New   2025.12.3

DAIKEN 1000㎡の音響実験棟が完成

音環境ソリューション事業の新たな拠点に

 

DAIKENは岡山工場(岡山市南区)の敷地内に、建材業界初となる“音響専門の実験棟”「音環境ラボラトリー(音ラボ)」を開設した。快適な音環境を追求する施設として、これまでなかった音環境のソリューション提案を目指す。

DAIKENは、今年で創業80周年を迎えることを機に、9月に社名を大建工業からDAIKENへと変更、提案価値を「モノからコト」へ変え、グローバル展開を加速する方針を示している。その第一歩として取り組むのが、40年以上の歴史を持ち同社の強みとなっている「音」分野での快適性の追求だ。これまでに、住宅・非住宅向けに建築音響製品を開発してきたほか、防音室のコンサル業務では音専門の相談窓口「サウンドセンター」を設け、毎月、約1000件の相談に対応し、物件ごとの設計提案も行っている。

こうしたノウハウを生かし、より高度な音響ソリューションを提供するための拠点となるのが「音ラボ」だ。

岡山で始まった音響事業

無響室。
特殊な吸音材で音の反射を無くしている

岡山工場内に開設した「音ラボ」の外観

DAIKENは1958年に岡山工場でインシュレーションボードの生産を開始、繊維板の吸音性能に着目し、住宅向け天井材の「吸音板レギュラー」を開発した。こうした吸音製品の発売をきっかけに音に関する相談が増えたことを受け、82年に「開発部 防音課」を新設。これが同社の音響事業の源流となる。

一方で、同社は音響業界の実情として「音環境の重要性が市場に浸透しておらず、音に起因する困りごとが諦めになっている」(億田正則 社長)ことを課題にあげる。こうした現状に対し、音環境は変えられるということ、また、それが日常生活のストレス軽減、トラブル回避、作業の効率化につながることを浸透させていきたい考えだ。

この一環として、今後注力していくのが「音環境ソリューション事業」だ。製品単体の提案ではなく、新築の設計段階のシミュレーションや改修時の測定などを通して、音の困りごとを解決する「コト」提案を行う。

例えば、現在オフィス市場向けに行っているのが「音マップpro」によるサポートだ。新築オフィスの設計段階に、図面の寸法・仕様を入力すると、施工後の音環境を図面上に可視化・可聴化。会議室の話し声がオフィスのどの位置まで、どの程度のボリュームで届くかなどをシミュレーションし、事前に音環境の改善策を講じることが可能だ。今後は、オフィスの音環境が集中力や会議進行に与える影響についてのエビデンス提供も目指す。

テープカットの様子。億田社長(左から4人目)のほか、岡山市・大森市長(左から3人目)などが登壇した。

残響室。
コンクリート仕上げで音がよく響く

24年度の音響事業売上は約200億円(音響製品・マンション直床・吸音天井材の合計)だが、音環境ソリューション事業などを展開することで、35年度には400億円を目標としている。現在は戸建住宅が中心だが、今後は非住宅や木造集合住宅を主なターゲットとする方針だ。また、「音」から派生し、「光」「空気」「温熱」といった五感の快適性へと事業を広げる構想も掲げる。

あらゆる音を実験・評価できる実験棟

「音ラボ」は、こうした音環境ソリューション事業における礎となる施設。「無響室」、「残響室」、「箱型実験室」、「木造実験室」などを備えた敷地面積1170㎡、延床面積926㎡の巨大な実験棟だ。


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