日本集成材工業協同組合、中大規模木造での集成材利用拡大へ 担い手育成と設計支援に注力
業界団体の今:日本集成材工業協同組合
昨年創立60周年を迎えた日本集成材工業協同組合に現在の注力事業と今後の展望を聞いた。
日本集成材工業協同組合(日集協)は、昭和38年、会員企業相互の技術交流とともに、集成材の品質向上、規格の作成、集成材製品の需要の拡大などを目的に19社を構成員として設立された「日本集成材工業会」が前身となる。現在の形の協同組合は、昭和46年6月に「日本集成材工業会」を発展的に解散し、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)に基づいて設立された。北海道から沖縄までの全国を区域とし集成材の製造業者などが加入している全国団体で、令和6年10月現在の組合員は68社、賛助会員は6社となっている。
日集協の事業活動のベースとなるのは、集成材製品の品質確保・向上の取り組みだ。JAS格付けなどによる品質性能の確保・向上、また、流通集成材製品の買い上げによる自主的な強度調査などによる品質性能の確保向上に取り組んでいる。清水邦夫専務理事は、「住宅向けの中小断面集成材については、引き続き品質・性能の明確な集成材を供給し、既存のユーザーの信頼を裏切ることがないよう、また、新たなユーザーの獲得につながるよう、JASに基づき、品質管理に努めていく必要がある」と話す。
「集成材便覧」を公開
入手のしやすさなども明記
脱炭素を背景に木造建築推進の気運が高まる中で、新しい分野として非住宅の木造・木質化への注目度も高まっている。日集協としても非住宅分野での一層の大断面集成材や耐火木質ハイブリッド集成材などの利用拡大に向け取り組みを強化する。その一環として、2023年度は、林野庁の補助事業「CLT等木質建材部材技術開発・普及事業」に採択され、「中大規模木造建築のための加工・施工技術普及検討事業」を実施。「担い手育成」と「設計支援」の2つに取り組んだ。
「担い手育成」は、中大規模木造建築物の現場で接合部の加工・施工などの担い手(技術者・技能者)を育成することが目的で、総合講習(オンデマンド)、修了試験を実施し、修了者の公表を行った。修了者の公表を通じて、担い手及び担い手の所属する企業の「見える化」を図っている。講習では、中大規模木造建築に求められる最新の部材加工技術、現場施工技術を扱った「中大規模木造建築の担い手講習テキスト」を作成し使用。同テキストでは、鉄骨造を参考にして精度基準案なども示している。なお、2024年3月、(一財)日本建築センターより発刊された「集成材等建築物構造設計マニュアル」には、施工に関する事柄については、同テキストを参照すべき旨が記されている。日集協では、令和元年から担い手育成に取り組んでおり、令和5年度までの累計で347名が修了者として認定されている。
「設計支援」は、構造用大断面集成材の利用が進むよう設計者向けに技術情報を提供し支援することが目的で、集成材柱の許容耐力表および梁端部(仕口側)の接合部仕様の作成、「準耐火構造物(集成材建築物)における接合部の防火設計の手引き」の改訂作業などに取り組んだ。
そのほか、中大規模木造建築のための加工・施工技術普及検討事業とは別に、2024年7月、「集成材便覧」をまとめ日集協HP上で公開した。組合員11社がメーカー別、工場別、樹種別に大断面集成材などのサイズ(材幅、材せい、長さ)、使用する接着剤、入手のしやすさなどが分かるように作成したデータだ。ゼネコンなどで構成される日本建設業連合会(日建連)の木造・木質建築普及ワーキングチームの標準化・規格化サブWTにおいて、「一般的に製造しやすい部材の仕様(一般製造)と、比較的コストはかかるが、ここまでなら製造可能な部材の仕様(対応可能)が示されれば、効率的な断面を企画・設計段階で設定することが可能となり、中大規模木造建築の普及にも資するのではないか」との提案を受けて作成した。
ボリュームゾーンの中小断面が苦戦 住宅市況の好転に期待
令和5年度の組合員の生産量は、構造用集成材が140万7000㎥と前年比2.9%増となった。うち小断面集成材は同3%増の75万2100㎥、中断面集成材は同1.1%増の63万4900㎥にとどまった。一方、減少傾向が続いてきた大断面集成材については、大阪万博の大屋根(リング)の製造を組合会員が担ったこともあり、同116.7%増の1万9500㎥に倍増した。なお、造作用集成材は同6%減の2万8300㎥となった。
脱炭素などを背景に木造建築に追い風が吹いているのは確かだが、大きなボリュームを占める住宅向けの中小断面集成材は、持家市場の冷え込みにより厳しい状況にある。集成材の原料であるラミナは、6割が外材、3割が国産材、1割が外材と国産材のハイブリッドとなっている。外国での戦争などの影響もあり、外材のラミナの価格が安定しない。一方で国内の住宅市況は持家、分譲共によくないため、利益を出しにくい状況が続いている。住宅市況が早期に好転することを期待したい。
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