New   2026.1.8

積水化学工業がカナダに新会社設立。日本の工業化住宅技術で世界の住宅不足に挑む

「建設業」ではなく「製造業」として海外へ

 

積水化学工業 住宅カンパニーは、カナダ・オンタリオ州に「SEKISUI CANADA MODULAR SOLUTIONS INC.」を設立し、モジュラー製造工場を新たに立ち上げる。なぜ、今、カナダの住宅市場への参入を決断したのだろうか。

ヨーロッパやアメリカ、カナダなど、多くの国が住宅不足に直面している。しかも、その多くの国々で作り手不足が深刻化しており、結果として充分な住宅供給量を確保することが困難になり、さらに価格高騰という二重苦に悩まされている。

つまり、世界中で作り手不足に左右されることなく、アフォータブルな住宅供給を促進していくことが求められているのだ。

こうした状況下で注目を集めているのが、オフサイト建築やモジュラー建築といった、住宅建築の工業化手法。アメリカでは、州政府によってモジュラー建築への補助を行っているほか、カリフォルニア州ではモジュラー建築のガイドラインを整備するといった取り組みが進んでいる。

こうした世界的な住宅不足、そして人手不足の解消に向けて、日本の工業化住宅技術が果たす役割があるのではないか―。その考えを事業へつなげていこうという動きが表面化してきた。

ターゲットは学校や中層集合住宅
3年目途に年間300モジュールの設計・生産体制構築へ

積水化学工業 住宅カンパニーは、日本で培った工業化技術を生かして、鉄骨モジュラーの設計・製造を行う新会社「SEKISUI CANADA MODULAR SOLUTIONS INC.」をカナダのオンタリオ州に設立した。

同社住宅カンパニー経営戦略部特命プロジェクトヘッドの中野克哉氏によると、「工業化技術を海外での事業展開に活かそうという検討は2006年頃から開始していましたが、今回のカナダの新会社設立については2年ほど前から市場調査などを行ってきました」という。

また、住宅カンパニー海外事業推進部海外事業企画室長の安藤徹治氏は、「米国の西海岸周辺などの市場調査も行いましたが、需要の多さやモジュラー建築に対する補助があるといった点を考慮し、まずはカナダのオンタリオ州で事業を開始することにしました」と話す。

住宅カンパニーの経営戦略部特命プロジェクトヘッドの中野克哉氏(右)と海外事業推進部海外事業企画室長の安藤徹治氏(左)

カナダも深刻な住宅不足に直面しており、移民の受け入れなどで労働力を補おうとしたが、建設業への労働力の流入が上手く機能していないという実情がある。また、移民を受け入れたことで、住宅不足だけでなく、学校などの社会インフラも不足しているそうだ。

さらに言うと、降雪量が多いため建設業の生産性向上が非常に難しいという地域性も課題のひとつ。それだけに、降雪期でも工場内で作業を進めることができるモジュラー建築への期待感が大きいというわけだ。

積水化学工業 住宅カンパニーが設立する現地法人では、日本国内で50年以上にわたり累計67万棟超のモジュラー住宅を供給してきた実績とノウハウ、そして技術を活用し、カナダが抱える住宅や建築に関する課題の解消に貢献する。

オンタリオ州に年間500~600モジュールを製造できる工場を立ち上げ、2026年7月頃までに設計・製造・販売体制を構築していく方針だ。オンタリオ州のトロント、オタワなどを商圏として、モジュラー建築のビジネスモデルを確立していく。

日本のような戸建住宅ではなく、1~2階建ての学校建築、4~8階建ての集合住宅や介護施設などをターゲットとして、まずは年間300モジュールの供給を目指していきたい考え。

「運搬時の道路交通法の問題などから、日本では13㎡ほどのモジュールを製造するのが一般的だが、カナダでは50㎡規模のモジュールを供給できる」(安藤氏)という点も、市場開拓に向けた武器になりそうだ。

参考にするのは自動車産業
日本の工業化住宅技術で世界の住宅不足を解消

中野氏は、今回のカナダでの事業について、こう語る。

「当社としては、コンストラクション(建設業)としてではなく、マニュファクチャリング(製造業)として海外市場に挑戦していくつもりです。目指しているのは自動車産業のような住宅産業のあり方です。自動車と異なり、部品の標準化などが難しいという側面はありますが、可能な限り工場での比率を高めていきたいと考えています。カナダの工場では日本以上に工場での生産比率を高める計画です。より製造業の色を強めていくことで、住宅不足の解消に貢献できるのではないでしょうか」。

積水化学工業 住宅カンパニーの日本の工場。ユニット建築の“雄”として、累計67万棟超のモジュラー住宅を供給してきた

同社では、2009年からタイでの住宅事業を開始しており、現地に工場も建設している。今回のカナダの住宅市場進出は、背景や目的などがタイの事業とは異なっている部分があるが、日本を代表するユニット建築の雄として、工業化住宅技術の活躍の場を世界に広げようとしているという点では共有している部分もある。

カナダで対象とする商圏内には、2社ほどのライバルになりそうなモジュラー生産企業がいるそうだ。中野氏は「品質や性能はもちろん、日本で培ったユニット生産のためのノウハウやサプライチェーンの構築の仕方など、我々に優位性がある部分は少なくありません」と自信を見せる。

戦後の住宅不足の中で、独自の発展を遂げた日本の工業化住宅技術。住宅不足と作り手不足に悩む国々に、どのようなソリューションを届けることになるのか―。