日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」
落ち穂ひろい |  2019.12.26

ノーベル賞受賞、吉野彰氏の描くサステイナブル社会

今こそビッグビジネスの好機、挑戦を

「サステイナブル社会の実現に向けて今は絶好のビジネスチャンスにある。果敢に挑戦して欲しい」と若き研究者たちに発破をかけるのはリチウムイオン電池の開発で今年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェロー。学会からではなく、企業人からのノーベル賞は産業界の研究者・技術者に大きな励ましになっており事実、吉野さんの言葉の端はしにビッグビジネスとの言葉をはじめ企業人ならではの想いがほとばしる。

授賞式から12月15日に帰国してまもなく、吉野さんは日本記者クラブでの記者会見に応じたが、「2025年にはET(環境・エネルギー技術)革命によってサステイナブル社会の姿を目の当たりに出来るだろう」と語り、「リチウムイオン電池と人工知能(AI)などの新技術を組み合わせることで、環境問題を解決し、経済成長も、利便性も実現できる技術、製品が出来る」」と力説。例えばリチウムイオン電池の需要先としてモバイル端末を上回るほど急進展している電気自動車にしても単なる電気自動車ではなくAIで管理された無人自動運転のEVが、必要なときに必要なだけ利用できる交通体系による社会の実現を描いてみせる。IT革命がそうだったように「絶対不可能と見られていたことがイノベーションによって可能になる」が吉野さんの持論なのだろう。「研究に当たっても、川上だけでなく川下も視野に入れた、川下が利するという取り組みが大事だと思う」も企業人ならではだろう。

吉野さんの環境問題への思い入れは一際で、リチウムイオン電池もそうだが「環境分野こそビッグビジネスに溢れている」とし、「攻めの姿勢を貫けば日本が世界制覇できるかも」とまで。吉野さんは受賞後に現地を含め、小・中学校で話をしたが、子どもたちの感想が思いもよらなかったことだったと言う。お愛想で、「感動した」なんて言うかともとも思っていたが、そうではなく「ほっとしました。安心しました」だったのだという。吉野さんが訴えた環境を軸のサステイナブル社会の実現を聞いて安心したということなのだ。吉野さんはしみじみ言う。「地球環境の悪化は子どもたちに未来への心理的な不安感を与えている。大人である我々の責任は重い」。

吉野さんへのノーベル賞授与は、これまでのリチウムイオン電池の開発に対してだけでなく、「これからも環境問題解決、サステイナブル社会の実現に貢献するのだろうね。との釘も刺されたと思っている」と唇をかみしめる。そして「10年後、20年後にそれが実現できなかったらノーベル賞は剥奪されるかも」との言葉には、決して冗談ではなく、ノーベル受賞者としての重責を担うこれからの覚悟と決意をも充分にうかがわせるものだった。

吉野彰氏
盛況の記者会見