これからの室内環境、「WELL認証」がスタンダードに!?

パナソニックが実証実験オフィス「worXlab(ワークスラボ)」で取得

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コロナ禍で健康で快適な室内環境へのニーズが高まるなか、「WELL認証」に注目度が集まっている。先行する欧米の後を追うかたちで日本でも認証取得が進んできており、今後、健康で快適な室内環境を示すうえで、認証取得はスタンダードになってきそうだ。パナソニックでは、最新テクノロジーを導入した東京・汐留の実証オフィス「worXlab(ワークスラボ)」などで「WELL認証」を取得。実証で得たノウハウを活用し、同認証の取得を目指す事業者へのコンサルタントにも乗り出した。


健康でウェルビーイングな室内環境が重要に
米国などで「WELL認証」取得が拡大

コロナ禍でオフィスなどの建物の室内環境への関心が高まっている。ウイルス対策だけでなく、より健康で快適に過ごせる空間へのニーズが増している。

こうしたなか、注目を集めているのが「WELL認証」だ。これは、米国のDelos社が開発した認証制度で、医学的・科学的なエビデンスに基づき、利用者の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に貢献する建物室内の環境を評価し認証するもの。評価対象の建物はオフィス、学校、商業施設、集合住宅など。認証の評価項目は「空気」、「水」、「食物」、「光」、「運動」、「温熱快適性」、「音」、「材料」、「こころ」、「コミュニティ」の10のカテゴリーから構成され、様々な観点から、評価を行う。

認証を得ることで、建物利用者の健康とウェルビーイングに貢献する室内環境であることをグローバルな指標で示すことができるメリットがある。このため、例えば健康経営や働き方改革などを目指す事業者とっては、オフィスで認証を取得することにより、社員の健康意識や会社への帰属意識の高まり、離職率や生産性向上といった効果も見込める。

健康、安全・快適といった要素について総合的に判断する「WELL v2」と、昨年6月に運用がスタートし、新型コロナウイルスに機動的に対応できるようにした感染対策に特化した「WELL Health-Safety Rating(以下:WELL H-SR)」の2つの認証がある。

ワークスラボでは、感染症対策の様々な取り組みが評価され、今年3月に「WELL認証」の「WELL Health-Safety Ratingを取得している

このうち「WELL v2」は世界で前年度比4倍となる9547件(2021年4月20日時点)のプロジェクトが登録、「WELL H-SR」は運用開始から1年経たずに1万2000件以上(2021年3月30日時点)のプロジェクトが登録されており、米国を中心に世界で認証取得の動きが広がっている。

一方、日本での登録件数は「WELL v2」が61件、「WELL H-SR」が24件とまだ少ないが、諸外国では建物室内の環境を示すスタンダードな基準として認知が広がってきているだけに、日本でも今後は普及してくる可能性が高そうだ。

パナソニックがオフィスで「WELL認証」取得
認証取得へのコンサル提案も

日本で「WELL認証」の取得に力を入れているのがパナソニック ライフソリューションズ社だ。

同社は、今年1月に大阪府門真市にあるライフソリューションズ社 システムソリューション開発センターのオフィスで国内電機メーカーで初めて「WELL v2」のゴールド認証を取得。3月には昨年12月に同社東京汐留ビル内に設置したライブオフィス「worXlab(ワークスラボ)」で「WELL H-SR」を取得した。

また、「WELL認証」を取得するために、どういった設計や設備の導入が必要かなどを提案できる「WELL AP(Accredited Professional)」という資格があるが、パナソニックでは「WELL認証」取得の経験を生かし、空間ソリューション事業推進部の社員約10名が資格を保有している。7月からは、資格者の専門的な知識を通じ、「WELL認証」を取得するための設備の導入や空間設計などのソリューション提案コンサルティングも開始、今後、積極的に取り組んでいきたい考えだ。

パナソニック: WELL認証とは? 詳しく解説
https://www2.panasonic.biz/ls/solution/office/genre/well-certification/

「コロナ後の理想のオフィスを研究
200を超えるセンサーやデバイスで“人起点”の提案を

「WELL H-SR」を取得している東京汐留のワークスラボでは、実際に空間ソリューション事業推進部の社員が働くかたちで実証実験を行ながら、健康とウェルビーイングに貢献する理想のオフィスの研究を行っている。

