New   2025.12.24

「隙間なく施工」の強みで上位等級対応 現場発泡ウレタンで差別化戦略

BASF INOAC ポリウレタン 代表取締役社長 諸橋雅彦 氏

 

現場発泡ウレタンフォーム「フォームライトSLRシリーズ」を展開するBASF INOAC ポリウレタンは2025年11月、創業60周年を迎えた。諸橋雅彦社長は「フォームライトSLRの最大の強みである気密性の高さを生かし、工務店、ビルダーの差別化・特色への取り組みを支援していきたい」と話す。


ーー市場環境をどのように見ていますか。現場発泡断熱材への引き合いは増えているのでしょうか。

BASF INOAC ポリウレタン 代表取締役社長諸橋 雅彦 氏

住宅着工件数が右肩下がりで、少子化による人口減少もあり、一戸建て住宅市場の縮小は避けられない状況です。しかし、断熱基準の見直しや異常気象による冷暖房需要の高まりから、断熱材への注目度は上がっており、住宅数は減少しても断熱材のニーズは高まる可能性があるとみています。

当社は2025年11月1日が60周年の節目となりました。1990年代後半から戸建建築向けの現場発泡吹付ウレタンフォーム原料事業を展開し、今では現場発泡ウレタンフォーム市場でトップサプライヤーの地位を築いています。

現場発泡ウレタンフォームの最大の特徴は気密性の高さです。ウレタンフォームの原料は屋根材や壁材に接着しながら膨らむことができるので密着性が強く、隙間なく施工できる点が大きな利点です。また、吹付施工の柔軟性も強みとして挙げられ、現場の形状に合わせて自由に吹き付けられる点や断熱の施工を専門施工店に委託できる点、工場成型断熱材と異なり、厚み別の在庫を保管および運搬不要のメリットもあります。1990年代から施工店とのネットワークも構築してきました。北海道から沖縄まで全国において当社認定施工店による施工対応が可能です。

ーー脱炭素化の進展、省エネや健康といったニーズに高まりを受けて住宅の断熱性能向上が急速に進んでいます。

2025年4月からすべての建築物で省エネ基準、断熱等級4への適合が義務化され、等級5が主流になりつつあります。断熱等級5から6への移行はコスト面などでハードルが高く、まだ一般的ではありませんが、当社の製品は気密性の高さから、上位等級の家づくりにおいても、工務店・ビルダーの差別化を支援することができると考えています。

当社の主力製品は水発泡の「フォームライトSL-100」という基本タイプと、木造用に特化したHFO発泡剤を使用した「フォームライトSL-50α」のハイグレードタイプの2種類です。SL-100は柔らかいタイプで吹き付けの厚みをつけやすい。SL-50αはSL-100と比較して断熱性能を35%向上、厚みを薄く抑えることができます。また、透湿抵抗値が高いタイプでありながら、木材への追従性を持たせた製品であり、寒冷地を中心に、さらなる差別化商品としてSL-50αの採用引き合いが増えています。いずれの製品も季節ごとに原料処方を調整しており、現場品質を第一に原料を製造しています。

BASF INOAC ポリウレタンは、高気密・高断熱な現場発泡ウレタンフォームで包まれた住まいを「マシュマロ断熱の家」として訴求する

これら2種類を施工箇所で組み合わせたハイブリッド提案も行っています。壁と屋根でそれぞれ最適な断熱材を使い分け、家全体での断熱性能を高める提案をしています。特にSL-50αは木造戸建住宅向けに改良しているので屋根部分では厚みを増やしやすく、最近の傾向として、壁にはSL-100、屋根にSL-50αを使用するという組み合わせが増えており、ビルダーが差別化を図るために採用しています。壁施工の際には厚みに限界がある一方で、屋根部分では厚みを増やしやすく、上位等級の断熱性能を達成するために300㎜以上の厚みで施工するケースも増えてきています。

環境に配慮した製品開発
リサイクルの取り組みも

ーー今後の展開については。

単純な数量拡大よりも、高性能製品や環境に配慮した製品の開発、リサイクルを含めた循環型社会への貢献を重視しています。

植物由来原料を使用しバイオマークを取得した「FORMLITE Bio Meguru SL-50e」という新商品も発売しており、業界初の植物由来原料を使用した現場発泡吹付ウレタンフォーム断熱材として注目されています。

原料は海外からも調達していますが、製品化は全て日本国内で行うことに拘っており、製造開発拠点は愛知県新城市の本社工場となります。原料の安定供給のために代替材開発や貯蔵タンクの拡充などを行い、BCPの観点から複数の配合パターンを準備しています。

今後は、リサイクルへの取り組みも重要になります。施工時の廃材リサイクルに加え、解体時の廃材の回収では、ウレタンフォームの強みである接着性が構造躯体の分別を難しくするというジレンマがあり、これらの課題に取り組んでいます。

ーーグループ会社であるイノアックコーポレーションとの連携については。

イノアックコーポレーションの高性能断熱ボード「サーマックスⓇ」と組み合わせた「外壁付加断熱」の提案を行っており、特に寒冷地だけでなく全国的にニーズが広がっています。一般建築分野でも、サーマックスⓇと当社のフォームライトSLⓇによる現場発泡断熱材を組み合わせた取り組みが始まっています。

(聞き手:沖永篤郎)