人が流動化する時代に資格取得の持つ意味がさらに重要に

株式会社 ユナイテッドマインドジャパン 宮沢光平 代表取締役

 

人手不足の深刻化が増すなか、人の流動化が始まっている。
企業はどのような人材を求め、求職者は新天地に何を求めているのか、また、資格取得の意味は人材採用にどのような意味を持つのか―。
住宅産業に特化した人材紹介サービスを展開するユナイテッドマインドジャパンの宮沢光平代表取締役に聞いた。

──住宅業界に特化した人材紹介の狙い、また、これまでの実績を教えてください。

株式会社 ユナイテッドマインドジャパン
宮沢光平 代表取締役

私は、もともと外国人人材の紹介を7年ほど前から行っています。外国人が日本社会への融合に重要となるのがビザ、そして住まいであることから、住宅産業に興味と課題感を持っていました。住宅産業にはまだまだ古い体質が残っており、人材紹介を通じて働き方、採用の仕方を変えていけるのではないかと考えていたのです。

コロナ禍が明けた頃、某住宅メーカーから「日本人を紹介できないか」と問合せが入るようになったことをきっかけに、3年前に住宅業界に特化し日本人を中心に紹介する事業にシフトしました。

現在、人材紹介を中心に、人材派遣やコンサルティングサービスなど住宅産業の企業をサポートする「住まキャリ」を展開しています。

クライアントは住宅、不動産、建設、リフォームなどの事業者で、3年間で200社以上と取引きをしてきました。ハウスメーカー、ビルダーと住宅事業者が最も多く、次いで売買・仲介・賃貸の不動産事業者、最近はリフォーム事業者も増えてきました。

こうした企業からの人材紹介の依頼を受ける一方で、求職者からの相談を受け付け、専門知識を持つキャリアアドバイザーが電話やオンラインで会話をするなかで「この会社はいかがですか」とお勧めしています。これまで1000人以上の実績を持っています。

──どのような職種の人材が多く求められていますか?

職種で言うと、営業が50%、施工管理が30%、設計が20%、そのほか不動産管理や積算、人事や広報などで10%ほどです。職人の引き合いはほとんどありません。仲間内で紹介し合う慣習があるとともに、企業側も足りなければ外注するという考えが強いのだと思います。

今、需要が高まっているのが施工管理です。以前から人材が不足していましたが、より深刻化しており人材の取り合いのような状況になっています。企業側が示す年収条件も上昇しており、施工管理経験3年の28歳の人材に年収800万円を提示する大手企業の例もあります。「売れるのだがつくる人がいない」という声をよく聞き、住宅事業者にとって一番大きな課題なのではないでしょうか。

一方、営業職は、いつの時代でも大きな需要があります。求職者側も、より稼ぐことができる会社へ、より働きやすい会社へという流れが昔からありますね。

──求人側が求職者に求めるスキルについて、何か変化はありますか。

営業については当たり前ですが「売れる人」が求められます。変化という点では、以前に比べて住宅業界内の人材にこだわらない傾向にあります。自動車、保険、場合によってはコンビニでも接客経験者であれば問わないということです。

異業種から転職する場合に、受け入れられやすいのは保険業界です。やはりファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得者はローンの紹介などのスキルを持っていますから。一級建築士や施工管理技士の資格を持つ技術畑から営業への転職も歓迎されます。また、不動産業界ほどではありませんが、宅建資格取得者はベースの知識があると評価が上がります。福祉住環境コーディネーター、民間のZEH資格などを含め、住宅業界に関連する資格の有無は、異業種から転職する際には一つの線引きになります。条件として資格は求めていませんが、資格取得者に加点がつくことは間違いありません。

逆に、求人側が一定の資格取得者を求める場合は、買取再販事業など不動産業務に係る部署が募集する時に宅建資格という指定が入ることがあります。また、ローン専門など営業とは言っても特化した部署の場合はFPを求めることもあります。ハウスメーカーは多角化していますから、担当部署を選ばない人材獲得はリスクヘッジにもなります。

一方、施工管理については、資格取得者を求めるのは3~4割程度ではないでしょうか。それだけ人が足りないということだと思います。ただ、強く求められるのは実務経験です。無経験でも可という募集は極端に少なくなります。

──一方、住宅業界で働きたいという求職者は何を求めているのでしょうか。

求職者はさまざまな業界から来ますが、営業についてはやはり「稼ぎたい」という要望が強い。住宅業界は単価が大きいビジネスであるとともに、1棟単価が3000万円だとすると年間12棟売って成功報酬の手取りがいくらと分かりやすい。保険商品はどれだけ売ればどれだけの収入になると表現しづらいですから、求職者にとって納得度が高いのだと思います。また、衣食住の一つで身近な仕事であることも大きいと思います。例えば、縁者に大工だった人がいる、間取りを見るのが趣味など何らかのつながりで住宅に興味を持っている人が多くいます。

一方、施工管理はさまざまですね。大規模なビルを手掛けていたが温かなイメージのある住宅をやりたい、大工をしていたが施工管理をやりたい、しかし、現在の職場では難しいので転職したいといった方です。また、待遇面ではステップアップしたいという方はもちろん、忙しすぎる環境から転職しワークライフバランスを取りたいという方も多くいます。企業側も手掛ける棟数を制限し働き方の健全化を図る動きも進んでいますね。

全体的には、求職者側の考え方が変わってきているように感じます。コロナ禍後、転職代行サービスが盛り上がるなか、勤めている企業を辞めることの決断が早くなっている気がします。企業が人を求めていることも分かっていますし、若い人が働きやすい環境が整ってきているということもあると思います。それだけ人が流れやすくなっている。また、大手ハウスメーカーが70歳までと求人サイトに出したりしますから、「自分もまだ働くチャンスがある」と、年齢が高い人の動きも出てきています。

──転職に際して資格取得はどのような意味を持つと考えていますか。

今、資格取得に対する手当の有無を気にする人が増えている気がします。せっかく転職するのであれば資格を取る時に補助が出る、資格を持っていることに対して手当てが出る、より有利な条件を提示する企業に転職したいというものです。

求人側にとって資格取得者は一つの担保になります。人材不足のなか何とか人を取ろうとした時、どうしても採用基準が甘くなることがある。その時、資格取得者の方が安心感があるのです。現実、資格取得者の方が選考を通る確率が高いし、より条件のよい企業に転職できる可能性が高まります。企業がそういう状況にあることを知っている転職者は資格取得に動くし、その分、有利な条件を求めるようになっているのです。

人材不足が深刻し、人が動きやすい時代を迎えるなか、自身の実力の証明になる資格取得はさらに重要度を増してくるのではないでしょうか。