吉野石膏、リサイクルせっこう100%使用を実現
環境負荷の大幅低減を提案、25年1月から受注を開始
「タイガーR100」は独自技術によりリサイクルせっこう100%使用を実現したせっこうボード。住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現に向け、CO2排出量削減を提案する。
吉野石膏がリサイクルせっこうを100%使用したせっこうボード「タイガーR100」を開発、2025年1月から受注を開始する。
「温暖化が急速に進むなか、CO2排出抑制はまったなし。その対応は企業の使命だと考えている」(須藤潮副社長)と、この商品を「持続可能な循環型社会に向けた重要な商品」と位置付けている。同社は、今年8月にリサイクルせっこう50%以上使用のせっこうボード「タイガーR50」を発売したが、さらなる技術開発を続け100%使用を実現した。
「タイガーR100」は、建設時の端材や分別解体されたリサイクルせっこうを主原料に100%使用するが、これまでとは異なる新たな技術開発でリサイクル時の環境負荷を低減したことが大きなポイントだ。石膏ボードのリサイクルは、廃石膏ボードから分離した石膏を焼成して石膏粉をつくり、結晶化させて結晶を大きくした上で粉砕、再生石膏に加工するものであり、リサイクル過程でエネルギーが必要となる。「タイガーR100」は、あくまでリサイクルせっこうをそのまま使うことで、新たな負荷をかけることがない。
これまでリサイクルせっこうをそのまま使えなかったのは、ボードを製造する時に水を使い乾燥させることから寸法安定性が悪かったため。同社は特殊な添加剤を使用することでこの問題をクリアした。また、リサイクルせっこうは結晶が非常に小さなことから必要な強度が出せない。同社の独立気泡を分散させる独自のコア形成技術により必要な強度を確保した。この2つの技術がリサイクルせっこう100%を可能にした。
「タイガーR100」の製造は千葉第一工場と三河工場の二カ所で行うが、厚さ12.5㎜品のEPD値(原料調達・原料輸送・製品製造時の1㎡当たりの二酸化炭素排出量)は、千葉第一工場品が0.9㎏CO2eq、三河工場品が0.8㎏-CO2eqと非常に低い。
受注生産品としたのは、全生産品を「R50」や「R100」とするだけの廃せっこうボードが存在せず、廃せっこうボードを早急かつ大量に集めることは難しいことをあげる。もう一つが、環境配慮製品の採用が過渡期にあることだ。実際、引き合いはあるものの、すぐに採用するという例はごく一部だという。しかし、「住宅メーカーや建設会社はCO2排出量削減に取り組んでいる真っ最中で、模索中の事業者も多い。ただ、カーボンニュートラルに向かっていくことが大きな目標であり、今後増えていくことは間違いない」(須藤副社長)とみる。また、「R50」と「R100」の価格差は、9.5㎜品で約10%、12.5㎜品で約3%のアップ。設計価格には大きな差がないことから「ユーザーの意向次第だが、R100の注文が多くなるのではないか」とみている。
同社は1995年に建材業界で初めて再生活用事業個別指定を受け、翌96年には産業廃棄物広域再生利用指定制度で一括指定を受けている。30年前からせっこうボードのリサイクルを推進してきた。「R100」の実現により、環境負荷低減に向け同社が次のステージに踏み出したといえる。
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