2020.9.29

住友林業、東京大学と産学協創協定を締結

木や植物の新たな価値創造を探り、共同研究へ

産学協創協定締結で記者会見する住友林業の市川会長(左)と東京大学の五神真総長

住友林業は、東京大学と産学協創協定を締結した。両者で「木や植物の新たな価値創造による再生循環型未来社会協創事業」を推進。同社の市川晃会長は「再生循環型の未来社会のおける成長戦略を構築していきたい」と強調した。

同事業では、木の最先端科学研究を通じて「木の価値」を高め、木質資源の循環利用でサーキュラーバイオエコノミーシステム(循環型共生経済)を構築、持続可能で人と地球環境にやさしい未来社会の実現を目指す。東大の知見や様々な先端科学技術と、同社の木材・住宅産業の知見および森林経営の経験を統合し、共同研究や探索研究に着手。①木や植物の経済的価値の向上②森林資源の公益的価値の顕在化③木や植物と人の関係の定量化──の3つの視点から多角的に協創を推進する。

①の具体例としては、▽木造大型建築に関する研究▽木材成分から高性能なバイオプラスチックを創製する研究▽ナノテクノロジーの利用による高性能部材を開発する研究▽木材及び植物のゲノム選抜育種に関する研究など。「バイオマス科学をはじめとする木の科学によって、これまでの木材利用を越える新たな経済的価値を創出する」(同社)。②では土壌や立地環境が樹木の成長に与える影響の研究を掲げている。③については木が及ぼす快適性や知的生産性の効果の研究などを行う。

また、東大の未来社会協創基金の中に同社の寄付でプレミアム基金を新設。次の100年に向けて森を起点としたサステナブルな産業構造を構築するため、必要な学術研究や人材を育成し、その成果を社会に発信する。SDGs達成に向けた課題解決できる人材育成、住友林業の持つ海外拠点を生かしたグローバルインターンシップ、社会人のリカレント教育、同社と東大関連ベンチャー企業との協業などにも取り組む。

事業期間は10年、事業費は10億円を投入。「住友林業・東京大学『緑の再生循環型未来社会協創事業』運営協議会」を東京大学内に設置し、運営する。同社の光吉敏郎社長は「ESG、SDGsの達成に向けて目標を立て事業展開を加速するが、単独では解決が難しい問題もあり、連携が必要と考えた」と東大との連携の意義を述べた。