ライフデザイン・カバヤ、70回の地震に耐えるCLT住宅を開発
CLTパネル耐力壁をバランスよく内壁に配置、設計自由度も向上
ライフデザイン・カバヤ(岡山県岡山市)は、在来軸組工法にCLTパネル耐力壁を組み合わせたCLTハイブリッド構法を開発した。実大振動台実験で震度5~7の地震波を70回加えて揺らしてもほぼ無傷で、住み続けられることを確認した。同社は注文住宅をCLTハイブリッド構法1本に絞り、10月3日から販売を開始している。
CLTハイブリッド構法の肝となるのは、新たに開発したオリジナルCLTパネル耐力壁だ。厚さ60㎜(ラミナ厚さ20㎜3層3プライ)のCLTパネルを使用。地震により柱と土台、柱と梁の入隅に力が集中し、耐力壁が破壊することを避けるために、CLTパネルの四隅を切り欠き、八角形のダイヤモンド型の形状を採用した。在来軸組用CLTパネル耐力壁として「壁倍率5倍」の国土交通大臣認定を取得。施工が簡単なL字型の専用金物も新たに開発、施工性にも配慮した。幅910㎜の尺モジュールに対応し、CLTパネルの幅は805㎜。高さは2400㎜~2800㎜の間で調整することができる。販売実績、ニーズなどを踏まえてメーターモジュールへの対応も検討する。CLTパネルの樹種は国産スギ、1枚当たりの重量は約40㎏。CLTパネルの製造は銘建工業(岡山県真庭市)が中心となり、一部、サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)が担う。CLTパネルを現場で運搬し、架構にはめ込むための専用の治具も用意した。
筋かいを一切使用せず、建物外周をMDF耐力面材で固めモノコック構造とし、建物内部の耐力壁をCLTパネル耐力壁に置き換えることで、地震や強風など水平方向の力に対して強い強固な剛構造を実現する。伊丹真一 執行役員 設計・開発事業本部長は、「柱や梁で建物を支え、八角形のCLTパネル耐力壁で建物の外から加わる力に抵抗する。ビスの本数などを調整し、バランスよく地震に耐えられる剛構造を目指した」と説明する。高耐力を確保できるため、従来の在来木造と比べて、耐力壁の枚数を減らし、より開放的で自由度の高いプランをつくりやすくなる。そのほか、(独)住宅金融支援機構による省令準耐火構造認証も取得した。
2023年6月17日~20日、つくばの土木研究所で実題振動台実験を実施した。能登半島地震を含む、震度5~7相当の地震波を用いて70回加振。ホールダウンなどの締め直しを行わなくても大地震に耐えることを確認した。地震により損傷を受けた建物が、継続使用が可能かの判定は、変位が98㎜未満であることが一つのラインとなっているのに対して、今回の振動台実験では、5回目までの揺れで変位が35㎜、70回目の揺れで最大変位が41㎜と、98㎜の半分以下の変位に収まった。
坪単価は在来木造に比べプラス10万円以内
同社は23年度約1000棟の住宅を販売。内訳は注文が約700棟、分譲が約300棟。注文住宅では、2×4工法のエス・バイ・エル、カバヤツーバイフォー、在来軸組工法のカバヤホームなどのブランドで商品をラインアップしている。10月3日以降は、注文住宅のすべてをCLTハイブリッド構法住宅1本に絞り販売を強化する。
CLTハイブリッド構法の「CLT MASTERS」というブランドを立ち上げ、2階建て、3階建ての「WAGO」、平屋の「ANJU」の2商品を用意した。坪単価は80万円~。既存の同社の在来軸組工法の住宅の坪単価と比べてプラス10万円以内の価格帯に抑えた。
FCも展開、早期に年間1000棟へ
また、同社が直販する岡山、広島、九州など西日本エリア以外の、中部・東日本のエリアでFCを立ち上げ、地域ビルダーなどの加盟店を募り販売拡大を図る。差別化商品としてCLTハイブリッド構法を訴求し、年間10~50棟の住宅を販売する中小規模の地域ビルダーをメインターゲットとする。FCのブランド名は「GRAND NESTA」、商品名は「KIKA」とした。FCのみで24年10月~25年4月までに300棟、25年度以降、早期に年間1000棟を目指す。FC加盟金として100万円、広告宣伝費として毎月数万円のランニングコストがかかる。CLTパネル耐力壁と柱、梁などとの独自の組み方のノウハウがあるため、品質確保の観点から、構造材はセットで同社が指定するプレカット工場から現場に配送する。また、CLTハイブリッド構法の設計マニュアル、構造計算システムを用意。それらを活用して構造計算を行うことを推奨する。施工研修も行う。伊丹 設計・開発事業本部長は、「壁倍率5倍の大臣認定を取得済みであるため、個別の審査なく使用することができる。一般的な木造住宅と同じように計画から約2カ月弱で確認検査までが終えることができる。抜群に使いやすい」と話す。2025年4月からの4号特例縮小により、特に中小ビルダーにとっては確認申請の手続きが煩雑になることが懸念されているが、「我々が用意した構造計算システムを使用することで、今後の確認申請の出し方も楽になる」という。
窪田健太郎 取締役社長は「大地震が頻発する日本において、繰り返しの地震の後にも住み続けられる家としてCLTハイブリッド構法を、日本の住宅の標準にしていきたい」と語った。
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