オピニオン |  2020.5.12

誰かの犠牲で成り立つ建築システムからの脱却を

ある仕組みが誰かの犠牲によって、表面的には上手く機能しているように見えていたとする。しかし、その「誰か」にスポットライトが当たることは少なく、いつしか無理が効かなくなっていく。そもそも、そのような「誰か」に自ら手を挙げて名乗り出る人がどのくらいいるのだろうか―。

在来木造住宅は、プレカット材の普及によって生産性が大きく改善した。現場で加工していた手間を工場へと移管し、なおかつ多くの加工手間を機械に委ねることが可能になったのだ。

プレカット材が普及する前を在来木造住宅1.0だとすると、プレカットによって在来木造住宅がバージョン2.0へ進化したことは間違いないだろう。

しかし、今、在来木造住宅はバージョン3.0へと進化することを求められている。あらため言うまでもなく、大工をはじめとした職人の不足や高齢化が深刻化してきており、バージョン2.0のままでは対応できない問題が生じてきているのだ。

その一方で国産材活用という社会的な命題を突きつけられ、木材に関する新たなサプライチェーンの構築も求められている。

さらに、住宅の高性能化に伴い建材などが重量化し、施工時の労働負荷が増大していることも見逃せない。そして、民法改正などの影響もあり、施工品質を均一化することで、設計通りの性能値を発揮できる住宅を供給することが、今まで以上に重要な意味を持ち始めている。

人手不足は、現場管理や営業にも影響を及ぼしつつあり、このままでは「お客さんはいるが、受注できない」という事態に陥ることさえ想定される。今後、ストック需要への対応も本格的に迫られるだろう。その時に、生産性は現状のままで、人だけが減っていくという状況のなかで対応策を講じることができるのだろうか。

つまり、在来木造住宅に関する様々な仕組みやシステムをさらに効率化・高度化し、バージョン3.0へと進化させるべき時を迎えているのだ。

バージョン3.0の萌芽を見逃すな

それでは、木造住宅3.0とは、どういうものなのだろうか。残念ながら、現時点でその絶対的な解はない。もしかしたら、もはや解はひとつではないのかもしれない。

しかし、バージョン3.0に向けた萌芽は間違いなくある。様々な企業が在来木造住宅を高度化・効率化するためのソリューションを打ち出してきているのだ。こうしたソリューションを上手く組み合わせていくことで、それぞれの在来木造住宅3.0を実現できる下地は整いつつある。

プレカットによってバージョン2.0に進化した在来木造住宅だが、いまだに「誰か」の犠牲によって成立している部分が大きい。「誰か」とは、現場で様々な誤差を解消する大工などの職人達であり、雑務に追われる現場監督や営業スタッフであり、そして、運悪く施工品質が劣るマイホームを与えられた施主かもしれない。

誰かの犠牲で成り立つ建築システムからの脱却を―。在来木造住宅3.0の絶対的な解があるとすれば、そういうことなのではないだろうか。


木造住宅3.0 高度化と効率化で建築を革新する
発行:株式会社創樹社
価格:本体800円(税別)
発行日:2020/05/12

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