New   2025.8.5

「稼げる」と「持続可能性」を両立する林業とは 幸福度世界一の国、その緻密さと次世代への視点

フィンランド 森と暮らし紀行【前編】

 

今、日本では伐採期を迎えた森林資源を有効活用しようという機運が高まっている。しかし、その実態はかならずしも「好循環」とは言えない状況にある。サスティナブルとは言えない方法で森林資源が利用されている実態さえある。再生可能であるという森林資源の特徴を損なうことなく、木を使い切る仕組みや技術をどう構築していけばいいのだろうか。その答えをフィンランドに求めた。

長い冬が明けた5月のヘルシンキ。人々の笑顔と新緑、そして夜11時頃まで降り注ぐ陽光で街中が瑞々しさを放っていた。14時間以上前に日本を発った記者には少し肌寒さを感じる陽気ではあったが、短い夏を持ち望んでいたかのように、街なかのアイスクリーム屋には行列ができる。それだけ、人々が夏の訪れを待ち望んでいたのだろう。

森と湖の国。世界一幸福な国。フィンランドを形容する言葉を列挙していくと、ゆったりとした時間が流れる成熟した国というイメージが膨らむ。その一方で、福祉や教育という面でも学ぶべき点は多い。しかし、少し視点を変えると、フィンランドという国の違った顔が見えてくる。

目前の危機にどう備えるのか
住宅などには核シェルター

2023年4月、フィンランドはNATO(北大西洋条約機構)の31番目の加盟国となった。ロシアのウクライナ侵攻を受けてのことである。

フィンランドの人口は約560万人。日本で言えば兵庫県と同程度の人口規模である。国土面積は33.8万㎢。日本の国土面積が約37.8万㎢であり、日本よりやや小さい国土に、兵庫県と同程度の人が居住する。

フィンランドの建国は1917年。国としては〝若い国〟であるが、その歴史は長い。スウェーデン統治時代、ロシア統治時代を経て独立するが、第二次世界大戦では冬戦争(1939~40年)、継続戦争(41~44年)と2回ソ連と戦い、継続戦争ではドイツ側についたため敗戦国となる。戦後は中立国として生きる道を選択し、対ソ連を意識し、独立を維持するための最良の策として「中立=フィンランド化」という道を選んだ。手足を奪われたとしても、体だけは死守するという強い覚悟があったということだろう。

独立後は徹底したリスクマネジメントによって、あらゆる備えを講じてきた。岡田隆 駐フィンランド大使は、こう指摘する。「リスクと隣り合わせの状況にあるからこそ、フィンランドは未来の不確定要素に対して、我々が想像する以上の備えを行っています」。

岡田隆
駐フィンランド大使

フィンランドは未来の不確定要素に対して、
我々が想像する以上の備えを行っています

政府はナショナル・リスク・アセスメントを策定・公表しており、武力紛争から自然災害、原発事故まで、あらゆるリスクを国民に見える化している。想定されるリスクに対する緻密な対応計画も策定されており、どのような事態が発生しても最低限の社会生活を営むことができることを目指しているのだ。

その意識は関連する行政機関や地方自治体とも共有されており、国家緊急供給庁では民間企業とも連携を図りながら、緊急時に必要となる物資などの備蓄を進めている。その中には、食糧などだけでなく、緊急車両用のタイヤなども含まれているという。

フィンランドのリスクへの備えを象徴するものが核シェルターだろう。床面積1200㎡以上の建物には避難用シェルターの設置が義務付けられている。一般的な住宅にシェルターが設置されることも珍しくない。

ヘルシンキの中心部にあるメリハカ市民防衛シェルターは、普段は駐車場やスポーツ施設として利用されているが、有事の際には周辺住民の避難場所となる。

このシェルターの特筆すべき点は、簡易ベッドやトイレなどは備えているが、食料品などは備蓄していないこと。フィンランド政府は、普段から食料品などを備蓄するよう国民に促しており、このシェルターに逃げ込む際には、72時間分の食料を市民自ら持ち込むことになっているのだ。有事の際の運営に関する計画も明確になっており、市民も含めて運営していくことになっている。

