あらためて問われる 住宅を工場で作る意義と可能性
現地レポート 米国コロラド州「オフサイト建築」と「アフォーダブル住宅」の最前線【前編】
日本の住宅業界が直面している「人手不足」と「資材高騰」という二重苦。
しかし、日本以上に深刻な現実に直面しているのが、現在の米国だ。
ハウジング・トリビューンは、立教大学社会デザイン研究所と(一社)日本オフサイト建築協会が実施したコロラド州ボルダーでの現地調査に同行した。
今号と次号の2回に分けて、米国で進む住宅のアフォーダビリティの回復に向けたチャレンジなどをレポートしていく。
(取材協力:立教大学社会デザイン研究所 / (一社)日本オフサイト建築協会)
全米を覆う「住宅不足」と「価格高騰」

コロラド州の州都デンバー。その活気ある街並みの裏側で、数字は残酷な現実を突きつけている。COMMONSENSE INSTITUTEという調査機関の推計によれば、2024年時点でのデンバー都市圏だけでも、住宅不足は実に6万戸から13万戸に達するという。
この穴を埋めるには、2028年まで毎年最大5万5000戸の新規供給が必要だが、従来の建築手法では到底届かない目標だ。
こうした状況に追い打ちをかけるのが、住宅価格の高騰である。ボルダー市における2015年の平均住宅価格は約39万ドル(約6126万円)だったが、2025年には75万ドル(約1億1780万円)へと急増している。さらに住宅ローン金利も高止まりしており、低所得者だけでなく、中層の人々にとっても住宅を所有することは高嶺の花となっている。
全米で悪化する「アフォーダビリティ(住まいの手の届きやすさ)」の欠如。それは、中間層ですらホームレス化のリスクに晒されるという、社会構造の根幹を揺るがす危機となりつつあると言っても過言ではないだろう。
住宅不足克服へコロラド州が投じた「年間3億ドル」の資金

この危機に対し、コロラド州政府は大胆な公的介入に踏み切った。2022年11月に住民投票で可決された「Proposition 123(提案123号)」である。これは州の所得税収の0.1%、年間約3億ドル(約471億円)を「手頃な価格の住宅基金」に恒久的に割り当てるというものだ。
また、「Proposition 123」の枠組みで得た資金も利用する形で、「革新的住宅インセンティブ・プログラム(IHIP)」も推進している。
このプロジェクトは、アフォーダブル住宅の供給を増やすことに取り組んでいる革新的な住宅メーカーに対して、運転資金補助金やユニットごとのインセンティブ、またはオフサイト建築を実施するための工場開発ローンといった手厚い支援を行おうというもの。
つまり、住宅を「現場で作る」ことから「工場で作る(オフサイト建築)」へシフトさせる革新的な取り組みを行う企業に対し、運転資金や設備投資を支援するというわけだ。住宅を「不動産」としてではなく、「工業製品」として量産し、コストを抑えようという壮大な社会実験と表現できるのかもしれない。
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