New   2025.6.17

ヒノキヤグループ、断熱等級6 冬の電気代削減効果を3地点で検証

変化のあった4地域で新たに5・5等級仕様提供へ

 

ヒノキヤグループが、住宅の断熱性能の違いが冬期の消費電力量に与える影響を実験、検証した。
3、4、6の3地点で断熱5と6の違いを検証し、4以外の3、6では電気代に違いがないことが分かった。

ヒノキヤグループが、省エネ性能向上へ突き進む住宅業界に一石を投じる実験を行った。断熱6やそれ以上断熱性を高めた住宅が、本当に電気代の節約になるのか。コストに見合った性能なのかを確かめる内容だ。荒木伸介常務取締役兼マーケティングGMは「住宅価格の上昇に加え、省エネ性能向上が推奨されていることでさらに新築住宅の取得が難しい状況になっている。住宅性能の向上は必要だが、果たしてどこまで必要なのか。コストを踏まえたふえで、地域ごとの最適な断熱性能を見極めるべきなのではないか」と実験の目的を語った。

実験は、東京大学大学院工学系研究科 前真之准教授監修のもと、2024年12月から25年2月までの3か月間、省エネ地域区分が異なる3(長野県佐久市)、4(栃木家那須塩原市)、6(埼玉県八潮市)の3地点で断熱性能の実験を行った。各地点とも床面積約30坪の2階建ての同社「実大モデル」を使用し、断熱性能5、6の戸建2棟ずつ、合計6棟で行った。各階居室の室温が22℃となるよう全館空調「Z空調」を終日稼働させ、室内外の各観測地点で外気および各室の室温とエアコンの消費電力量を計測。地点毎の2棟の電力消費量から1か月の電気代を算出し、費用対効果を検証した。

ヒノキヤグループの桧家住宅実験棟の外観(栃木県那須塩原市)

実験の結果、消費電力および電気代に大きな差が生じたのは3地点のうち4地域・栃木県那須塩原市のみで、3ヶ月平均の差額は5153円となった。一方、3地域・長野県佐久市の差額は1527円、6地域・埼玉県八潮市の差額は961円と大きな差は見られなかった。

同グループで、断熱5から6に性能を上げる場合、オプション費用として、3地域では6万5000円、4地域では5万円、6地域では2万1000円かかる。実験の結果を受け、4地域では費用対効果を考慮すると、断熱6はオーバースペックであり、「充填断熱と断熱樹脂Low-E複層ガラスサッシの組み合わせで設定可能なUA値0.4程度、断熱等級にすると5と6の中間くらいが適切と考察する」と同グループはまとめた。今後、4地域では断熱5・5の提供を始める予定だ。3、6地域では断熱5で十分という結果が出たが、補助金などを考慮し、断熱6以上を求めるニーズもあるため、柔軟に対応していく。

(参考)1か月の電気代比較(3か月平均)

今回の実験結果について、実験を監修した前准教授もコメントを寄せている。「4地域においては等級5と等級6で暖房電力量や電気代の差が明確に表れており、断熱の省エネ効果が期待通りに出ていると考えられる。3地域と6地域において差が小さいのは、断熱材に用いられた現場発泡ウレタンにより2棟とも高気密で漏気量が少なく、本空調システムに組み込まれた熱交換換気により2棟とも換気熱損失が少なく抑えられた結果と推測される。断熱強化による暖房熱負荷の減少がエアコンの効率に影響して、消費電力量の削減効果を相殺した可能性もある。今後は、断熱等級6の真価が発揮できる空調システムの制御最適化の発展にも期待したい」。

同グループは、引き続き全国各地の住宅展示場や実験棟を使って建物の断熱・気密に関するさまざまな実証実験を行い、よりよい住宅提案を探っていく方針だ。