2024.10.30

官民共創で住宅団地再生を推進

改正・地域再生法がターニングポイントに

高度成長期に大量に供給された住宅団地の衰退が大きな地域課題となっている。
今後、居住者の高齢化や空き家の増加がさらに進むと考えられるなか、その再生が政策の重要テーマとなっている。

2024年4月に「地域再生法の一部を改正する法律」が成立、この10月に施行となった。

同法は、「就業の機会の創出」、「経済基盤の強化」、「生活環境の整備」を3本柱に、地方公共団体が作成する地域再生計画を内閣総理大臣が認定し、その認定計画に基づく措置を通じて自主的・自立的な地域の活力の再生に関する取り組みを支援する。支援措置として「デジタル田園都市国家構想交付金」、「企業の地方拠点強化の促進に係る課税の特例等」、「地域住宅団地再生事業」など豊富なメニューが揃えられており、24年3月までに地域再生計画を作成した地方公共団体は1万2446件に達している。

同法は、これまで9回の法改正が行われ、支援措置メニューの充実が図られてきた。特に地方創生の流れのなかでその強化が加速し、地域活性化を担う重要な法制度となっている。

今回の改正の大きなポイントは、官民共創を軸として地域住宅団地再生事業の拡充などを図る点にある。

まちの衰退が社会課題に
存続に向け取り組み

今、大きな社会的課題の一つになっているのが住宅団地の再生だ。

国土交通省によると、全都道府県の全560市区町村に2903の団地が存在し、その面積は約19.2万haに達する。そのうち92.6%が戸建住宅を含む団地で、戸建住宅のみの団地も51.3%と、戸建住宅がこうした団地の主要な構成要素となっている。これら高度経済成長期(1955~73年)に大量に供給された団地が〝老い〟を迎えている。多くの団地で居住者の高齢化が進み、建物も老朽化し、空き家が発生し始めており、今後、こうした状況のさらなる加速が懸念されている。単身高齢世帯の増加や世帯滅失が進むなか、子世代の入居などが進まなければ空き家が増加し、やがてまち自体の存続が危うくなることは間違いない。

国土交通省が地方公共団体を対象に行った調査によると、住宅団地に係る問題意識(22年度時点)は「高齢者が多い」(63.2%)、「生活利便性」(40.4%)、「交通機能低下」と「非住宅用途の導入が困難」(ともに32.4%)がトップ3であり、「高齢化」、「空き家」、「生活便利機能」、「交通機能」などが指摘。17年度と比べると、特に「コミュニティ弱体化」と「非住宅用途の導入が困難」という指摘が増加している。

こうしたなか17年度に地方公共団体と民間事業者などの関係者が「住宅団地再生連絡協議会」(事務局:国土交通省)を設立、住宅団地の再生・転換方策について意見交換などを実施してきた。こうした活動のなか23年12月に「住宅団地再生に向けた提言」を行った。このなかでは「地域住宅団地再生事業計画の提案制度を新たに設ける」、「第一種低層住居専用地域等における用途、床面積等の都市計画規制や建築規制を緩和」、「廃校等の公共財産を地域住民等が持続可能な形で活用する」などが盛り込まれた。今回の地域再生法改正は、この提言を踏まえたものとなっている。

地域再生推進法人による地域住宅団地再生事業計画の作成等の提案の制度内容

官民共創の団地再生へ
民間事業者の役割に期待

大きな改正ポイントの一つが「官民共創よる住宅団地の再生」だ。官民共創の再生を推進するため、各種許認可などの手続きをワンストップで行うことができる「地域住宅団地再生事業」を拡充する。同事業は、19年の法改正で創設された制度。従来の「高度成長型のまち」から「多世代・多機能のまち」への転換を図るため、市町村が区域を定めて多様な主体と連携して住宅団地再生のための総合的な事業計画を作成する。

今回の拡充では―
〇地域再生推進法人が市町村に対し、地域住宅団地再生事業計画の作成等を提案できる仕組みを創設
〇市町村が地域住宅団地再生事業計画を作成・公表した場合の措置として、住居専用地域における小規模店舗(コンビニエンスストア、コミュニティカフェなど)やコワーキングスペースなどの日常生活に必要な施設に係る用途規制の緩和等を追加
―などが行なわれた。

第8回「住宅団地再生」連絡会議が開催、各自治体の事例発表が行われた

特に注目されるのが「地域再生推進法人」の役割の拡充だ。同法人は地方公共団体が審査を経て指定するもので、NPO法人、一般社団法人、企業など「住宅団地再生に取り組む民間団体等」とされ、地域再生事業の実施または事業への参画のほか、土地取得業務(地域再生事業に要する土地の取得、管理及び譲渡)も担うことができる。指定を受けることで、市町村に対する再生事業の作成などの提案のほか、住宅団地の再生の担い手として見える化されるとともに公的位置づけが付与されることで地域の信用を得られる。

これら改正を受け、国土交通省は25年度予算で施策実施を検討。例えば、「住宅市街地総合整備事業」(住宅団地ストック活用型)において、民間事業者などによる意欲的な団地再生の取り組みを促すための取り組みに対しての支援を強化する。

住宅業界において、かつて供給した団地の再生に取り組む事業者が目立ち始めている。例えば、「リブネスタウンプロジェクト」を推進する大和ハウス工業は「地域ニーズを踏まえた官民共創による住宅団地再生の後押しになる」(神田昌幸 執行役員 リブネスタウン事業推進部長)と期待する。

初代の地方創生大臣を務めた石破氏が内閣総理大臣となり、その所信表明演説において「地方創生2.0」を掲げた。これまで以上に地方創生に向けて国が力を入れていくことは間違いない。「住宅団地の再生は、地域、民間企業、そして行政の方々が想いを一つにして進めなければなかなか進まない」(内閣府地方創生推進事務局 石坂聡事務局長)。民間事業者の団地再生の取り組みの加速に期待がかかる。