2017.3.16

現場発泡断熱材が躍進 性能・施行品質の向上で競争力増す Part 1

断熱性能と環境性能の両立へ 高性能化が進む現場発泡断熱材

材工込みの販売でシェアを伸ばす

施工現場で硬質ウレタンフォームの原液を吹付け、断熱材を成形する現場発泡断熱材。専任の施工者が現場での施工も行う材工込みの提供により、大工・職人不足が深刻化するなか、工務店などの支持を集め木造住宅を中心にシェアを伸ばしてきた。

(独)住宅金融支援機構が発表している「フラット35仕様実績実態調査」によると、フラット35の設計審査を受けた新築戸建住宅で採用された断熱材のシェアが大きく変わってきている。

壁の断熱材の種類で見ると、2007年度には50.1%と半数以上のシェアを持っていたグラスウールが2012年度には48.7%、25.3%のシェアがあったロックウールも11.0%に減少している。代わってシェアを伸ばしたのが現場吹付けなどの硬質ウレタンフォームで、2007年度は5.2%だったが、2012年度には19.5%と、約2割までシェアを伸ばしている。

経済産業省の資料によると、2014年における断熱材の出荷割合でも、9%が硬質ウレタンフォームの現場吹付け品。断熱材全体でも約1割のシェアを握るところまで伸びている。

戸建住宅向け現場発泡断熱材で最大手の日本アクアによると「2015年は約3万6200棟を達成したが、2016年はさらに伸び4万棟を超えた。材工込みの提供のメリットが工務店などにも浸透してきた」(大森課長)としている。

環境問題への対応からノンフロン化が進む

2015年7月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が公布。2016年4月から段階的な施行が始まった。2020年までには住宅も含めすべての建築物に省エネ基準への適合が義務付けられる予定だ。さらに、政府は2020年に大手ハウスメーカー・工務店等が新築する住宅の過半数がZEHとなることを目標に掲げており、住宅分野ではさらなる高気密・高断熱化が求められている。

現場発泡断熱材については、現在、水を発泡剤に使用するものが主流。2005年の京都議定書の発効により、温室効果ガス削減に向けた施策が強化され、それまで現場発泡断熱材の発泡剤に使われていたHFC(代替フロン)が削減対象ガスに加わった。HFCはフロンと比べオゾン層への影響は少ないものの、温暖化への影響が大きかったからだ。日本でも2015年に施行されたフロン排出抑制法で、現場吹付けウレタン断熱材が指定製品化され、HFCの削減目標が示された。

新たな発泡剤が登場 断熱性能も向上

そうしたなか、現場発泡断熱材業界ではHFCから、ノンフロンを実現する水へ発泡剤の切り替えが進んだのだ。

一方、断熱性能については、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームとしてJIS(JIS A 9526)の規定があり、品質基準値で水を発泡剤に使用する製品(A種3)は熱伝導率0.040W/m・Kとなっている。一般的な住宅用グラスウール断熱材とほぼ同等の性能を持つ。

ただし、住宅のさらなる高気密・高断熱化が求められるなか、現場発泡断熱材も、より断熱性能の高い商品が必要になってきた。

そうしたなか、登場したのがHFOという発泡剤だ。ノンフロンでオゾン層や地球温暖化への影響がほとんどないうえ、断熱性能の向上にも寄与する発泡剤だ。

2015年12月にはJIS A 9526が改定され、HFOを発泡剤とした種類(A種1H、A種2H)が追加された。
そのため、現場発泡断熱材の原液メーカーの間では、HFOを発泡剤に使用した商品を発売する動きが活発化している。

現場発泡断熱材に革命を起こす 新発泡剤「HFO」

現場で硬質ウレタンフォームを吹付ける現場発泡断熱材の場合、発泡剤の果たす役割が大きい。発泡剤はウレタンを膨張させるだけでなく、断熱性能にも影響を及ぼすからだ。加えて、現場発泡断熱材はもともと発泡剤にフロンを使用していたことから、オゾン層や温暖化への影響を抑えるため発泡剤のノンフロン化が課題だった。

そうしたなか登場したのが「ハイドロフルオロオレフィン」(HFO)による発泡剤。オゾン層破壊係数(ODP)はゼロ、地球温暖化係数(GWP)も1と極めて小さい。優れた環境性能が特長だ。また、HFOはウレタンを発泡する際に独立気泡を生成する。発泡剤がウレタンを基材としたセルの中に閉じ込められている状態をつくり出すのだ。

水を発泡剤としたときにできる連続気泡は空気が入れ替わってしまうため断熱性能は限定的だが、独立気泡は空気が入れ替わらず、発泡剤の断熱性能が活かせる。そのため、HFOを発泡剤に採用することで、水を発泡剤に使用する従来品と比べて断熱性能が25%向上する。

「HFOは環境性能と断熱性能を両立した発泡剤」(ハネウェルジャパン パフォーマンス・マテリアルズ・アンド・テクノロジーズ フッ素化学品事業部 松井勝之シニアマーケティングスペシャリスト)なのだ。

日本国内でHFO の供給を行っているのがハネウェルジャパンだ。米国に本拠地を置くグローバル企業で、化学品の開発・製造も行っている。

「世界でもHFO発泡剤の量産化を実現しているのは当社だけ」(同)として、日本の現場発泡断熱材の原液メーカーなどに採用を促進している。ZEH をはじめ、高性能な住宅が求められるなかで、断熱性能の向上に寄与し、住宅の省エネ化に貢献する発泡剤としてHFOの提案を積極化している。

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巨大な潜在市場が動き出す

2015年のいわゆる「空家特措法」施行から6年が経過する。
国は大きく利活用と除却の二方面から、制度改正や補助事業などを通じて空き家対策を進めてきた。
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空き家問題には数多くの課題が横たわる。
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さらに、コロナ禍は空き家市場にとってマーケット拡大のきっかけになる。
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今年3月に閣議決定された住生活基本計画でも、空き家の活用を「新たな日常」に対応した新しい住まい方の実現の1つに挙げている。
また、6月18日に閣議決定された骨太の方針でも空き家について言及。
「先進的取組や活用・除却への推進等の支援」などをしながら、既存住宅(ストック)市場の活性化に結び付ける考え方を明確にした。
こうした空き家への関心の高まりを追い風に、いよいよ空き家マーケットの誕生の期待が高まる。
国が掲げる2030年に14兆円のストック市場の実現可能性が見えてきた。

目次

HTʼs eyes

土石流が人災であったとしても
大規模盛土造成地の点検スピードアップを

ストック市場のけん引役になるか
空き家ビジネス
巨大な潜在市場が動き出す

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