国だけでなく、民間企業、そして市民がリスクを共有しながら、誰もが当事者としての意識を持っているということだろう。

左:一般的な住宅に設置されたシェルター。
右:ヘルシンキの中央部にあるメリハカ市民防衛シェルター。普段は駐車場やスポーツ施設として利用されている。 

国防と福祉は表裏一体
リスクへの備えがあるからこその幸福度

果たして、日本はこれほどのリスクマネジメントを行えているのだろうか。武力紛争とまでは言わないにしても、例えば来たる巨大地震への備えはどうだろう。政府の南海トラフ地震の被害想定によると、建設型の仮設住宅が約84万4000戸必要になるという。果たして、これだけの仮設住宅を短期間に供給するための計画や資材の備蓄などは行われているのか―。

岡田大使への取材で印象深かった話がある。「幸福度が世界一であるということが、フィンランドという国の特徴としてクローズアップされます。もちろん社会福祉が充実している点も関係しているのでしょうが、様々なリスクに対する備えがあるため、安心して、日常を大事にして生活することができ、それが幸福度の醸成につながっているのではないでしょうか」。

フィンランドの軍関係者が執筆した論文の中で、国防の基本は国民が国を守るという意識を持つことであり、そのためには福祉国家を目指す必要があるという趣旨のことが書かれていたという。また、フィンランドでは、第二次世界大戦時の武器が国のあちこちで今も発見されるが、これらは戦後、ソ連による侵略に備えて当時の人々が隠したものと言われている。

リスクに備える緻密な計画性、そして将来世代への配慮―。この思想はフィンランドの森づくりにも見てとれる。

国土の7割を占める森林
マーケットイン型の林業とは

フィンランドでは、2035年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げている。その目標を実現するために、35年までにバイオエコノミーの付加価値を倍増しようとしている。

バイオエコノミーの推進に向けて、大きな役割を果たすのが森林資源である。伝統的なパルプ・製紙産業からバイオ製品、バイオマテリアルへの転換、さらには林業のデジタル化などによって木材の価値を最大化するための取り組みを進めている。

フィンランドの森林面積は2280万haであり、国土の7割を占める。森林の5割以上を個人が所有しており、森林所有者は60万人を超える。一方で3割以上は国有林であり、Metsähallitus(メッツァ・ハッリトゥス)という国有企業が管理などを行っている。

森林所有者は、それぞれの地域の森林組合に加盟している。かつては森林組合に加盟することが義務付けられていたが、2015年の法改正で任意での加盟に変更になった。 

各地の森林組合では、所有者と森林管理を行う事業者をマッチングしたり、補助金などの情報を提供している。義務化ではなくなった今でも、ほとんどの所有者が森林組合に加盟している。

森林の管理や伐採、販売、出荷などの業務については、Stora Enso(ストラエンソ)、Metsä Group(メッツアグループ)、UPM‐Kymmene(UPMキュンメネ)といった世界有数の林業関連企業が所有者から依頼を受けて行っている。

こうした企業は、直近の市況データや木の育成状況といった様々な情報を考慮しながら、所有者に対して最適な伐採時期と販売先を提案する。
日本のように行き先も決まっていない木材を闇雲に伐採することはない。販売先が確保され、しかも取引価格もある程度決定した状態で伐採していくのだ。この仕組みがあるからこそ、より多くの利益を所有者に還元できる。

林業をマーケットイン型へ移行していくことは難しいという声を聞く。しかし、フィンランドの状況を聞く限り、必ずしも無理ではないと言えそうだ。

精細な森林情報を集約
情報で稼げる仕組みを構築

マーケットイン型の林業を実現するためには、需要と供給に関する情報が集約されていることが大前提になる。

需要側の情報を集約することは日本でもできるかもしれないが、供給側の情報を集約していくことは難しい。所有境界さえも曖昧な状況下で、立木の状態でストック量を把握することが求められるからだ。

それぞれの山林にどのくらいのサイズの木が、どのくらいはえているのか―。その情報を集約しない限り、フィンランドのようなマーケットイン型の林業を実践することは困難だろう。

