New   2025.10.14

nat、町田ひろ子アカデミーを継承

デジタルツールの進化など様々なシナジー効果を期待

 

3D領域やアプリ・システム開発のnatが町田ひろ子アカデミーの事業を継承した。
次世代の「住」空間サービスの創出を目指す。

現実空間を高精度にデジタル化するiOSアプリ「Scanat」を展開するnat(東京都中央区、劉栄駿代表取締役)が、インテリアコーディネーターの育成などを手掛ける町田ひろ子アカデミー(東京都港区、町田ひろ子代表取締役)の事業を吸収分割により承継した。

町田ひろ子アカデミーは、1978年に設立されたインテリアコーディネーターとガーデンプランナーを育成する専門スクール。日本で初めて「インテリアコーディネーター」という職業と「モデルハウス」という概念を提唱し、これまで1万4000人を超える卒業生を輩出している。また、一級建築士事務所として「青山スタイル」のブランドを保有、インテリアリノベーションを通じて新しいライフスタイルを提案してきた。

町田ひろ子アカデミーは、コロナ禍以降通学中心の生徒募集が厳しくなるとともに、事業環境の変化などもあり事業承継を考えていた。一方、natは「Scanat」の機能をプランニングや設計などへと拡張していきたいと考えていたが、ノウハウを持たないため建築事務所などとの連携やM&Aを検討していた。

譲渡日は8月29日。町田ひろ子代表取締役はnatの上級顧問 兼 町田ひろ子アカデミー校長に就任、町田瑞穂ドロテア氏は執行役員CDO(Chief Design Officer)として参画する。町田ひろ子アカデミーのブランドや教育方針、「青山スタイル」のブランドは維持し、引き続きサービスを提供していく。

nat が町田ひろ子アカデミーの事業を継承した(右:劉栄駿代表取締役、左:町田ひろ子上級顧問)

natが2022年にリリースした「Scanat」は、現実空間を高度にデジタル化する空間スキャニングアプリケーション。LiDARセンサーとカメラを使用し、ビデオ撮影した空間を3Dモデルとして出力できる。世界初のミリ単位で計測が可能で、住宅・不動産や建設業界などでは現地調査や間取り作成、概算見積もり、面積算出などに活用され、これまで累計700社超えが導入している。

natはこの「Scanat」を次世代の「住空間アプリ」へと進化させていきたい考え。「Scanat」は、劉社長が家具を購入しようとした時に寸法確認で苦労したことが開発の発端。簡単に配置場所の寸法が分かり、その寸法から家具を選べないかと考えた。そもそもがスマートフォンだけでいかにインテリアを含めた住空間全体を簡単に再現できるかを目指したアプリケーションである。

「より良い製品を出していくため、自社内にリソースを持つことが重要」(劉社長)と、町田ひろ子アカデミーが持つ高度な設計ノウハウなどをScanatの設計機能に注入していく。

このほかにもさまざまなシナジー効果が期待される。例えば、町田ひろ子アカデミーは以前から「美防災」の普及に取り組み、「防災」と「インテリア」を結び付けた提案を行ってきた。「美防災をScanatに取り込むことでさらに提案に広がりが出る」(町田上級顧問)とデジタルツールとの組み合わせに期待を寄せる。

また、住宅・建築業界におけるDX加速の効果も期待できる。DXは広がってはいるものの、まだ従前の紙ベースのやり取りが根強く残っており、デジタルツールが便利とわかっていても使いこなせず、業務への落とし込みが難しいという状況にある。こうしたなか「教育の現場でデジタルに対応する人材育成を行えば、業界を変えることができるのではないか」(劉社長)と考えている。

デジタルとインテリアや設計、デジタルと教育との融合は、さまざまなシナジー効果を生みそうだ。