宅配ボックスの普及に加速

再配達率削減、非対面受け取りなど消費者ニーズや社会課題解決で注目高まる

宅配便の再配達問題の解決が強く望まれる。また、宅配便の増加のなか防犯面などから非対面での受け取りニーズも高まる。こうしたなかで注目されるのが宅配ボックスだ。すでにマンションでは高い設置率となっているが、新築戸建住宅やリフォームなどに広がりだしており、各社も新たな商品開発を活発に進めている。

宅配荷物の再配達が大きな社会問題になっている。国土交通省によると2024年4月の宅配便の再配達率は10.4%。前年同月は11.4%、半年前の23年10月は11.1%であり、徐々に減ってきているものの、まだ1割の荷物が再配達となっている状況だ。

その背景には宅配便取扱個数の増加がある。国土交通省の調査によると、23年度の宅配便取扱個数は50億733万個。前年度比145万個増、約0.3%増であり、過去最高となった。10年度からの推移は基本的に右肩上がりで、特にコロナ禍の20年度に一段高まった後も増加を続け、22年度に50億個の大台に乗った。多様化するライフスタイル、電子商取引の急拡大のなか宅配便の取扱個数が増加しているのである。

こうした増加にともない顕在化したのが再配達だ。19年までは15~16%台の推移が続き、20年度頭には8%台に大きく落ち込んだものの、以降11%台での推移を続けてきた。ここ数年は微減傾向が続いているものの、直近の24年4月では未だ10%を切ってはいない。

国は再配達率削減がドライバーの負担軽減につながり、物流の「2024年問題」に対応するために不可欠と位置づけ、さまざまな対策を打ち出している。23年6月にまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」では24年度に再配達率6%を目指すと盛り込んでいる。

同パッケージは、「商慣行の見直し」、「物流の効率化」、「荷主・消費者の行動変容」を3本柱に具体的な施策をまとめたもの。このうち「荷主・消費者の行動変容」のなかで「再配達削減に向けた取組み」を掲げ、「コンビニ・ガソリンスタンドでの受け取りやマンションにおける宅配ボックスの設置、置き配が進む取組みなどを推進」、「消費者の行動変容を促すインセンティブの付与に向けて調整」、「2024年度に不足する輸送力を補うため、再配達率を半減する緊急的な対策」などを措置するとした。ただ、今年4月現在で再配達率半減には遠く及んでおらず、さらなる取り組み強化が求められる。

宅配ボックスの普及拡大に向け支援策や商品開発が加速

再配達率の削減に向けてさまざまな取り組みが進むが、住宅業界においては宅配ボックスの設置が再配達率削減に大きく寄与すると期待が集まる。宅配ボックスは再配達率の解消だけでなく、非対面で荷物を受け取ることが可能となり、子供が一人で在宅している時、また、高齢者単身世帯などにおける防犯の意味からも効果を持つ。在宅していても直接荷物を受け取りたくないといったニーズも少なくない。

国土交通省でもさまざまな支援策を打ち出し、その設置を後押ししている。例えば、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「子育てエコホーム支援事業」では一定の改修工事とあわせて宅配ボックスを設置する場合に補助を行っている。
こうしたなか住宅における宅配ボックスの設置が着実に広がっているが、その普及には偏りがあるのが現実だ。

国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、22年4月~23年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯における宅配ボックスの設置率は、分譲集合住宅が86%と群を抜いて高く、既存(中古)集合住宅が45%と続く。宅配ボックスの導入はマンションから始まっていることが如実に数字に表れている。一方、戸建住宅は分譲戸建住宅が42%、注文住宅が39%、既存(中古)戸建住宅が18%である。また、賃貸住宅も37%と新築・中古マンションに比べて低い。総じてみると、宅配ボックスの普及は、マンションに比べて戸建住宅、賃貸住宅では遅れており、新築住宅に比べて既存(中古)住宅での普及が遅れている。

前年度の調査と比べると、注文住宅は0.6ポイント増、分譲戸建住宅は5.9ポイント増、既存(中古)戸建住宅は0.5ポイント増、賃貸住宅は2.6ポイント増とそれぞれ増加しており、着実に戸建住宅や賃貸住宅でも導入が広がりつつあるが、まだ、半分にも満たないのが現実だ。ただ、逆にみると新築戸建住宅への設置、また、既存住宅へのリフォームでの設置などさらなるビジネスチャンスがあるということでもある。

こうしたなか各社の戸建住宅向け宅配ボックスの商品開発、バリエーション拡充が活発だ。例えば、複数個数を受け取り可能としたり、使い勝手を向上したりと機能面の向上、充実を図った商品、外構と一体化するようデザイン性を高めた商品、カラーやサイズなどのバリエーションを充実させさまざまなニーズに応える商品、コストを抑え導入のハードルを下げた商品などさまざまだ。リフォームによる設置を考慮した商品も充実してきている。

再配達率削減は物流問題だけではなくCO2排出量の削減にもつながる。さらに非対面による受け取りは防犯性向上というメリットも持つ。ユーザーニーズへの対応はもとより、さまざまな社会的課題の解決に向けても宅配ボックスの普及拡大は大きな意味を持つ。住宅業界として宅配ボックスをスタンダード設備化していくことは大きな意味を持つ。

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