フィンランドには、農林省傘下のMetsäkeskus(森林センター)という機関があり、森林管理を行う上で重要な役割を担っている。森林センターは、森林法の遵守を監督しているほか、森林情報の取集と提供を行っている。世界トップクラスの精度で森林に関する詳細なデータを収集・蓄積しており、リモートセンシングや衛星画像を活用しながら、地域ごとに情報を定期的に収集し、蓄積したデータを毎年更新しているというから驚きだ。この緻密なデータこそが森林資源を有効活用し、林業を「稼げる産業」として成立させる上でのインフラになっている。

本社をフィンランドに置くアルボナウトという会社がある。創業は1994年。約60名のスタッフの出身国はおおよそ15カ国にも及ぶという。同社スタッフの一人である清水嘉人さんによると、アルボナウトでは、森林業界に特化し、データ解析からソフトウェア作成まで一貫して行っているという。

具体的には、3次元データや航空画像、衛星データといったデータソースを解析し、森林資源量を把握するといった業務を行っている。

「例えば2024年はフィンランド森林センターの発注を受けて300万haの森林の解析を行いました」(清水さん)。先述したようにフィンランドでは毎年、国土情報を更新していくため、こうした業務を受注する企業が必要になるというわけだ。

解析したデータについては、基本的には誰でもアクセスすることができ、フィンランドが誇る緻密に計画された森林マネジメントへとつながっていく。

アルボナウトでは、日本での事業も進めており、日本向けのソフトウェアの開発や、カーボンクレジットのために森林資源量を測定するといった業務を手掛けようとしている。

日本での事業展開には難しさもある。フィンランドの場合、植林されている樹種の種類が少ない。基本的には、ヨーロッパアカマツ、スプルース、シラカバという3種類に限られている。木が生えている場所も日本のように急峻な斜面ではない。

日本では樹種の種類が多く、スギが植林された山林では、密集した状態になっており、簡単には森林資源量を解析できないといった課題がある。
アルボナウトでは、こうした課題をクリアしながら、日本でも高精度に森林資源量を解析する手法を確立していこうとしている。これが実現すれば、フィンランドのようなマーケットイン型の林業を実現していく下地が整うことになるだけに、同社の日本での事業活動に期待が集まりそうだ。

「日本の林業をめぐる課題として、どこに、どのような木が、どの程度存在しているかを誰も高精度に把握していないという点があります。日本特有の課題もあり、フィンランドのやり方をそのまま活用することは難しいでしょうが、森林資源をより有効に活用するのであれば、まずは高精度のデータを整備していくことが重要ではないでしょうか。基本的な解析技術については、フィンランドのものを応用できそうだという手応えも感じています」(清水さん)。

森林資源をより有効に活用するのであれば、まずは高精度のデータを整備していくことが重要ではないでしょうか

アルボナウトの
清水嘉人さん

苦戦続く木材製品市場
丸太価格の高騰が顕著に

高度化が進むフィンランドの林業だが、製材品市場などは厳しい状況を強いられているようだ。

2021年のデータでは、フィンランドで加工・使用されている木材製品は約440万㎥となっており、そのうち48%が輸出にまわっている。

国内需要については、2007年に新築建築物に使用された木材量が約120万㎥であったのに対して、2021年には約78万4000㎥にまで減少している。リノベーション分野での使用量は増加傾向にあるが、木材使用量は80万㎥弱で推移しているそうだ。

その大きな要因が戸建住宅の着工戸数の減少。2006年に1万6000戸であった年間の着工戸数が2021年には約7000戸にまで減少し、現在でも回復していない状況だ。

一方、メッツアグループの中核をなすメッツアフォレストのユルヨ・ペララさんによると、フィンランドの木材市場は、かつて経験したことがないほどの丸太価格の高騰に直面しているという。かつてはスプルースの丸太が㎥当たり60~65ユーロで取引きされていたが、今では約90ユーロにまで上昇している。

