竹久夢二式のモデルルームへ/吉夢への能力を鍛える。
竹久夢二式のモデルルームへ
ノスタルジックと言おうが、レトロと言おうが、この人の人気はいつの世までつづくのだろうか。大正ロマンの旗手、竹久夢二だ。目の大きな、それでいて何か物憂げな美人画は夢二式として今も人々の心を和ませる。とくに、昨年は生誕140年、没後90年の節目の年とあって各地で夢二イベントが開かれ、ファンを惹きつけた。そして驚くのは、これまで十分に、研究、知り尽くされているはずと思われる夢二なのに、今なお新たな視点、切り口で夢二世界を眺めようという試みが行われていることだ。千代田区の日比谷図書文化館で昨年12月まで開催されていた「夢二式モデルルームへようこそ」と題した特別展もその一つだ。“モデルルーム”と銘打たれたからにはと、年末に駆け込んだのは夢二ファンというよりルームの名に反応する職業病に近い。若い女性が多いのはやはり夢二が描き出したファッション、アイコンの魅力ならではか。覗いた“夢二式モデルルーム”は新鮮であり、新たな夢二式への気付き、発見だった。人物を中心に生活空間に照準を当てた作品の展覧だが、室内空間に配される家具や調度、装飾品によって室内の人物がより際立ち、魅力度を増していることに驚くのだ。優れた住空間とはそこに入り、暮らし、生活する人が惹き立つ空間であると言われるが、夢二式室内空間はその象徴のようにも感じる。夢二式モデルルームとして和室、洋室が紹介されているが、間違いなく夢二ワールドが広がる。和室には夢二好みの屏風や襖を配し、布団には古典柄や植物など図案化した模様が描かれる。落ち着き籠りたくなる日本情緒が溢れる。洋室は年末の展覧会を意識してか正月の一家団らんの空間が大きく取り上げられているが、和室とはうって変わって明るくモダンで清々しさを感じさせる。明るい陽射しがこぼれる大きなガラス窓、脚付きのイスと丸テーブル、モダンな花柄の長いカーテン、窓辺には鳥カゴ、壁や床は夢二がとくに好んだ緑色で、森のなかのような雰囲気を醸し出す。くつろぐのは母親と抱かれた幼子に少年と少女の4人。父親のいないのは気になるが、そこは女性と子どもを描く夢二ならではか。夢二は住宅や部屋について「そこで生活する人の肉体を考えると“住みよき家”ができる」と語っており、夢二式モデルルームはまさにその言葉そのもののように思えた。画家、詩人、イラストレーター、ファッションデザイナー、インテリアコーディネーター、建築家など、その多才ぶりを彷彿とさせる夢二式モデルルームは確かに夢二の新たな顔の発見でもあった。夢二はこうも語る。「身のまはりの衣服、調度はなるべく自分で工夫して気持ちよく便利にそして簡素にしてゆきたいと思ひます。流行を追ふということは自分で自分の生活を工夫することのできない人か、物を所有していることを見得にする人のすることです」。今の我々への警句のようでもある。
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