トランプ政権が誕生 どうなる住宅・不動産各社の海外事業
金利下げ、住宅政策に注視
米大統領選(11月5日投開票)で共和党のドナルド・トランプ前大統領が勝利し、再び大統領に就任することとなった。住宅・不動産各社において海外事業の拡大が続いているが、その大きな柱の一つが米国市場。来年1月に発足する新政権下で、米国の住宅・不動産市場にも変化が起きそうだ。
2017~2021年の前トランプ政権では、減税や雇用に力を入れ、特に富裕層の所得が高まった。また、土地利用に関する規制緩和、コロナ禍での金利引下げなどにより住宅市場が活性化する一方で、住宅価格の高騰も進み、取得しづらい状況を生んだ。今後、どのような政策を打ち出すかにより、米の住宅・不動産市場が大きく動く可能性がある。「政策が分かれば手を打ちたいが、正直分からない。不確実性が増したとしか言えない」(三井不動産)と、不透明感はぬぐえない。
ただ、住宅業界には前向きに捉える声もある。住宅各社の米国事業は、底堅い住宅需要を背景に好調を続ける。新大統領の就任は、各社の米国住宅事業にも間違いなく影響を及ぼすとみられる。米国では、大統領選挙の年には政策変更の可能性から住宅購入を控える傾向があるという。そうした「様子見」が終わり、新たな住宅支援策などが出てくれば、さらに住宅販売が加速する可能性がある。大和ハウス工業の芳井敬一社長は「今回トランプ氏は無茶な政策はしないだろうとみている。需要に変わりはないので、ここからさらに受注が伸びると期待している」と話す。
一方、「米国不動産業界にとっても、当社にとっても追い風」と捉えるのは、日本の富裕層向けに米国の不動産事業を展開するオープンハウスグループ。同社は17年に米国に進出、住宅の資産運用を希望する日本人顧客に向け、仕入れ、販売、管理、売却を一貫して行うサービスを展開し、24年現在管理棟数は5000超にのぼる。「現在の米国不動産の課題は金利の高さで、住宅ローンは30年固定金利で6・8%程度とあり、取引が鈍化している。トランプ氏は住宅金利下げを謳っており、金利低下で取引が活発化、不動産価格が上昇していく可能性」(ウェルス・マネジメント事業部の高橋良育課長)と市場活性化に期待を寄せる。また長く米国不動産事業に携わってきた同事業部土屋忍課長は、第1次トランプ政権時にシリコンバレーにおける移民政策が住宅市場に影響を与えたことを挙げ、「今回も金利引き下げに力を入れると思われ、様々な部分で市場の回復がみられるだろう」と予測した。
米国市場そのものについては、「人口が増加し続けており、特に物件購入を検討する25~35歳の人口が多いことから需要は底堅い。一方、子供が巣立ち大きい家が不必要になる60~65歳程度の層の賃貸住み替え需要もある」(高橋氏)。「古くても物件の価値、賃貸価格がどんどん上がっていくのが米国不動産の魅力。古い物件をリノベーションするだけで価値を上げていくことができる」(土屋氏)とビジネスチャンスの拡大を期待する。
米国の住宅・不動産市場にとどまらず、米国の経済状況は、日本の経済、ひいては住宅・不動産市場に少なからず影響を与える。トランプ政権によりどう市場が動くのか、注目したい。
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