その大きな要因がロシアによるウクライナ侵攻。フィンランドではウクライナ侵攻以降、ロシアからの丸太や木材製品などの輸入を一切禁止した。製紙業などではロシア産の材料を輸入していた企業も多く、輸入禁止に伴いフィンランド産の丸太の需要が高まり、価格上昇を招いている。
フィンランドの製材産業協会のティノ・アールトさんも、「製材業界の現状については、非常に厳しい状況にある」と見ている。やはり、その理由のひとつは原木価格の高騰。加えて、先述したようにフィンランド国内の建設需要も低迷している。

さらに、他の欧州諸国の景気も決して良好とは言えず、輸出の面でも厳しい状況を強いられている。しかし、「トンネルの出口が見えてきた」という見方も強まっており、トランプ関税の影響など不透明な部分はあるものの、欧州の経済状況が上向きになってきており、今後、製材需要も高まるのではないかという声もあるようだ。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響でフィンランド産の丸太の価格は上昇している。

ティノ・アールトさんはフィンランドの製材品について、「品質に優れ、これまでも世界70カ国以上に輸出してきた実績があります。納期などのリクエストにも柔軟に対応でき、この点は我々の強みです」と胸を張る。

建築物の木造化・木質化とオフサイト建築に期待

国内の木材需要が低迷している状況に対してフィンランド木材製品産業連盟のマッティ・ミッコラさんは、集合住宅や非住宅分野の木造化・木質化の広がりに期待しているという。

ヨーロッパ諸国の建築物の木造化率を見ていくと、ノルウェーが50%で高く、フィンランドは39%となっている。森林大国の数値としては意外な感じもするが、現在、政府も含めて木造化を推し進めているところだ。

ヘルシンキ周辺でも木造化・木質化された建物を目にする。その代表格が2018年に開館したヘルシンキ中央図書館「Oodi(オーディ)」。フィンランド独立100周年を記念して「国から国民への贈り物」として建設され、2019年には国際図書館連盟主催の公共図書館アワードを受賞するなど、世界中で注目されている。従来の図書館のイメージを覆す、「市民の交流のためのリビングルーム」というコンセプトの建築物で、内外装には多くのフィンランド産木材が使用されている。

2018年に開館したヘルシンキ中央図書館「Oodi」。内外装には多くのフィンランド産の木材が使用されている。

印象的な波打つような曲線を表現した外観デザインには、スプルースが利用されており、有機的な印象を演出している。今回の取材で通訳を担当してもらったセルボ貴子さんによると、「オーディの3階にある市民バルコニーは、目の前にある国会議事堂と同じ目線に設定されています。これは、市民が政治をいつも監視しているということを表現したものです」という。国から国民への贈り物として建築した公共建築に、こうしたメッセージを込めるということに民主主義の成熟度を感じる。

話を木造化・木質化に戻すと、EUでは2028年までに1000㎡を超える新築建築物に対し、ライフサイクルGWP(地球温暖化計数)の算定と開示を義務付ける方針を打ち出している。これに先駆けてフィンランドでは2025年1月から建築物のライフサイクルGWP規制に踏み切った。

日本でも建築物のライフサイクル全般で排出されるCO2に対して、なんらかの規制を設ける方向で検討が進みだしたが、フィンランドやヨーロッパ諸国はその先を行く。

建築物のライフサイクルGWPを削減するためには、木造化・木質化が最適な選択肢となるだろう。一般的には鉄やコンクリートと比較すると、木の方が製造時、建設時、解体時などに発生する環境負荷は少ないからだ。

フィンランド木材製品産業連盟のマッティ・ミッコラさんは、木造化をさらに推進していく要素として、オフサイト建築も関係してくると指摘する。「建築業界はただでさえ他の産業と比較すると効率化への取り組みが遅れています。加えて、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻以降、建設業を担っていた海外労働者が減少しています。建設業従事者の3割を海外の労働者が担っていただけに大きな問題です。今後、ウクライナの復興需要などが発生すれば、さらに海外の労働者を確保することが難しくなるでしょう。木材は加工しやすく、なおかつ軽い素材です。オフサイト建築には適した素材なのです」(マッティ・ミッコラ氏)。

