New   2026.4.7

入間市、環境省との官民連携 地元の「西川材」で建てる家

【注目!! PROJECT】ゼロカーボンシティ入間(高砂建設)

 

高砂建設(埼玉県蕨市:風間健代表取締役社長)が入間市、環境省との官民連携による「ゼロカーボンシティ入間」を入間市内に開発した。
地元埼玉の「西川材」を利用し、全棟ZEH+という環境配慮の次世代分譲住宅モデルを示している。

埼玉県南西部に位置する入間市。その中心部である西武池袋線入間市駅から徒歩7分の地に、環境省と入間市、高砂建設と西川広域森林組合が連携した分譲地「ゼロカーボンシティ入間」が現在つくられている。

「ゼロカーボンシティ入間」のイメージ図

プロポーザルで大手抑えて採択

入間市は2021年に「ゼロカーボンシティ共同宣言」を表明した。2050年までの二酸化炭素の排出実質ゼロを目指し、環境配慮のまちづくりを進めている。その一環として、市営住宅跡の2576㎡の土地をゼロカーボンシティ普及モデルのまちづくりのために売却した。環境配慮型住宅の整備を前提とした事業計画を審査する公募型プロポ―ザルの結果、採択されたのが地元・埼玉県の高砂建設の提案だった。

提案内容は、建築条件付で土地を分譲し、土地面積130㎡前後の全15区画に地元埼玉の「西川材」を利用した全棟ZEH+の注文住宅を建てるもので、新座・朝霞店の市川俊彦店長は「このプロジェクトのために特別なことをしたわけではなく、私たちが30年以上前から当たり前に取り組んできた家づくりが、ようやく時代に追いついた結果として選ばれたのではないか」と話す。

高砂建設は、地場材である西川材と外断熱・二重通気を特徴とする「ソーラーサーキット工法」を組み合わせた独自の注文住宅を年100棟ほど手がけるほか、非住宅建築、リフォームなど幅広い建築事業を展開している。今回の「ゼロカーボンシティ入間」でも大きな特徴となっているのが、西川材による地産地消の家づくりだ。

西川材の構造材を用いた躯体のイメージ

自然乾燥による強固な構造材

西川材は、荒川支流の入間川、高麗川、越辺川流域に位置する林業地で、名前は江戸時代にこの地域の木材がいかだで「西の川」を通って江戸に運ばれたことに由来する。気候がスギやヒノキの生育に適しているとともに、人々が枝打ちや間伐など丁寧に手入れを重ねてきたことにより、木材の色、艶が良く、年輪が緻密で節の少ない良質な木材として知られている。同社は、近くの森から伐り出される強度の高い西川材を住宅に使うため、地元の林業者たちと協力しながら、供給体制を築いてきた。 

同社の注文住宅1棟に使う木材の6、7割が西川材で、主に構造材として用いている。年間約5000本の買取を安定保証することで、林業者との信頼関係を強固にしている。住宅に適した木を地域の林業者に伐採してもらい、製材と乾燥は飯能市の大河原木材に依頼している。

無垢の木材を構造材に使う場合、機械乾燥でなるべく早く含水率を下げるのが一般的だが、6ヶ月から1年かけて木の細胞を壊さぬように自然乾燥させ、25%以下まで含水率を下げ、1本1本強度試験にかけ、基準を満たしたものだけを構造材として使用する。こうした手間暇をかけ、木材の耐久性を高めている。丁寧に乾燥した材を、地元林業者の協同組合である「フォレスト西川」で各住宅の設計に合わせプレカットしてもらい、建築現場へ送っている。

森の循環モデルを提案

単に地元の木を使うだけでなく、山の整備や植林活動の支援も30年以上継続している。加えて、端材まで家具やグッズとして活用・販売するなどし、地元の山および林業を守る木のサイクルを実現している。年間約5000本使い、その3倍である約1万5000本の木を植樹しているという。近くの森の木で家を建て、輸送時のCO2も削減しながら、森の循環に貢献する、というまさにSDGsの木造住宅のモデルを示している。

