社会的価値も含めて賃貸市場の可能性を高めていく
(一財)住宅改良開発公社 理事長 石塚 孝 氏
1955年の設立以来、良質な賃貸住宅の供給支援などを通じて日本の住環境向上に寄与してきた(一財)住宅改良開発公社。
時代の変化と共に、住まいに対する価値観やニーズが多様化する中、同公社は新たなフェーズを迎えようとしている。
新たに新理事長に就任した石塚孝氏に、公社が担うべき新たな役割、そして日本の賃貸市場が目指すべき未来について話を聞いた。

Profile
Takashi Ishiduka
東京大学法学部卒業後、1985年に建設省(現・国土交通省)入省。都市局、住宅局などを歴任し、2005年に国土交通省総合政策局不動産業課不動産投資市場整備室長に就任。その後、長崎県副知事、国土交通省大臣官房審議官(都市局担当)などを経て、2021年から(一社) 不動産流通経営協会(FRK) 専務理事に。2025年12月から現職。
── まずは、石塚理事長のこれまでの歩みについてお聞かせください。一貫して不動産畑を歩まれてきた印象です。
そうですね。私が社会に出たのは1985年、旧建設省(現・国土交通省)に入省しました。最初は都市計画の仕事に携わりましたが、その後すぐに不動産流通の分野に関わることになりました。
当時は不動産の流通市場が十分に整っていない時期でした。80年に宅地建物取引業法が改正され、2年後に「媒介契約制度」が施行されたばかり。ようやく不動産市場の近代化が始まった時代でした。
私が担当した頃は、ちょうど不動産流通標準情報システム「レインズ(REINS)」を導入しようという時期でした。パソコン通信も十分に普及していない時代で、「ファクシミリ・ネットワーク」を使って物件情報をやり取りしていたんです。
── その後、不動産の証券化にも深く関わられたと伺っています。
ちょうど2006年頃で、金融庁が金融商品取引法(金商法)への大改正を進めていた時期です。不動産取引においても、信託受益権化して流動性を高める動きが活発化していました。
当時、不動産証券化協会の方々と連携しながら、実物不動産を裏付けとする金融商品の販売ルールや情報開示、投資家保護の仕組みづくりに奔走しました。金融審議会での議論を経て、金商法への移行と宅建業法の対応を両輪で進めた経験は、今の私の市場観のベースになっています。
── 近年の住宅市場の変化をどのように感じておられますか。
前職である(一社)不動産流通経営協会での経験も含めて強く感じているのは、コロナ禍を経て、人々の「住まい」に対する関心が劇的に高まったという印象を持っています。在宅時間が増えたことで、持ち家か賃貸かに関わらず、「生活の質」をいかに確保するかというニーズが顕在化しました。その中で私が特に重要だと感じているのは、住宅市場全体を一つの「回転ドア」として捉える視点です。
──「回転ドア」とは。
住宅市場は、新築、中古流通、そして賃貸市場がそれぞれ独立しているのではなく、相互に補完し合う一連のサイクルだということです。ライフステージや価値観の変化に合わせて、ある時は「持ち家」を選び、ある時は「賃貸」を選ぶ。その選択がスムーズに行えることが健全な市場の姿です。しかし、これまでの日本は「持ち家中心」の政策や価値観が強く、賃貸はあくまで「仮の住まい」や「持ち家を持てない層の受け皿」という側面が強かったように思います。
これからは「賃貸」も「持家」とそん色ない選択肢になるべきだと考えています。家族構成の変化や仕事のスタイルに合わせて、身軽に住み替えられる賃貸のメリットが見直されています。
しかし、その受け皿となるような良質な賃貸住宅は不足しています。とくにファミリー向けの物件が市場には圧倒的に不足しています。「借りたいけれど、希望する質の物件がないから仕方なく買う」という消極的な選択ではなく、積極的な選択肢として機能する賃貸市場を作っていく必要があるのではないでしょうか。
公社が担う「3つの柱」と新たな挑戦
── そうした市場環境の中で、住宅改良開発公社はどのような役割を担っていくのでしょうか。
当公社の事業は、大きく「3つの柱」で構成されています。
第一の柱は、「住宅融資保証事業」です。土地オーナーが良質な賃貸住宅を建設する際、またマンション管理組合が共用部分のリフォームを行う際などに、(独)住宅金融支援機構などの融資に対して公的保証を提供しています。
特に昨今、マンションの老朽化が社会問題となる中で、令和7年10月から、マンション共用部分リフォーム融資への保証も開始しました。既存ストックの長寿命化や価値向上を金融面から支える、極めて重要な役割だと自負しています。
第二の柱は、住まい・まち研究所を中心とした「調査研究・プロジェクト事業」です。これからの賃貸経営や住まい方のモデルを模索し、発信していく取り組みです。住まい・まち研究所が、特に力を入れている活動が「あしたの賃貸プロジェクト」です。このプロジェクトでは、単なる利益追求だけでなく、地域コミュニティへの貢献や、入居者のウェルビーイングを実現している先進的な賃貸事例を調査・発信しています。シンポジウムの開催や「あしたの賃貸ライブラリー」を通じた知見の共有により、オーナーや事業者と共に、次世代の賃貸のあり方を考えるプラットフォームとしての役割を強化しています。
そして第三の柱が、「直接供給事業(賃貸経営)」です。
我々自身が事業者として、都市部を中心に良質な賃貸住宅を取得・運営しています。当公社で直接開発した物件は、「シュトラーレ(STRAHLE)」というブランド名で展開しており、市場に不足しているファミリー向け住戸や、地域に開かれた住まいづくりを実践しています。自らがプレイヤーとして市場に参加することで、現場の課題やニーズを肌で感じ、それを他の事業にもフィードバックできるという相乗効果を生んでいます。
ソーシャル・バリューの可視化へ
── 今後の展望として、特に力を入れたいテーマは何でしょうか。
最も注目しているのが「ソーシャル・バリュー(社会的価値)」の可視化です。
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