の今、感染リスクもあり、ためらう人も多い。こうしたなか、高血圧患者を対象に、オンラインで健康状態をモニタリングし、必要に応じて医師の診療を受けられるホームクリニックサービス「居宅遠隔モニタリング」が注目を集めている。同サービスを運営するテレメディーズの谷田部淳一代表理事と、技術提供を行うCambrianRoboticsの佐藤雄紀社長に、サービスについて詳しく聞いた。
——テレメディーズでは「居宅遠隔モニタリング」サービスを提供していますね。このサービスはどういったものでしょうか。
谷田部 「居宅遠隔モニタリング」は、高血圧患者を対象とした”ホームクリニックサービス”です。病院に通院することが大変な患者でも、高血圧についての医療を自宅にいながら丸ごと受けられる体制をサポートしています。
まず、高血圧患者に自宅でBluetooth内蔵の血圧計で血圧を測定してもらいます。すると、そのデータがクラウド上に蓄積されますので、テレメディーズの専門スタッフがモニタリング・分析し、高血圧患者にアドバイスをフィードバックします。加えて、医師によるビデオ通話でのオンライン診療と、診療結果に基づいた薬の配送も行なうことができます。費用はデータのモニタリング・分析、アドバイスまでは月額990円、オンライン診療と薬の配送まで含めると月額4500円からとなります。
日本で3人に1人が高血圧患者と言われていますが、通院治療を含めて何らかの対策を取っている人は半分ほどで、約3000万人は安全な血圧の値ではありません。しかし、高血圧を放っておくと、脳梗塞や心筋梗塞、心不全などの発症リスクが高まり、認知症になる可能性も通常の10倍となります。
高血圧は住まいの環境とも大きく関わっています。室温が寒いとヒートショックやコールドショックになる可能性も高まります。
それだけに、高血圧患者は日常的に家庭内で血圧データを取り、医師に診てもらいアドバイスを受ける必要性がありますが、「居宅遠隔モニタリング」はこうしたことを患者に負担と感じさせることなく、気軽に行うことができるサービスです。
——今回、「居宅遠隔モニタリング」のシステムに、CambrianRoboticsの開発した「obniz BLE/Wi︲Fi ゲートウェイ」を採用し、提供できるサービスが拡充されたそうですね。
佐藤 「obniz BLE/Wi‐Fi ゲートウェイ」とは、Bluetooth内蔵の機器から取得したデータをクラウド上に蓄積するためのハブになるIoTデバイスです。Bluetoothを内蔵しているだけではクラウドにデータを蓄積できないため、こうした機器が必要になります。
「obniz BLE/Wi‐Fi ゲートウェイ」の特徴は、何より簡単に利用できるということです。コンセントに差し込み、簡単な設定を行うだけでBluetooth内蔵の機器とつながることができます。
谷田部 今回、「居宅遠隔モニタリング」のシステムに「obniz BLE/Wi‐Fi ゲートウェイ」を採用したことで、従来の血圧計だけでなく、他のBluetooth内蔵機器とつながり、データを蓄積することが可能になりました。
例えば、脈拍・酸素飽和度を測るパルスオキシメータや体温計の測定データを蓄積することができ、よりユーザーの状況を把握しやすくなりました。また、照度センサーやドア開閉センサーなどとも繋げることで、患者の家での活動状況を把握することもできます。さらに、「酸素飽和度が95%を下回ったら」「トイレのドアが12時間以上開閉しなかったら」「室温が15℃以下になったら」など、機器やセンサーのデータが一定の条件になった時にアラートを出すこともでき、よりきめ細やかなサービスの提供が可能になりました。
佐藤 将来的には、蓄積した様々なデータを分析し、より高度な医療サービスを提供できる可能性もあります。具体的には、一人ひとりに合わせたきめ細やかな医療サービスや、身体の状態を予測したアドバイスや治療などです。データは私たちに気づきを与えてくれます。今後、データを分析することで、まったく新しい高血圧医療を提供できるようになるかもしれません。
——コロナ禍で家で過ごす時間が長くなり、「居宅遠隔モニタリング」の重要性はより増してきそうですね。
谷田部 先ほどお話したように、居住環境と血圧には密接な関係があるだけに、家で過ごす時間が長くなる中で、高血圧患者の自宅での健康状態をモニタリングする「居宅遠隔モニタリング」の重要性は増していると言えるでしょう。
また、新型コロナウイルスへの感染を恐れて通院をためらう人も増えていますが、こうした人が安心して医療を受けられる体制としても「居宅遠隔モニタリング」はより一層重要になってきています。
同時に、今は新型コロナウイルス患者で深刻な病床不足が危惧されておりますので、医療現場を守るためにも、高血圧を重症化させて入院するような状況にならないことが重要です。
また、患者が自宅療養する際の見守りにも適しています。「居宅遠隔モニタリング」は、オンラインを通じて自宅でできる限りの医療を行う”ホームクリニック”を実現するサービスとして、日本の医療に貢献できると考えています。
——今後の展望は?
谷田部 住宅事業者と連携し、住まいの”ホームクリニック化”を進めて行けたらと考えています。住環境と高血圧は密接な関係にありますので、新築・既築住宅に関わらず、「居宅遠隔モニタリング」を導入し、高血圧患者が自宅で医療を受けられる環境を提供していけたらと思っています。
「居住遠隔モニタリング」の費用は月額990円からと料金を抑えて提供できるようにしていますので、住宅事業者にとっては安価に大きな付加価値を創出できるのではないでしょうか。現在の提供エリアは首都圏にとどまっていますが、今後は全国に広げていく予定です。
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