市川店長は「1本1本の木をじっくり乾燥し、強度を測るという手間もコストもかかる作業は、年間約100棟という住宅供給規模だからこそできること。林業家の方々にも30年以上にわたり安定的な量の仕事をお願いしてきたため、安心して一緒に仕事していただけている」と、強固な供給体制の理由を説明する。

1戸あたり100万円の補助

「ゼロカーボンシティ入間」では、全棟ZEH+を標準とし、1戸あたり環境省からの補助金100万円が活用できる。高気密・高断熱住宅を実現するのが、同社が1992年から採用している「ソーラーサーキット」工法だ。家全体を高性能な断熱材で包み込む「外断熱」に加え、壁の中に空気の通り道を設ける「二重通気」を組み合わせた工法で、夏は床下のダンパーを開放して熱を逃がし、冬は閉鎖して暖かさを閉じ込める。「家全体を一つの大きな器として考え、廊下や部屋ごとの温度差を極限まで無くす。これにより、エアコン1台でも家中を快適に保つことができる」(市川店長)。こうした自然の力を活用することに加え、太陽光パネルとハイブリッド給湯器を標準装備、蓄電池はオプションで用意。快適かつ環境に優しい未来のエコ住宅を提案する。

こうした高断熱住宅では、湿気によるシロアリ被害が課題となる。通常は薬剤などで防蟻するが、同社ではヒノキの天然の防虫成分を活かしつつ、シロアリが通り抜ける事が出来ない細かな網目状のステンレスメッシュを、基礎などの侵入ポイントに取付ける手法を採用している。「長く住み続ける家において、5年おきに強い薬を撒き直すのは健康的ではない。物理的なバリアと木の力で守るのが私たちのやり方」(市川店長)。過去に供給してきた住宅でもシロアリ被害はほとんどないという。

レジリエンス性にもこだわった。建物は独自の「耐震剛床システム」を採用した強固な構造で耐震等級3をクリア。太陽光や蓄電池で有事にも最低限の電力を自給できるほか、災害時の生活用水に使える雨水貯留タンクも備えた。

主なターゲットは子育て世帯であり、まち全体でこどもたちが安全に暮らせる工夫も凝らした。住宅を道路境界から50㎝セットバックさせて歩道をつくる「サイドウォーク協定」で歩行者の安全を確保。「街の灯り協定」で夜間の灯りを共有し、まちの景観と防犯対策にもつなげている。分譲地内には西川材のベンチを設置した公園も整備。分譲地の公園と道路は入間市へ寄贈し、将来にわたって市が適切に管理・清掃を行っていく体制も整えた。

敷地内に整備した公園。ベンチには西川材が存分に使われている

敷地内に建つモデルハウスは3LDK、ウォークインクローゼット、シューズインクローゼット、ロフト、小屋裏という間取りで、延床面積は100.84㎡。家の中は天然木の香りに包まれ、1階は使いやすさを考慮した2列型のキッチン、その先には吹き抜けの広々としたリビングが広がり、一部には西川材の檜の化粧柱を採用している。夫婦と子ども2人を想定したプランで、2階には大容量のクローゼットと3部屋、3階には多用途に使える小屋裏スペースと、ライフスタイルに合わせて様々な使い方ができるつくりになっている。

価値の下がらない家

3月現在、15戸中7戸が契約済みで、大半は30代の一次取得者だという。価格は土地と建物合わせて4600万円台からで、周辺の建売住宅と比較してやや割高である。しかし、駅から近いという立地条件に加え、高性能で価値の下がらない資産性の高さが評価されているという。市川店長は「本物の木と正しい工法で建てた家は、適切にメンテナンスをすれば100年持つ。価値が下がらない家をつくることが、お客様にとっても地球環境にとっても最大の貢献になる」と、取り組みの価値を語った。

行政が土地を用意し、国が補助金で後押しし、地域の工務店が地産の素材と技術で応える。「ゼロカーボンシティ入間」の取り組みは、持続可能な住宅地の一つのモデルといえる。

モデルハウスの吹き抜けリビング部分。階段に面した化粧柱には西川材の檜を採用した

モデルハウスのキッチン部分。使いやすい動線を考慮し、奥には作業スペースも備えた 左下:モデルハウスの外観

モデルハウスの外観


35年かけて築いてきた「西川材」とのタッグ
代表取締役社長 風間健 氏


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