【どうする!?物流問題】住宅メーカーとの協業により新たな住宅物流を具現化していく
センコー マテリアル物流営業本部長・常務執行役員 河野 誠司 氏
深刻なドライバー不足に加えて、2024年4月から時間外労働の上限規制が導入されたことで、人手不足への対応が急務となっている物流業界。
住宅業界は物流に依存する部分が多い業種である。
個別散在する建設現場に、6万点もの資材を工程に合わせて納品することが求められ、この部分が滞ることがあれば住宅業界に多大な影響をもたらすだろう。
住宅業界の物流業務でトップクラスの実績を持つセンコーの河野誠司常務執行役員に、住宅物流が抱える課題や今後求められる対応策などを聞いた。
―住宅業界に向けて、どのような物流サービスを提供しているのでしょうか。
当社では多くの大手ハウスメーカーの物流部門を担っています。プレハブ住宅メーカーだけでなく、木造の住宅メーカー、中小の工務店の方々に向けた物流サービスも提供しています。さらには、多くの大手建材・設備メーカーとも取引があります。当社にとっても住宅業界向けの物流サービスは非常に重要な事業領域であり、業界ナンバーワンという自負を持っています。
当社の住宅物流の特徴のひとつが拠点数の多さです。国内に約200カ所の拠点がありますが、このうち50カ所ほどが住宅業界に特化した拠点になっています。
また、サプライヤーから住宅メーカーの工場、工場から各地の物流拠点、そして建設現場へと川上から川下までをワンストップで担えることができる点も当社の強みです。加えて、建設現場で発生した余剰資源などを住宅メーカーの工場へと持ち帰る循環物流にも対応しています。
内外装関連の建材・設備、プレカット材など、幅広い商材を取扱うことができる体制も構築しています。住宅分野の物流サービスでは、工程に応じてジャストインタイムで必要なものを届けることが求められます。当社では、各地の拠点で邸別に内装の山、外装の山といった具合に商材を仕分けしておき、工程に合わせて分納する体制を整えています。
単なる輸送業務だけでなく、当社の拠点で建材・設備などを在庫し、その情報を管理するというサービスを提供しています。
―そうなると、かなり複雑な情報管理と配送業務が求められそうですが。
大手のハウスメーカーの場合、先ほど言った邸別の山単位で情報を管理するようになっています。一般的な工務店様の場合、建材・設備メーカーの方からの納品日時などの情報をもらい、それに沿って荷揃えをして現場へと配送します。
最近では邸別に仕分けられた山をスマートフォンで撮影するだけで、自動で突合せ作業実績を記録し、情報が印字されたラベルが作成できるシステムも導入しました。それまでは目視で山ごとに建材・設備の突合せ作業をしていたのですが、このシステムを導入したことで作業手間を大幅に削減できます。
物流業界では、TMS(配送管理システム)の導入が進んでいますが、当社ではいち早くTGC(汎用自動車クラウド)という独自の配送管理システムを導入しています。このシステムは各倉庫のクラウドシステムと連携しており、着荷確認や配送途中情報などを一元的に管理しながら、最新の情報をリアルタイムに参照・管理できます。
工程の遅れなどで納品日時が変わる場合、こうした情報も随時反映しながら、より最適な配送を行えるようにしています。こうした点でも専門的なノウハウが求められます。
―他業界と比較すると、住宅業界の物流業務は難易度が高そうですね。
住宅分野の物流が担えるのであれば、他の業界での対応はそれほど難しくないと言っても過言ではないでしょう。
情報管理の部分だけでなく、既存の住宅地へ建設資材を運び込むことになるので、かなり慎重な対応が求められます。周辺の住宅の植栽などにも細心の注意を払う必要があります。
現場の職人の方々とのコミュニケーションも重要です。契約内容にもよりますが、多くの場合、荷卸しなどもドライバーが行います。また、当社ではドライバーが家庭用蓄電池の簡易施工まで行うこともあります。
いずれにしても、住宅業界向けの物流業務については、誰でもできるというわけではなく、一定の技能を習得したドライバーでないと対応が難しいのです。
―難易度が高い住宅分野については、対応できるドライバーを確保することが難しいのではないでしょうか。
我々もその点を心配しています。物流業界全体が新規のドライバーを獲得することが難しくなっています。住宅業界向けの物流については、専門的な技能を備えた人材を育成する必要もあります。最近では住宅分野のサービスを辞めてしまう物流会社も少なくありません。
当社では、滋賀県にある「クレフィール湖東」という施設で住宅物流を担えるドライバーの育成を行っています。実際の工事現場を模した研修設備もあり、こうした設備を使いながらドライバーの育成を進めているのです。
当社のドライバーについては、内装部材、外装部材といった部材分野ごとに、それぞれの技能や経験を踏まえて担当できる分野を決めています。ベテランドライバーの中には、全ての分野を担えるドライバーもいます。
個別最適から共同化へ
4社協業でさらなる効率化を
―積水ハウス、旭化成ホームズ、積水化学工業との協業も発表されましたが。
住宅物流に限らず、日本の物流業界では個別最適が進んでいます。そのことが物流サービスの質を向上した側面もあるのですが、日本の物流業界の平均的な積載率が4割程度に留まっている要因のひとつにもなっています。人手不足が進む中で、企業の垣根を超えた共同化が求められていることも事実です。
積水ハウス、旭化成ホームズ、積水化学工業との協業については、物流拠点や車両の共同利用、部材購入・輸送の共同化などを進めていこうとしています。
建設現場までの輸送について一部地域では、物量に応じて3社の配車調整を行うことで効率的に配送するなど、共同での取り組みを実施しています。
その他にも積載効率を向上するための共通パレット導入の検討や、ダブル連結トラックによる車両の大型も進めていこうとしています。
また、当社では2025年2月に、「TSUNAGU STATION浜松」(静岡県浜松市)をオープンしました。この拠点は中継輸送を実現するもので、コンテナを別のトレーラーに積み替えることで、ドライバーの移動距離を短縮できます。例えば、東京から「TSUNAGU STATION浜松」までコンテナを運んできて、それを名古屋まで帰る別のトレーラーに積み替えることで、東京から来たドライバーは名古屋まで行く必要がなくなります。また、休憩施設も備えており、ドライバーの労働環境改善などにも貢献します。
今後、全国4カ所にTSUNAGU STATIONを開設する計画で、ハウスメーカーとの協業でも重要な役割を担うことになるでしょう。
今回の4社協業については、住宅物流の効率化に向けた大きな一歩であると考えています。物流業界の現状を考えると、効率化に向けた取り組みは「待った無し」という状況です。それだけに、まずは4社で新たな住宅物流の形を具現化し、将来的には住宅業界全体に波及するような取り組みを進めていきたいと考えています。
(聞き手:中山紀文、高場泉穂)
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