2024.9.4

中央住宅/ポラス暮し科学研究所 人と生き物に住み開くコミュニティづくり

リーズン馬込沢SuBaCo project

ポラスグループの中央住宅とポラス暮し科学研究所が、「リーズン馬込沢SuBaCo project(スバコ プロジェクト)」で、人と生物が共生する新しいスタイルのコミュニティづくりに取り組んでいる。

これまでと違うストーリーを「植栽」で描けないか?

ポラスグループは、これまでに緑を多く採り入れたまちづくりに力を入れ、緑豊かな暮らしを提案してきた。この考えをさらに進化させ、人だけではなく鳥や蝶といった地域の生物にとってもオアシスとなるようなまちづくりに挑戦したのが4戸の戸建分譲プロジェクト「リーズン馬込沢SuBaCo prohect」だ。

場所は千葉県船橋市、東武アーバンパークライン馬込沢駅から徒歩15分。敷地面積181・87㎡~186・36㎡という広々とした土地であり、周辺も畑など自然豊かな環境に恵まれている。

一方で、市街化調整区域であり風致地区としても指定されている。建蔽率40%、容積率100%だけでなく敷地面積の15%以上の緑化が求められるなどさまざまな規制があった。その中で、ただ植栽するだけでなく、植えた木々により前向きな意味を付加できないかと考えた末に出てきたのが「生物多様性」というキーワードだった。設計を担当した中央住宅戸建分譲設計本部 設計一部 営業企画設計課 山下隆史課長は「船橋市が7年前から取り組んでいる生物多様性戦略を知ったのがきっかけとなった。当社が手がけてきた人のコミュニティづくりに、新しく地域の生物もメンバーに加え、人と生き物が両立するまちづくりができないかと考えた」と説明する。”緑”を美観や景観などにとどめず、居住者のより豊かな暮らしにつなげる、また、地域環境をより豊かなものへとつなげることをコンセプトに据えたのである。

そのコンセプトを実現したまちは高い評価を得て、2023年5月の販売開始から4か月で全4戸が完売。2023年11月に竣工、引き渡しした。また、2023年度のキッズデザイン賞を「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門」で受賞。また、海外ではアメリカのインターナショナルデザインアワード(IDA)2023の建築部門で銀賞も受賞している。

新たなまちづくりの実現のため、「人のコミュニティづくり」「生物多様性への配慮」「持続可能」の3つのテーマを柱とした。

「人のコミュニティづくり」の1つとして、敷地の中央に地役権設定をして路地「フットパス」を通した。全4戸の玄関をその路地に面するようにし、まちの中心ではフットパスを膨らませてベンチを備えたセンターテラスを設置。住民同士のつながりが自然にできるように計画した。また、各戸には部屋内部とフラットな高さにした屋根付きのテラス空間を備え、「人の生活を外に染み出させるようにした」(山下課長)と、広い庭を生かす中間領域として提案した。

まちにフットパスを通し、センターテラスやコミュニティベンチを設置

生物多様性推進の船橋市と協力

まちにフットパスを通し、センターテラスやコミュニティベンチを設置

「生物多様性への配慮」のため船橋市とも協力。市による地域の生物調査データを基に、地域にすむホオジロ、キビタキ、コゲラなどの鳥が好む実をつける木、ツバキ、ヤマボウシ、ウメモドキなどの7種類の誘鳥木を分譲地の中に散りばめて植樹した。また各庭には、鳥の水浴び、水飲み場となる石作りの「バードバス」コーナーを用意。住む人が自分の庭の手入れをし、地域の鳥や蝶などの生き物を呼び込むことが、生物多様性保存につながる仕組みだ。

また、周辺地域の自然環境を広くとらえて計画に落とし込んでいるのも特徴。例えば、このエリアは、夏は海からの南西風が吹く。この涼しく心地よい風をまちが遮ることなく吹き抜け、住民だけでなく地域全体が自然の恩恵を受けられるように配慮した。

このプロジェクトを「持続可能」とするために、支援も続けている。この5月には植栽の専門家を招き、庭の手入れのワークショップを開催、鳥の巣箱づくりも行った。今後、住民や市と協力しながら、どのような鳥や蝶が訪れているかなどの生物多様性効果を検証し、データ化して市に提供するほか、今後のまちづくりに生かす予定だ。

