オーダーメイドを極めたシースルー階段で顧客の要望に応え続ける
カツデン 坂田清茂 代表取締役
坂田 清茂(さかた・きよしげ)
東京都出身、1962年生まれ。1984年東洋大学工学部卒業。同年、カツデン入社。美里木部工場の新築プロジェクトリーダーや、美里工場生産管理部長、ビル建材本部長などを経験。01年 建材統括本部長として新規事業の室内スチール製階段の企画・立上げを行う。03年2月に建材事業をカツデンアーキテックとして分社化、代表取締役を務める。
※カツデンアーキテックは23年にカツデンへ名称変更。
─室内階段への注目度が高まっています。
23年度5月期決算は、売上高が36億8900万円で、そのうち主力のスチール階段・手すり製品の売上は33億2600万円でした。
ここ20年くらいはずっと右肩上がりの業績を続けてきましたが、昨年は九州地方で売り上げを支えていた営業担当者の退職もあり、新設住宅着工減の影響をカバーしきれず、売上高は2%のマイナスとなってしまいました。ただ、今年度決算では、昨年度から5~6%の伸びを予測しており、住宅産業の勢いが途絶えるなかでは踏ん張っていると思います。
需要先としては、グレードの高い注文住宅での採用が多いです。着工棟数が減るなかで、大手ハウスメーカーは軒並み高級住宅に舵を切っています。例えば、今まで5000万円の家を売っていたとすると、最近は1億円、2億円クラスの家も珍しくありません。こうしたなかでローコスト住宅との差別化を図るために当社の商品を採用していただけています。
昔は形の決まったものをできるだけ安価に提供するというビジネスモデルが主流でしたが、現在はエンドユーザーの多様化するニーズに対応できる商品が好まれます。2年前に、ローコスト住宅を提案する工務店などをターゲットに、規格サイズで価格を半額に抑えたオンライン階段発注サービスも開始しましたが、やはりオーダーメイドの需要が高いようです。
特に階段は、住宅設計の最後に検討がなされがちです。プランが最優先で、リビングやダイニング、水回りなどの間取りを決めてから、最後に設置する場所を決めるわけですが、階段は設置場所が変わると設計がすべて変わってしまいます。当社は1棟ごとの細かなニーズにもすべて対応するので、プラン変更などにも対応ができて、なおかつかっこいい階段ということで、依頼していただけることが多いです。
─オーダーメイドの強さは、どのようにして培われたのですか。
設立当初は対応が難しい依頼をお断りすることもありました。しかし、どうしてもとお願いをされて、それに応えていくうちに技術力が培われてきました。断ることは簡単ですが、ハードルを乗り越えただけ技術のレベルが上がっていきます。
現在は、ハウスメーカーから貰った図面を見て、営業担当が納まるかどうかを見積もり段階で判断し、納まらない場合は具体的な助言もしています。希望納期に間に合うように、階段設計、工場生産の納期を組むノウハウを社内で共有して、新人の営業担当を含めて対応できるように、社員教育を強化しています。
実際に、一度他社へ流れた案件が、トラブルが続いて戻ってくることもあります。階段の駆け込み寺といわれていますね。階段が難しいのは、デザインもそうですが、構造材であるということです。また、数少ない日常的に手足に触れる住宅部品のため、デザイン、構造、安全性と考えなければならない要素が多いのです。
─5月には、西日本の生産拠点である島根益田工場の増築工事が竣工しました。
関西に進出したのは約20年前の2004年です。その後、17年に福岡、さらには広島と西日本での販売を拡大してきました。しかし、西日本で販売を行うにあたって、埼玉にしか工場がないと運賃負担が大きすぎるため、20年に島根益田工場を建設しました。さらに、主力事業である室内用シースルー階段の需要拡大に伴い、昨年より、島根益田工場を増築し10月から稼働を開始しました。生産能力は、増築前の約2.5倍です。
現在、埼玉美里工場と島根益田工場の生産比率は6対4くらいですが、採用者数では圧倒的に島根の方が多く、5年も経たないうちに島根の方が、人が多くなると予測しています。個人的には工場の増築は長期的な視点で考えるべきだと考えています。現状でみると生産能力2・5倍は少し大きすぎるような感じがしますが、長期的な視点に立てば必ずしもそうではないと思っています。
─ベトナムにも工場を持たれていますが、そこでは何をつくっているのですか。
ベトナムの工場では、主に薬を袋詰めする機械の製造をしています。階段の製造で板金加工、溶接、塗装の技術を持っていたため、依頼を受けました。これが、ベトナム工場の売上の3分の1を担っています。
また、ベトナム工場の事務所では、国内で販売する階段の図面作成も行っており、これも売り上げの3分の1程度です。ベトナムCADセンターと呼んでいますが、室内階段事業が成長するうえで欠かせない存在になっています。日本では図面を書ける人材を集めるのが難しくなってきていますが、ベトナムでは技術系の学生を集められます。そのため、図面作成の8割はベトナムCADセンターで行っています。
そして、残りの3分の1がサイクルスタンドの製造です。サイクルスタンドは今期の伸びが良く、当社の売り上げ全体の1割弱を占めています。都内に多くあるシェアサイクルのスタンドには当社のものが多く使われています。
─商品開発の方向性を教えてください。
方向性は、特にありません。当社は「人とちがう 価値をつくる」をテーマに、大手メーカーではやらないようなことを積極的に行っています。お客様の意見を聞かずに、方向性やビジョンをつくっても仕方ないので、求められたものに対応していくことが一番だと思っています。
最近は、当社が下請けの形で、家具のOEMにも力を入れています。日本の家具は木が主流のため、業者の方も木製の家具には詳しいのですが、スチール家具は海外に外注していることが多いのです。そのため、納期がかかったり、要望がきちんと通らなかったりと細かい問題を抱えていることが多々あります。当社は国内にも海外にも工場を持っていて、対応力もあるので、提案すると予想以上に反響はありました。家具のノウハウはないので、OEMをする中で勉強させてもらえればと思っています。
(聞き手:町田結香)
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