イトーピアホーム、木造4階建てのモデルハウス開設　都市型住宅の設計・工事請負を強化

伊藤忠商事グループのイトーピアホームは、木造・1時間耐火構造の4階建てを実現したモデルハウスをオープンした。都市型住宅の設計・工事請負事業を強化していきたい考えだ。

イトーピアホームは、デベロッパーなどを中心として、分譲戸建住宅の企画から設計、工事請負までを展開しており、年間600棟ほどの住宅を供給している。伊藤忠グループの総合力を生かしながら、在来軸組工法、2×4工法、鉄骨造など幅広いニーズに対応している。

多層階化により狭小敷地でも十分な床面積確保

同社によると、マンションの価格高騰などに伴い、都市部の狭小地において、マンションより値ごろ感のある戸建住宅を供給したいというデベロッパーが増えてきているという。

こうしたニーズに対応するために、東京都杉並区に「街なかモデルハウス㏌荻窪」を開設した。いわゆる売却型の街なかモデルハウスで、JR中央線の荻窪駅から徒歩6分の好立地に、木造軸組工法の4階建て住宅を建築した。

同社の泉知己社長は、「まずはモデルハウスを建築し、コストや工期などを実証することで、デベロッパーの方々のニーズに対応することが重要であると考えた」と話す。

完成したモデルハウスは、建設地が近隣商業地域の防火地域であったこともあり、1時間の耐火構造となっている。

敷地面積は61.29㎡だが、多層化によって156.76㎡の延床面積を確保している。1階部分にはインナーガレージを設けており、狭小地でありながら駐車スペースも確保した。敷地形状が細長く間口が狭いため、充分かつバランスの良い壁配置が計画し難いことから、構造計算上有利な在来工法を採用した。

RC造よりもコストダウンを実現

1時間耐火構造とするために、外壁や階段は告示の仕様を採用し、屋根、床、間仕切り壁については（一社）日本木造住宅産業協会が取得した大臣認定を利用。

生産管理本部設計部の亀岡和広部長によると、「耐火構造の建物の場合、耐火被覆（石膏ボード）の使用量が格段に増加する。狭小地の施工現場では、石膏ボードや外壁材などの搬入保管場所や作業スペースの確保が難しいことから、少量ずつの搬入になるが、作業手順を工夫し効率を上げて施工を行った」という。

また、4階建てということもあり、3階建てではあまり求められない地盤のボーリング調査や、一般建築用の地盤補強などを行う必要もあったそうだ。さらに、高倍率の耐力壁になり高い応力がかかることから、基礎のボリュームが増加し、高強度のホールダウン金物が必要になった。

結果的に木造の3階建てと比較するとコストが増えるが、RC造の4階建てと比較すると、大幅にコストを削減することができる。建物の規模や形状、敷地条件などにもよるが、一般的なRC造の坪単価が180万～200万円だとすると、木造であれば、その6～7割くらいになるという。

加えて、RC造やS造の施工で必要な大型重機などを利用するケースが少ないため、接道などが狭い狭小地において木造のメリットがさらに際立つことになる。

都市部の賃貸住宅を視野に特建事業部を創設

モデルハウスに対するデベロッパーなどからの反響については、共同住宅としての可能性を指摘する声が多かったという。

現在、都市部の好立地の賃貸住宅の需要が高まりつつあり、今後の市場拡大に注目するデベロッパーも少なくない。木造であれば、初期コストを抑えることができるだけでなく、原価償却期間が短くなるというメリットがある。

こうしたニーズに対して同社では、既に東京都心部で2×4工法の4階建て共同住宅の建設を進めている。

また、2025年4月には特建事業部を新たに創設。共同住宅の設計・工事請負事業に注力していく方針だ。軽量鉄骨でも4階建てまで建築できる工法を用意しており、幅広い需要に対応する体制を整えている。

イトーピアホーム
泉 知己
代表取締役社長

モデルハウスがオープンして以来、多くのデベロッパーの方々に見てもらっています。これまで当社では、木造では3階建てまでしか手掛けていませんでした。4階建てまでできるようになり、提案の幅が大きく広がりました。戸建住宅だけでなく、共同住宅についても、より利回りを確保できる建物を提案していきたいと考えています。