「SuBaCo Prohect」は、このまちの名称にとどまらない。まちの開発は中央住宅とポラス暮し科学研究所がグループ横断で生物多様性に取り組んだ初の事例で、「SuBaCo」には「持続的発展=Sustainability」、「生物多様性=Biodiversity」、「界隈性=Community」の意味が込められている。このプロジェクトを通じて今後も生物多様性を実現するまちづくりに継続的に取り組む考え。第2弾を埼玉県北本市で計画している。

内と外を日常的に行き来する暮らしを楽しむ

4棟の住宅は、巣箱をイメージした三角屋根を持つ箱状のデザインで、景観に統一感を持たせた。一階の軒の出を深く取り、それぞれの住宅のテラスや共有のフットパスに日陰をつくっているのが特徴的だ。

また、個性的なテーマを持たせたテラスコンセプトを起点に室内プランニングを行い、中間領域であるテラス空間を生かす暮らし方提案を行った。いずれもテラスを家の個性とし、室内の暮らしと外でのアクティビティが自然とつながる作りとなっている。

鳥や蝶たちが人と地域をつなぐ

「SuBaCo prohect」は、住民が共有空間やテラスを通じて庭や周辺の自然とつながる。

それぞれの住宅には鳥が好む実をつける木などを植えることで鳥や蝶などの生物を呼び込み、まちの生物多様性を育んでいく。さらに、こうした生物たちを媒介にして、人と人が、また、コミュニティとコミュニティがつながっていくことになる。

地域の生き物と共に、人と人がつながっていく
鳥が好むエゴノキの実
沢山の蝶が庭を舞う
蜜を求めやってくるコマルハナバチ

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グリーンテラス
好きな草花やペットに囲まれる暮らし

1号棟は、植物やペットに囲まれた暮らしを提案する「グリーンテラス」。ペットや植物が好きな住民を想定し、1階のリビングと土間の隣を室内サンルームとした。サンルームとテラスもつながっており、中と外を自由に行き来しながら植物を育てたり、ペットと遊んだりできるようにした。

カフェテラス
テラスでカフェを楽しむ親子の時間

2号棟は、親子でカフェ時間を楽しむイメージの「カフェテラス」。庭に面した広々としたカフェテラスを備え、お茶を外に運び出しやすいよう、キッチンと外につながる窓の位置を近くした。また、カフェらしい雰囲気作りのため、経年で少し塗装がかすれたようなシャビーシックの素材も取り入れた。

アグリテラス
テラスで気軽に野菜づくりを

3号棟は、親子で野菜を育てる楽しみを提案する「アグリテラス」。リビングに面したテラスの一角に、野菜を栽培できるポタジェスペースを作り、気軽に栽培、収穫できるよう工夫した。ダイニングテーブルをそのままテラスに出せるような工夫も施している。

キャンパーズテラス
日々の暮らしにアウトドアライフを

4号棟は、家で気軽にアウトドアライフをテーマにした「キャンパーズテラス」。屋根付きのテラスに車を近づけて駐車し、キャンプなどアウトドアの用品を準備、片付けやすくした。テラスには隠れ家空間のような趣味スペースを隣接させた。

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植栽の新たな魅力への気づきになれば

中央住宅戸建分譲設計本部
設計一部 営業企画設計課
山下隆史 課長

ポラスの分譲住宅には必ず植栽を入れているが、景観作り以外の魅力的なストーリーをユーザーと共有し、緑がそばにある暮らしをもっと楽しんでもらえないかと考えていた。また、分譲事業者として何万本と植える植栽を通じて社会貢献をしていきたいし、このプロジェクトを積み重ねていくことで、いつかはポラスグループの標準的な考えにまで広がればと夢を描いている。地域密着での事業を展開するなかでこのようなまちを持続的に地域全体に編み込んでいき、地域の魅力向上につなげたい。

“点”から“面”へと広げていきたい

ポラス暮し科学研究所
福代昇一 住環境G係長

分譲地の植栽によってヒートアイランド対策、潅水対策、生物多様性の保全などの活動をしたいと思っていたが、なかなか継続性を持たせることが難しかった。SuBaCo Projectが実現できて非常に嬉しく思う。今後このプロジェクトを大切にし、活動内容の充実化や活発化を図りたい。また、こうした取り組みの点を多く作っていくことで面として広げ、地域に密着しながらビッグデータ化していき、エンドユーザーとの橋渡しを進めて、住む人々が笑顔で過ごせる地域づくりに貢献していきたい。