2022.3.3

セレンディクス、3Dプリンター住宅の試作棟を国内で建築

百年住宅の小牧工場内に

セレンディクスは、国内で実用化を目指す3Dプリンター住宅について、第一号となるプロトタイプを百年住宅の小牧工場内に建築した。


セレンディクス(兵庫県西宮市、小間裕康CEO)は、80社以上が加盟する研究開発コンソーシアムを通じて3Dプリンター住宅の実用化を急ピッチで進めている。

同社が提案する3Dプリンター住宅「Sphere」は、球体状の建物で、最終的には床面積100㎡で300万円以下の住宅を実現しようとしている。

本格的な住宅の発売に先駆け、グランピングや別荘、災害復興住宅などに使える建物を2022年2月から限定販売しており、「若い世代だけでなく、持ち家を所有していない高齢者の方々からの問い合わせも増えている。自動車と同じくらいの値段で自宅が買えるという点が注目を集めているようだ」と、同社の飯田国大 執行役員COOは述べている。

海外で出力した躯体を国内で組み立て

Sphere」の限定販売の開始に合わせて、国内第一号となるプロタイプをコンソーシアムに参画している百年住宅(静岡県静岡市、中嶋雄社長)の小牧工場内(愛知県小牧市)に建築した。

今回のプロトタイプについては、中国とカナダで出力を行ったものを分割し、日本に輸入し組み立てた。当初の計画では、3Dプリンターを日本に輸入し、現場で出力を行う予定だったが、コロナ禍の影響もあり3Dプリンターの輸入が遅れてしまい、海外で出力することになったという。

海外で出力した躯体を組み立てる手法でプロトタイプを建築

なお、同社では既に海外製3Dプリンターを調達しており、早ければ3月中にも国内に届く予定だ。

飯田COOは今回の経験を通じて、「設計データさえあれば世界中で同じものが製造できるという特徴をあらためて実感した。この特徴を活かせば、日本で作成した設計データで同じ住宅を世界中で実現でき、住宅ビジネスを大きく変えるのではないか」と指摘する。

さらに言えば、現場に3Dプリンターを持ち込むことができない場合、別の場所で出力を行い、それを現場に運び込み組み立てるという手法を採用することも考えられそうだ。

プロトタイプの床面積は10㎡で、約20トンのコンクリートを使用。出力したパーツをコンテナで運び、躯体を組み上げたうえで、開口部や外装の防水処理などの工事を行った。躯体の組み立て自体は3時間ほどで終了したという。仕上げ作業などを含めて約24時間で完成した。

「最終的には出力から仕上げまで含めて24時間で終了するようにしたい。そのために、例えば断熱材施工のロボット化などを検討している。また世界では出力時間を大幅に短縮できる3Dプリンターも開発されており、将来的には24時間以下で提供することも可能になるのではないか」(飯田COO)。

日本で求められる耐震性能にも配慮

プロトタイプの構造躯体は、ハニカム構造のようになっており、空洞になっている部分に断熱材を入れている。また、耐震性能を高めるために鉄骨も組み込んでいるほか、天井部分は木材で仕上げている。これは地震などの際に天井部が崩落し、居住者にリスクが発生することを防止するための配慮だ。

構造躯体のなかはハニカム構造のような状態になっている
天井部は耐震性を考慮し、あえて木材で仕上げた

「設計は日本人のスタッフだけでなく、ヨーロッパの方々にも携わってもらっている。その結果、ヨーロッパで求められる断熱性能などをクリアする一方で、日本で求められる耐震性能を高めるためのアイデアも融合することができた」(飯田COO)。

今回のプロトタイプを組み立てる様子を見た百年住宅の中嶋雄社長は、「球体状のデザインを型枠無しで実現してしまう点など、3Dプリンター住宅は住宅建築を大きく変える可能性を秘めているのではないか」と感想を語っている。

躯体内に断熱材を施工

セレンディクスでは、2023年12月から一般住宅の販売をスタートさせる計画だ。 

いよいよ日本でも本格的な動きを見せ始めた3Dプリンター住宅。諸外国から遅れをとっているだけに、今後は法制度の問題なども含めた官民一体となった取り組みも求められそうだ。