新型コロナが促す産業構造の転換。オンライン化、デジタル化の急進展の陰で。
小林慶一郎氏が新型コロナ対策で8つの提言
新型コロナ禍が蔓延する中で経済崩壊も取りざたされ、わが国でも緊急経済対策の発動は秒読みの段階に入っている。財政余力のない中でどれだけの規模になるか注目の的だが、経済学者の立場から「新型コロナ対策をどのように進めるか」を提言しているのが、東京財団政策研究所の小林慶一郎氏。感染拡大を抑えるための自粛は需要減を招くが、これは感染抑止のコストであり、ある程度はやむを得ないとする一方で、需要減と株価暴落の悪循環の発生や生活機能維持が困難となる人たちには経済的な救命措置をとるなど経済政策で止めるべきと現状をとらえる。そして、その経済政策は、人の移動などが伴い、感染リスクを高めるタイプの消費税減税などの景気刺激策は避けるべきだし、感染防止にとって過度な経済の縮小を止めるべきとの考え方を明らかにしている。そのうえで、具体的な提言として感染拡大の防止で4項目、経済的インパクトの軽減で3項目、長期的な産業構造変化の促進で1項目の合計8項目の提言を行っている。
①オンライン診療の普及②社会活動のデジタル化③検査体制の充実④旅館、ホテルの借り上げで軽症者用入院施設を確保⑤100兆円規模の株式買い上げ(日銀)⑥選択的な現金給付とITによるリアルタイム所得の把握⑦低所得家計への緊急融資(18兆円規模)⑧廃業資金の融資など企業の新陳代謝を促す制度の拡充—-がそれである。
この中であえて取り上げたいのが、8番目の長期な視点での産業構造の変化を予測し、対応を促している提言だ。これは、新型コロナウイルス感染症が数年も続くようだと日本の産業構造は大きく変化せざるを得ないとの判断によるものだ。
すでに不要不急の外出自粛などが求められる中で、苦境に立つ業種の一方で、インターネットを活用する事業、業種が活況を呈している。働き改革は、テレワークなどの急激な普及を促しつつあり、ショッピングはもとより、学校の授業など教育分野や各種会合、さらには医療もネットで済ませられる状況になってきている。観光、外食、レジャーなどもオンラインサービスなどが急進展するだろう。提言の中にもある、オンライン診療などは対面診療や通院は感染リスクを高めることから普及するだろうし、特にかかりつけ医では当たり前になってくるだろう。許認可申請など行政事務のオンライン化も進むだろう。
新型コロナ禍は、間違いなく生産性の向上という視点も含めてあらゆる分野で社会のデジタル化を急進展させる起爆剤になりそうな気がする。同時に、こうした社会的な価値観の変化に対応できない企業や業種は退陣を余儀なくされるというのも必然だろう。企業の新陳代謝は避けられないのだ。だからそのためにも、国は廃業資金や業種転換のための資金供与などカーテンコール融資の重要さを訴える小林教授でもある。
新型コロナの蔓延は、長期的には産業構造の転換を促す厳しさをも突き付けているということなのだろう。本当に怖い新型コロナウイルスというほかない。
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