New   2024.10.23

一般社団法人 日本サッシ協会、流通会員制度新設で業界に盛り上がりを

社会課題に合わせて取り組みを強化

今年で設立から70年を迎えた日本サッシ協会の現在の注力事業と今後の展望を聞いた。

日本サッシ協会は、1947年に任意団体日本サッシュ協会として発足、54年に社団法人化した。サッシ、ドア、シャッターその他の開口部用建材及びエクステリアに関する性能、仕様の普及啓発などを目的に活動している。そんな同協会は、昨年より開始した流通会員制度の普及と、樹脂窓リサイクルなどに力を入れている。

同協会の会員数は1994年に245会員とピークを迎えたが、その後需要が落ち着きを見せサッシメーカー、販売店が減少したことに伴い、会員数も減っていった。現在は、正会員・準会員・賛助会員の合計で159会員、正会員のみではピーク時の半数以下になっている。そうしたなか、昨年の10月に新たに流通会員制度推進部会と広報部会を立ち上げた。これまではサッシ・ドアメーカーを中心とした正会員、準会員で構成していたが、メーカー、ビルダー、エンドユーザー三位一体でサッシ業界を盛り上げていくために、流通事業者を会員に迎え入れ、広報部会で発信を増やし、開かれた協会にしていく。

流通会員制度は、まずは住宅系の会社から会員受け入れを始めており、現在80社が加入している。

流通会員向けセミナーの様子

昔から建材業界は口約束などで契約が進むことが多く、トラブルが起きた際に流通店が損をすることが多い。こうした業態を変え、流通店が工務店にきちんとした説明や見積もりを出して適切な利益で業界に貢献してもらうことが目的のひとつ。

もう一つは、従業員数の少ない中小企業が会社を存続できるように、社員の雇い入れ方法や、見積りの出し方などをセミナーなどで情報提供し、サッシ業界の発展につなげていく。「住宅のトレンドや、必要な性能は時代とともに変化している。これまでは、製品を工務店に納めるだけでよかった流通店に求められる役割も変化しており、プラスアルファの技術や知識を持っていないと生き残れない時代となっている」(宮村専務)。現在は、流通店の経営基盤強化を目指した業務力向上セミナーや人材確保のためのセミナーを開催しており、今後、施工関係の知識を発信する動画も製作予定だ。流通幹事会員は、100社程度が第一の目標で、その後は地域ごとに情報会員も募集したい考えだ。

これまで、流通事業との情報連携は、各メーカーが個別に行っていたが、協会で実施することで、他の流通店との情報交換や行政との連携が取れ、「サッシ業界を一緒に盛り上げていきたい」と前向きな声が聞こえているそうだ。

(一社)日本サッシ協会
平能正三 理事長

2050年カーボンニュートラルへ
樹脂窓リサイクルにも力

その他の活動としては、塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ工業会と協力し、業界横断的に樹脂窓リサイクルの取り組みも行っている。

3団体は今年2月に「樹脂窓リサイクルビジョン」を発表、30年までに1万t/年の再生材活用を目指している。9月には樹脂窓が先行して使われている北海道で第一回目となるシンポジウムを開催した。

シンポジウムには、経済産業省 北海道経済産業局や、(一社)北海道ビルダーズ協会、解体業者の西武総業(北海道札幌市)など樹脂窓リサイクルに関わる様々な企業や団体が集まり、回収したサッシに混入する不純物をどのように抑えるか、回収の仕組みをどうつくっていくかなどを話し合ったという。


高いアンテナで社会の流れに合った活動を

(一社)日本サッシ協会
宮村敬治 専務理事

(一社)日本サッシ協会 宮村敬治 専務理事

日本の社会は、既に成熟期を超えて停滞、もっと言うと衰退期に入りかけています。そのような中で新築をどんどん作っていく時代は終わりを迎え、高機能、高性能といった付加価値の高い住宅や、出来上がるところから最後まで一気通貫の環境対策、それから人員不足の対策など課題解決に向けた取り組みが大きな方向性となっています。

日本サッシ協会も、そうした社会の流れを軸に重点テーマを設定しています。具体的には、流通会員制度、樹脂窓リサイクル、特定技能外国人制度、先進的窓リノベ事業の制度・審査対応、JISに有利な国際標準作りが現在の注力事業です。例えば、海外技能外国人を受け入れられるようにすることで、人員不足の解消や、サッシ業界のグローバル化に繋がります。国際標準についても同様で、サッシの仕様が世界共通になれば、日本のサッシを海外で流通させやすくなります。流通会員の募集についても、時代が変わるなかで、サッシ業界もメーカーだけでなく幅広い商流の方と一緒に取り組まなければいけないという思いからです。

国の施策としては、人材確保、カーボンニュートラル、取引の適正化、物流対策の4点が大きな動きになっています。こうした問題にアンテナを高く持って変化に追随していきたいと思います。3団体で発表した「樹脂窓リサイクルビジョン」もそうですが、目標を掲げないと前には進めない。行動しながら変えていくしかないと感じています。

また、日本サッシ協会は住宅系が7割、ビル系が3割なので、両者のいいところを取り入れて、新しいサッシの形をつくっていきたいとも考えています。特に近年は木造の建築物が増加していますが、建物が木造になると、ビル系では今まで溶接していたものが溶接できなくなるなどの変化もある。加えて、災害の激甚化で建材に求められる強度も変わってきていますから、そうした対応も進めていかなければなりません。

何が一番大切なのか、優先順位を考えながら、いい方向へ持っていきたいと考えています。