日本繊維板工業会、繊維板の製造時のCO₂排出量、見える化で価値向上へ
炭素固定量を欧州のシンポジウムで発表
日本繊維板工業会では、繊維板などの製造時のCO₂排出量について、業界平均などを明示するための取り組みを進めている。
日本で製造される繊維板は、解体現場などで発生する木質系の建築廃材や製品製造時に発生する残材などを利用して製造しており、以前から環境負荷の少ない建材として認知されてきた。
こうした繊維板の特徴を学術的に明らかにするために、日本繊維板工業会では東京農工大学大学院農学研究院自然環境保全学部門の加用千裕教授の研究グループと共同で研究を進めている。
70年間で繊維板が貯蔵した炭素はCO₂換算で
5350万tと森林の年間吸収量に相当
加用教授と同工業会では、繊維板が貯蔵している炭素量を試算し、その結果を公表している。同工業会では、建物用途別に見た繊維板の出荷量に関するデータを長期間にわたり集積しており、加用教授はこのデータと減衰関数を使い、建築物で使われている繊維板が固定している炭素量を推計した。減衰関数とは、建物の用途別に現存している割合などを導き出すもの。
試算結果によると、過去70年に建物に使われた繊維板のうち、現存しているものが貯蔵している炭素量はCO₂換算で約5350万tであることが分かった。これは国内で製造された繊維板に限った数値。輸入されたものまで含めると約8000万tにも達する。また、近年では年間約70万t程度の固定量を増加させ続けている計算になる。ちなみに、2022年度に国内の森林などが吸収した炭素量はCO₂換算で約5020万t。つまり、建築物に利用されている繊維板は、森林が1年間に吸収する炭素量を現在、固定していることになる。
加用教授は、今年10月にドイツで開催される「European Wood-based Panel Symposium」でこの研究結果を発表する予定。繊維板の炭素固定量を試算する取り組みは、世界的に見ても珍しく、繊維板の需要が多いヨーロッパでの注目度も高いという。
一
方で、繊維板の製造時のCO₂排出量を学術的に明確化する取り組みも進めている。こちらも加用教授と共同で進めているもの。ハードボード、MDF、インシュレーションボード、パーティクルボードという4種類について、平均的な製造時のCO₂排出量を明らかにしていきたい考えだ。
建築業界では、建物の使用時だけでなく、使用する建材の製造・運搬、施工、さらには廃棄段階までのライフサイクルカーボンを明らかにすることが求められようとしている。そのため、建材についても製造時などのCO₂排出量を示すことが求められている。
同工業会の坂田徹専務理事は、「炭素固定量とともに製造時のCO₂排出量を明らかにすることができれば、繊維板の脱炭素化に向けた貢献度をより訴求できるのではないか」と話す。国や業界の動向なども睨みながら、最終的には第三者による認証取得なども検討していきたい考えだという。
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