New   2025.12.24

MUJI HOUSE、法人向け遊休資産の1棟リノベーション事業を強化 企業資産の有効活用と価値向上を支援

 

MUJI HOUSEが、法人所有のマンションや団地などの遊休資産をリノベーションにより再度価値付けする新事業「MUJI INFILL0 1棟リノベーション」を開始した。

これまで「MUJI INFILL0(ムジ インフィルゼロ)」のブランドで個人の住宅リノベーションに注力してきたMUJI HOUSEが、その範囲を法人の遊休資産に広げる。対象は、新耐震基準あるいは耐震基準適合証明が発行可能であるRC造、SRC造のマンションおよび団地。フルスケルトンにし、内部を確認した上で高性能断熱材やインナーサッシを施工。断熱等級5以上、一次エネルギー消費量等級6の温熱環境を実現するほか、可変性の高い間取りへの変更、共用部(共有スペース、外装、外構、サイン)のリノベーションも実施する。さらに、無印良品のブランド力を活かしたPRやこれまでの団地再生などで培ったコミュニティ形成企画などのソフト面での支援も行う。第一弾として、北陸電力(富山県富山市、松田光司代表取締役社長)が保有する社宅2棟を対象にリノベーションを実施し、賃貸住宅として再生する。

個人住宅や団地改修のノウハウ活かし企業の課題解決貢献へ

新事業開始の背景には、遊休資産の建て替えが困難になっている状況がある。ザイマックス総研が25年10月に発表した「企業不動産に関する実態調査」では、首都圏及び大阪市に本社を置く従業員300人以上の企業268社のうち約21%が、遊休不動産があると回答している。この遊休資産を建て替える場合、新築集合住宅の工事原価は、25年10月現在、10年前の2015年から約1・4倍上がっており、経済的負担が大きい。一方、資産をそのまま保有するとしても、維持管理コストや固定資産税がかかるという問題がある。

会見でプロジェクトについて説明した左から北陸電力 家鋪 誠事業開発部長、MUJI HOUSE リノベーション事業本部豊田 輝人本部長、MUJI HOUSE 田鎖 郁男専務取締役

こうした課題の解決に向けて、同社が培ってきたリノベーションの技術と経験、都市再生機構(UR)と協業して行ってきた団地のリノベーション設計や、団地内のコミュニティ形成などのノウハウを活かすため、新たな事業開始に至った。個人向けの住宅リノベーションは対応地域を1都3県、大阪周辺としているが、この1棟リノベーションは、全国で対応する。個人向けの対応地域以外は、施工を地域工務店に依頼する。リノベーション事業本部の豊田 輝人本部長は「私たちのURとの協業はある程度多くの方に認知していただいていると思う。様々な企業に声をかけていただけると期待している」と自信を口にした。

第一弾で協業する北陸電力は、富山、石川、福井の3県を中心に電気事業を行う企業。社宅の利用率の低下に伴い、約5年前から所有する社宅の活用を開始したと家鋪 誠事業開発部長は説明する。「働き方やライフスタイルの変化、北陸新幹線などの交通網発達により、社宅の利用率が徐々に低下し、一部を利用廃止にしている。廃止した社宅は、老朽化による安全面のリスクが生じるだけでなく、地域の景観、活気の損失にもつながってしまう」。

「アクアルーチェ犬島」のリノベーション後の外観イメージ
犬島のリノベーション後の住戸内部。ダイニングキッチンスペースを広く取り、あえて壁の一部をコンクリート現しにするなどモダンな雰囲気になっている

利用廃止した社宅を活用するため、これまで3棟を設備、建具交換などで改修し、賃貸物件として再生してきた。さらに2棟の改修を検討する中で、「単なる改修だけでなく、時代にふさわしい新しい価値を創造することが必要」(家鋪事業開発部長)と団地再生で実績のあるMUJI HOUSEに依頼し、協業に至った。

Before
犬島の既存プラン。キッチン、ダイニング、和室3室がそれぞれ区切られていた
After
犬島のノベーションA プラン。LDK とアイランドキッチンが特徴

今回手がける社宅の1件目は富山県富山市、富山駅から電車と徒歩で30分ほどに位置する「アクアルーチェ犬島」。築29年のRC造3階建て18戸で、各戸は83㎡。もともとは和室3室にダイニング、キッチンがついた間取りだったが、広いLDKとアイランドキッチンが特徴のAタイプ(1~2LDK)、家族共有のウォークインクローゼットを設けたBタイプ(2~3LDK)の2種類のプランへとリノベーションした。いずれも光がよく入る明るい空間を実現し、一部コンクリートを現しにするなど内装に遊び心も取り入れた。家賃は9万円台で、25年12月に入居募集開始、26年2月竣工、同3月の入居開始を予定する。

2件目は、石川県金沢市、金沢駅から徒歩15分に位置する「アクアルーチェ北安江」。築28年のRC造3階建て12戸で、各戸は76㎡。こちらも富山と同様、和室3室にダイニング、キッチンがついた間取りだったが、引戸により自由に空間を変えられるAタイプ(2LDK)、キッチンを中心にした暮らしを提案するBタイプ(2LDK)へと改修した。家賃は11万円台で、入居募集は26年2月、竣工は同4月、入居開始は同5月を予定する。

家鋪事業開発部長は「単なる住居としての機能だけでなく、地域社会とのつながりを生み出す重要な資産と考えている。もともと北陸に居住している方はもちろん、移住を考えている方にも入居を検討してほしい」と話す。