そのなかで特に重要視しているのが働く人の立場に立った“人起点”の提案だ。

これまでのオフィスは、一か所に集まって仕事することに意義を見出していたため、いかに効率的に机を配置できるかといった“建物起点”での空間設計だった。しかし、今、オフィスの存在意義が見直されるなかで、「ポストコロナのオフィスには、働く人の働きやすさを重視した“人起点”の提案がより求められる」と、空間ソリューション事業推進部の村上昌史主幹は話す。

“人起点”のオフィスづくりを研究するために、800㎡の空間に200を超えるセンサーやデバイスを設置。ワークスラボで働く人の行動などのデータを取得し、そのデータを解析することで、働きやすいオフィスを実現するためのソリューションに磨きを掛け、アップデートしていこうとしている。

ワークスラボでは、オフィスに求められる付加価値を、「交流」「集中」「回復」「安全」に設定し、それぞれの項目で、空気の流れ、照明、音、香り、映像などの要素に関する先進テクノロジーを導入しながら、働きやすいオフィス環境の実証実験を行っている。

リアルな場を供給することで、偶発的なコミュニケーションが生まれ、新たなアイデアを得ることもある。こうした付加価値が期待できることから、「交流」を促すためにミーティングゾーンをフロアの約半分の面積を占めるようにし、従来よりも広くとった。席の配置についても、従来型の「島型」ではなく、フリーアドレスを採用。加えて、エリアごとに色温度や照度を調整できる照明や指向性スピーカーを活用した「フレキシブルゾーニングソリューション」により、机や椅子といった什器はそのままに、衝立などがなくても光と音だけで簡単・自在に、オフィスのゾーニングを変更できるようにしている。

エリアごとに色温度や照度を調整できる照明や指向性スピーカーを活用した「フレキシブルゾーニングソリューション」を導入

また、会議室には、「会議サポートソリューション」を導入している。ブースでの対面の会議では、会議内容に合わせて機器を制御し効率的で快適な会議をサポート。オンライン会議では、光・空気・音・映像で没入感のある環境をつくり、オンラインでありながら対面に近い会議環境を作り出す。

交流の一方で、一人で「集中」して作業したいこともある。ワークスラボでは個別ブースを導入したうえで、「集中持続サポートソリューション」を導入。センサーが瞼の動きから集中力の低下を検知し、光・気流・ 香りで刺激を与えることで集中力を持続させる。

生産性向上を図るためには、「回復」も必要だ。ワークスラボでは、会議室に光・空気・音・映像で癒し効果のある「短時間リフレッシュソリューション」を導入。また、ウェルカムゾーンには、照明技術で自然の木漏れ日を再現することで、癒し効果のある空間を創出している。
 

光・空気・音・香り・映像で没入感のある環境をつくり短時間で気分転換を促す「短時間リフレッシュソリューション」

そして、コロナ禍の今、重要性が増している「安全」については、特に力を入れた取り組みを行っている。エントランスには、顔認証と体表面温度計測などにより、非接触で新型コロナウイルスなどの感染症に罹患しているかを判断する「感染者リスク低減ソリューション」を導入。フロア全体において、人口密度の高いエリアには、重点的に天井から風を送り込み、床からその風を吸い込むことで飛沫感染リスクを低減する「空質管理ソリューション」も導入している。さらに、ミーティングゾーンの会議ができるテーブルには、上からの吹き下ろす空気がテーブルを包み込むことで、安全で快適なコミュニケーションが可能な「エアリーゾーニングソリューション」も組み入れた。

人口密度の高いエリアには、重点的に天井から風を送り込み、床からその風を吸い込むことで飛沫感染リスクを低減する「空質管理ソリューション」も導入
天井のルーバーからのダウンフロー気流によりエアロゾル滞留を抑制する「エアリーゾーニングソリューション」

問われるオフィスの意義
これまで以上の付加価値が必要に

テレワークの普及で、今や通常の業務をこなすだけなら、自宅や自宅近くのサテライトオフィスなどでも仕事をすることが可能な状況になっており、今後、オフィスにはこれまで以上に付加価値が求められてくる。

ワークスラボを通じた新たな付加価値は、総合設備メーカーならではのテクノロジーを通じた提案に大きな強みがあると言えるだろう。光・空気・音・映像などの様々な要素を盛り込んだ提案を行い、さらにデータを取得・活用しながらその提案をアップデートしていく──。それにより、健康とウェルビーイングに貢献するオフィスが実現し、今後日本でもますます注目が高まる可能性が高い「WELL認証」の取得にもつながる。コロナ禍でオフィスの意義が問われているだけに、パナソニックのワークスラボなどを通じた、理想のオフィスづくりの取り組みから今後も目が離せない。