フィンランド
木材製品産業連盟の
マッティ・ミッコラさん

木材は加工しやすく、なおかつ軽い素材であり、
オフサイト建築には適した素材なのです

現在、フィンランドには約70社のオフサイト建築のための木質系エレメントを製造する会社があるという。製造しているエレメントは、断熱材が一体化した屋根や壁用のパネル、外装などが一体化したものなどで、こうしたエレメントを活用することで、1日で1000㎡の施工を終えてしまう場合もあるそうだ。

同じくフィンランド木材製品産業連盟のサウリ・ユリネンさんは、「現状では建築行為のうち、工場などでのオフサイトでの作業が30%、建築現場での作業が60%程度を占めているが、これをオフサイト70%、現場25%という形に変えていくことができれば、生産性は格段に向上するでしょう。ただし、そのためには設計まで含めてオフサイト化を前提としたやり方を構築する必要があります」と指摘する。

非住宅分野や集合住宅などの木造化の推進、そして人手不足の解消と生産性の向上。フィンランドの建築業界が抱える課題は、日本の建築業界の課題とも符合する。

木造化によって建築物のライフサイクルGWPを削減し、軽く加工しやすいという木材の特徴を生かしてオフサイト化していく。この考え方は工業化住宅先進国の日本こそ、具現化しやすいのではないだろうか。

住宅以外の用途でも木質化・木造化が進んでいる。

年に1度のハウジングフェアで住宅需要を喚起

前述したように厳しい状況が強いられているフィンランドの戸建住宅市場だが、Pientaloteollisuus(PTT)という戸建住宅のサプライヤーで構成する団体のキンモ・ラウティアイネンさんは、「確かに厳しい状況ですが、フィンランド国民の49%は集合住宅ではなく、戸建住宅を希望しているというデータもあります」と話す。

フィンランド国民の49%は集合住宅ではなく、
戸建住宅を希望しています

Pientaloteollisuusのキンモ・ラウティアイネンさん

その一方で人口の多くが大都市圏に集中することで、戸建住宅ではなく、集合住宅による土地の高度利用が求められていることも事実だという。
キンモ・ラウティアイネンさんによると、フィンランドの戸建住宅の平均的な建物価格は、延床面積140㎡の住宅で40万2175ユーロ。日本円で約6600万円。土地の値段は、ヘルシンキ周辺では600~800㎡で10万~30万ユーロくらいだという。郊外に行くと、2万ユーロくらいまで安くなる。また、フィンランドでは土地は自治体などから借りる場合も多い。

戸建住宅市場の現状についても、市場規模の違いはあるものの、日本とフィンランドは共通する部分が多そうだ。

ちなみにフィンランドでは、毎年、夏になるとハウジングフェア(Asuntomessut)が開催される。1970年から開催されているもので、毎年異なる都市で実際に戸建住宅や集合住宅などを建築し、道路なども含めたインフラまで開発し、一般公開する。建築した住宅は実際に購入できる。毎年7万5000人もの来場者があり、驚くことに入場は有料だという。

フィンランド人の住宅、さらには住生活に対する関心度の高さを垣間見ることができるイベントだ。

キンモ・ラウティアイネンさんによると、オフサイト化、プレハブ化された住宅の注目度も高まっているという。プレハブ建築の歴史自体はフィンランドでもかなり前からあるそうだが、この30年間の技術進歩などによって、プレハブ住宅を選択する消費者が増えてきているという。

住宅事業者側にとっても、冬場でも作業を進めることができ、工期短縮や生産性の向上につながるためメリットは大きい。プレハブ住宅を供給する代表的な企業としては、Kastelli(カステッリ)、DEN Finland(デン・フィンランド)などがある。

木造のプレハブ住宅の場合、通常の建築方法よりもコストメリットを創出することも可能だ。間取りや天井高さの自由度も確保されているほか、断熱性能はもちろん、気密性能もQ値0.6といった性能を確保している住宅も少なくないという。

ハウジングフェア開催による需要喚起や、高性能な木造プレハブ住宅など、住宅分野においても、新築市場の縮小に悩む日本の住宅業界が注目すべき点がありそうだ。

【後編に続く】