2025.3.28

23区トップレベルで省エネ住宅を推進する葛飾区 セイズは地域密着で超高性能住宅を供給

省エネ住宅の最前線を探る

 

2025年4月から省エネ基準適合義務化が始まる。
制度改正前から先んじて省エネ住宅の普及に努めてきた葛飾区と、同エリアで高性能の省エネ住宅を供給し続けるセイズの取り組みを取材した。

2050年のカーボンニュートラル実現を目指す日本において、エネルギー消費量の約3割を占める建築分野における脱炭素の取り組みは急務である。いよいよ始まる4月からの省エネ基準適合義務化に先立ち、手厚い補助制度で省エネ住宅普及に努める葛飾区と、同区内で高性能住宅を供給するビルダー、セイズ社の取り組みについて取材した。

葛飾区は東京都東部に位置し、25年現在約45万人の人口を抱える。青木克徳区長が環境問題への意識が高いこともあり、20年2月に都内自治体として初めて温室効果ガス排出量ゼロを目指す「ゼロエミッションかつしか」を宣言し、様々な環境政策を進めてきた。中でも住宅政策においては、国や東京都の補助金に加え区独自の補助制度を設け、省エネおよび再エネ住宅の普及を進めている。

23年度から高い断熱性能を持つ新築住宅への助成を新設し、地元の金融機関である亀有信用金庫、東栄信用金庫と協働して、高断熱の新築にかかる住宅ローンの優遇金利を設定している。また、既存住宅の断熱改修にも補助を実施している。

再生可能エネルギーの普及促進も活発で、約8年前から都内の自治体で初めて、太陽光発電と蓄電池をセットにした補助金制度を開始した。両方導入すれば補助を上乗せする仕組みで、後に東京都でも取り入れられた。太陽光発電は06年度から24年9月までの累計で4232件、蓄電池は13年度から24年9月までの累計で2450件助成実績がある。

住宅だけでなく、学校などの公共施設においても新築ではZEB認証を取得することを基本方針とし、既存施設でも断熱改修で徐々にZEB化を進めている。断熱化した学校施設での児童アンケートの結果、遮音性が向上し、快適な温度で授業に集中しやすくなるなど様々なメリットが報告されており、今後も子どもたちの良好な学習環境の確保と省エネ意識の醸成を図る考えだ。

葛飾区はこうした取り組みを通じて、脱炭素実現に寄与することはもちろん、区の価値向上につなげる狙いがある。

宮地智弘環境部長は「葛飾区は地域のポテンシャルがあるにもかかわらず、不動産の価値に反映されていない。高い耐震性能と環境性能を持つ良質な住宅を普及させていくことは、住民の方々の生活の質を上げる意味で非常に重要であり、それが区の価値向上にもつながっていく」と説明する。

高性能住宅の拡大は同時にレジリエンスの面でも大きく働く。「大地震が起こった場合、日本は避難場所の質という面で非常に厳しく、葛飾区でも公共施設だけで45万人以上の避難生活を支えるのは難しい。全体のレジリエンスを考えた時に、太陽光、蓄電池を備えた家が一定数あることが大事になってくる」。災害時の在宅避難が可能になるなどメリットを住民にアピールしながら、太陽光と蓄電池のセット補助をさらに推進していく。

令和6年度「東京エコビルダーズアワード」表彰式での小池百合子都知事(左)とセイズの及川達也社長

2年連続で東京エコビルダーズアワード
リーディングカンパニー賞2部門を受賞


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