東急電鉄/東急軌道工業、環境負荷低減をコンセプトに木造で梶が谷事業所
木質繊維系断熱材などアップサイクル建材を多用
東急軌道工業 梶が谷事業所を木造で建設した。従業員の業務環境向上、環境への配慮・負荷低減をコンセプトとして設計し、木造で建設、アップサイクル建材を多用した。
東急軌道工業は、鉄道線路設備のメンテナンス・改良・新設という役割を担う、東急電鉄の軌道工事専門会社だ。神奈川県川崎市中原区に本社があるが、今回、東急電鉄におけるBCP強化および業務連携強化を目的に、梶が谷事業所(川崎市高津区)を新設した。東急電鉄 鉄道事業本部 工事部 施設課の鈴木稔主事は、「東急グループとして、脱炭素・循環型社会の実現に向けた『環境ビジョン2030』を策定し、『なにげない日々が、未来をうごかす』を掲げ、環境に良い行動が特別な負担感なく選択でき、誰もが持続可能な社会と地域環境の再生に貢献できるまちづくりを目指している。梶が谷事業所新設にあたっても、環境への配慮・負荷低減を第一のコンセプトとして検討を進めた」と話す。
設計士とも検討を進めた結果、建物の構造体を、脱炭素やCO2固定化に貢献し、さらに居住空間に対しリラックス効果や温度調整効果、消臭抗菌効果などの効果も期待できる木造とした。コスト面で鉄骨造などと比較しても木造に優位性があったという。また、パナソニック アーキスケルトンデザインの「テクノストラクチャー工法」を採用することで、一般的な工法よりも柱を少なくし、快適な執務環境、見通しが良くコミュニケーションが取りやすい空間を創出した。
アップサイクル建材も多用した。断熱材として使用したのは、デコスの、新聞紙をリサイクルしてつくる木質繊維系断熱材「デコスファイバー」。木質繊維が複雑に絡み合い空気の層をつくり優れた断熱性能を発揮。高い吸音効果も生み出す。さらに、木質繊維が持つ吸放湿特性により年間を通じて適度な湿度維持にも寄与する。このデコスファイバーを屋根に345㎜(一部185㎜)、壁に105㎜(一部100㎜)の厚みで吹き込んだ。仮眠室の間仕切り壁にも防音性向上のためデコスファイバーを採用している。なお、デコスファイバーは、2011年にCFP(カーボンフットプリント)を断熱材業界で初めて取得、1袋15㎏あたりのイニシャルCO2は「7.1㎏‐CO2」で、現在も日本最小値となっている。このCFP値を基に、梶が谷事業所で使用のデコスファイバー全量からCO2排出量を計算し、(公社)岐阜県森林公社の間伐促進型プロジェクトによるJ‐VERクレジットを購入した。加えて、アップサイクル建材として、卵殻を配合した機能性壁紙「エッグウォール」、デニム端材をリサイクルしてつくる左官材「NURU DENIM」なども採用。さらに、保線工事で使用するイヌクギなどの資材を入口スペースにオブジェとして配置、軌道砕石を外構用蛇籠として、仕切り材のように使用することで、企業軌道工事専門会社らしい要素をデザインに取り込んだ。
また、東急電鉄として初めて川崎市の脱炭素先行地域で「川崎市地域脱炭素移行・再エネ推進補助金」を活用し、太陽光発電パネル、全館空調設備などを導入している。
環境への配慮・負荷低減、また、従業員の業務環境向上を目指し建設された木造建築の好事例として注目を集めそうだ。
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